兵庫芸術文化センターでのコンサートに行ってきました!

ツィメルマンさんのコンサートはこれまでにも何回か行ったことがあり、毎回大満足で帰って来たのですが、今回は色んな意味で驚きが大きいコンサートでした。


ツィメルマンさんのコンサートは2018年くらいに初めて聴きに行きました。

「有名だし一回行ってみよう」くらいの軽い気持ちで聴きに行ったら、最初の一音から美しすぎてあっという間にファンになりました。

人間が生演奏でこんなクオリティの高い演奏をできるなんて!と非常に感動しました。

また、演奏後の立ち振る舞いもお茶目で、もうおじいちゃんと言って良い年齢なのに生粋のイケメンなんだなと思いました。


そんなツィメルマンさんですが、今日のコンサートの前半で私はショックを受けました。

もしかしたら寝不足だったからかもしれませんが、前半全く感動できなかったのです。

一昨年のショパンのソナタ3番が非常に良かったので今年はソナタ2番を楽しみにしていましたが、なんとなく抜け柄のような演奏に感じてしまいました。ツィメルマンさんにはあるまじき雑さも感じました。

大きな音はただの大きい音で、綺麗な音はただの綺麗な音という感じで、なぜか何も感じられませんでした。

ここまで何も感じなかったのは、本当に私がただ寝不足だったせいかもしれません。ただ、いつものツィメルマンさんなら私の寝不足を吹っ飛ばす力があるのに…と思いながら困惑して聴いていました。


そんな感じで前半でショックを受けたのですが、後半は出だしのドビュッシーから「あ、これはいい!」と思い、速攻で目が覚めました。

後半はドビュッシーもシマノフスキも完璧主義なツィメルマンさんらしい綿密な音の設計を感じることができました。

でも、なんとなく一昨年までの演奏とは違う感じもしました。以前のツィメルマンさんの演奏では強い意志のようなものを感じたのですが、今回の演奏は全体的に「あるがまま」とか「諸行無常」みたいな印象を受けました。まあ曲目がドビュッシーとシマノフスキだったせいかもしれませんが、今までのツィメルマンさんには感じなかった老齢の魅力のようなものを感じた気がしました。


後半の演奏は、今まで聴いたツィメルマンさんのどの演奏よりも感動しました。


今までのツィメルマンさんと違う印象を受けたとは書きましたが、やはりツィメルマンさんらしさも感じました。

ツィメルマンさんが弾くとどんな曲も完璧に整理され、その曲の「王道的」な素晴らしさが伝わりシンプルに気分が上がる点が私は好きです。(でも意外と冒険的な解釈もあって、よいアクセントになっていて楽しいです。)

そんなツィメルマンさんが弾くドビュッシーとシマノフスキとラフマニノフは、どれも単純な曲じゃないのにスーッ頭に入ってきて、心の底からいい曲だと感じることができました。

シマノフスキは全く知らない曲で全く楽しみにしていませんでしたが、すごく好きになりました。ツィメルマンさんはこの曲の素晴らしさをみんなに知ってほしかったんだろうなと思いました。


アンコールまで聴き終わって、やっぱりこの人の演奏は人を幸せな気持ちにすると思いました。

ピアニストはみんな色々な魅力を持っていて、とにかく観客を熱狂の渦に巻き込む人もいれば、切ない気持ちにさせる人もいて、中にはちょっとダークな気持ちにさせるのが魅力という人もいます。

でもこの人の演奏は聴き終わった時、シンプルに幸せだなと思います。きっとこれは本人の人柄の力が大きいんでしょうね。(今日も演奏後の挨拶がお茶目でイケメンでした)

今回のコンサートは今まで以上にツィメルマンさんの年齢について考えることになりましたが、これから更に新しい魅力を見れるのではと期待が膨らみました。

前半は感動出来なかったと書きましたが、後半を聴いた後なら合点のいく部分があります。ツィメルマンさんはショパンのイメージが強いので「こんな感じだろう」と決めてかかって聴いていた部分があるので、またどこかで聴いて確かめたいです。


コンサートは今年はこれが最後となりました。

ブログに書いた以外にも沢山聴きに行きましたが、どの人のコンサートもみんな楽しかったです。

本当に音楽をお仕事にしている人たちって、私はこの世で1番尊いと思っています。

その人たちの音楽に感動するからみんなお金を払うってすごいことです。

今年も沢山の感動をありがとうございました。