ダメ男に惚れぬく女たちの映画2本 | PEROの映画狂人日記

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町山智浩様を神と崇め、ライムスター宇多丸先生を師とするサブカル重症腐女子がヒマつぶしで見ていた映画の数が年に200本を超えて来たので、
これだけ見てるゾという自慢と自己顕示欲を満足させる為だけの映画日記ですがよかったら暇つぶしに。

あっついですねーーー
こんな時は部屋で古い映画の勉強、映画館で「シン・ゴジラ」ですね。

たまたま続けて見た映画のテーマが似ていたので2本まとめて紹介します。

タイトル通りダメ男に惚れぬいた女の映画。

若い頃の恋愛は、まだどう付き合っていいのかのかわからないから、相手に自分の感情をぶつけるだけ。
相手が自分を傷つけることでしか愛を確認できないとしても、それすらも受け入れなきゃと共依存関係に陥ってしまう。

そこからどう這い上がるのか、または這い上がれないのか…




「神様なんてくそくらえ」



主演のアリエル・ホームズの自伝の映画化。
この映画ができているということはアリエル・ホームズはダメな恋愛から這い戻って来ているハズ、またダメな男に惚れていなければ…
人間て不思議で鴨の仔が初めて見たものについて歩くようになるように、恋愛も初めて好きになった人を追い求めてしまうから。


NYでホームレスのイリヤは恋人ハーリー

(「X-MEN ファースト・ジェネレーション」「アンチヴァイラル」のケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)
に夢中で彼に死ねと言われて手首を切ってしまうほど。けれどエキセントリックなハーリーはそんなイリヤを疎ましく思い遠ざける。ハーリーに捨てられたイリヤはドラッグに溺れていく…

もうこの歳になると、盲目的に誰かを好きになるってあんまりない。それは20代までの特権かもしれない。
なぜ自分を傷つける相手にあんなに異存してしまうのか?
恋愛初心者の彼らはむき出しの感情をぶつけ合い、傷つけ合う。それでも離れられないその気持ちはなんなのか?
ドラッグよりも依存性の高い恋心の厄介さをまざまざと見せつけられた。

NYのストリートキッズの映画というとラリー・クラーク監督の「KIDS」を思いだす。

けれど、この映画から見れば「KIDS 」の子供たちは住む家もあり、ドラッグも豊富にある。彼らは甘やかされたお坊ちゃん達にしか見えない。

21世紀のストリートは余裕が無く悲惨なのかもしれない。

人々が目を伏せ通り過ぎる風景の中のホームレス、そのNYの路上に俳優たちを置き、

ドキュメンタリーのように撮る手法はハーモニー・コリンの「ガンモ」を思わせる。

主演のアリエル・ホームズの体験談という事もあって彼らの生活の生々しさが画面から匂い立つ。

ホームレスの映画といえばレオス・カラックスの傑作「ポンヌフの恋人」にも引けを取らない怪作。



2本目は、



「AMY」

アカデミー賞ドキュメンタリー部門賞受賞の本作。
は生前のエイミー・ワインハウスのプライベート映像を編集し幼馴染や関係者にインタビューを取ったドキュメンタリー。

歌詞の中で悲しい恋愛を歌っていたエイミーはどんな愛を求めていたのか?



明らかにドラッグで痩せた身体を下着のような服で身を包み、ぶっといアイラインに頭を大きく膨らませた独特のファッションでゴシップ雑誌に奇行が毎週乗っていたエイミー。


この映画はそのイメージとは違う、自分の愛をエンジンに、アルコールとドラッグをガソリンに27年間の短い人生を歌ったエイミー・ワインハウスのドキュメンタリー。

歌うのは好きだけど自分が歌手になるなんて思っていなかったジャズが好きな女の子は、自分の二枚目のアルバム「Back To Black」がヒットした時に世界的なセレブになってしまう。シングルカットされ大ヒットした「Rehab」は彼氏に捨てられアルコール漬けの生活からリハビリ施設に送られそうになる歌なのに…

「神様なんかくそくらえ」を直前に見ていたせいか、エイミー・ワインハウスと旦那のブレイク・フォルダーの関係が「神様なんかくそくらえ」のイリヤとハーリーの関係とそっくりでびっくりした。

自分をボロボロにする男に惚れて惚れ抜いて、自分の身体までボロボロにしていくエイミー。
けれど、その関係が無ければ生まれなかった曲。

そして、有名になったことで一気にパパラッチに追い回される日常へ。

9歳の時に家庭を捨てて出て行った父親は、金の卵を産むボロボロの娘の休暇中にテレビクルーを引き連れて来る始末。
けれど、そんな父親のダメさとエイミーの大好きなダメ夫に同じ匂いを感じて、彼女の愛を求める理由とは子供の頃の家庭の愛情だったのではないかと思うとより切なくなく。

力強い彼女の歌声とは裏腹に繊細な精神をドラッグでハイにさせて世界と対峙したけれど、それは自分の命を縮める事にもなってしまう。

誰かがドラッグは才能の前借りと言っていたのを思い出す。

熟練した歌声のエイミーが、全ての問題をクリアして本当に歳をとって、そんな時代もあったわねと太々しく歌って欲しかったと思わずにはいられない。



彼女たちは人から見たら不幸かもしれないけれど、誰かに人生を壊すほどの愛を捧げられることなんてそうあることじゃない。
そして私たちはその愛のかけらを、こうして見させてもらっているわけだからその愛が無駄だったとも言えない…


でも、友達だったら殴ってでも止めるけど。