当ブログではこれまでも「留年」について、記事にしてきました。
前回記事でも触れたように、経済的な損失(最低でも年260万円)が大きい上に、
・「受験浪人」とは違って再挑戦(リベンジ)のような前向きなケースが少ない※1 
さらに、
・いわゆる「負のスパイラル」に陥りやすい(後述)
などの理由です。
以前、農工大・農学部のデータを簡単にご紹介しましたが、ちょうど、電気通信大学(以下、電通大)の比較的新しいデータが見つかりました。
 
●電通大のデータ(下記PDFの30ページ から抜粋)
http://www.niad.ac.jp/sub_hyouka/ninsyou/hyoukahou201603/daigaku/no6_1_1_uec_d201603.pdf
【学士課程(大学4年)の進級・卒業状況等についての、平成22~26 年度までの平均値(以下、すべて昼間生のデータ)】
・2年次終了時期のコース選択審査での合格率は79.6%
・3年次終了時期の卒業研究着手審査の合格率は84.3%
・標準修業年限(4年間)内での卒業率は72.0%
・「標準修業年限×1.5 年」(6年間)内卒業率は86.4%
・履修者に対する単位取得の割合(学部単位修得率)は、80.4%
・休学者率は、3.9%
・退学及び除籍者の割合は、2.6%
なお、修業年限内卒業率は他大学の工学系学部に比べて低い値になっているが、これは、2年次終了時での「コース選択審査」、3年次終了時での「卒業研究着手審査」を設け、厳格な進級審査を行っており、留年者数が比較的多いためである。ただし、退学及び除籍者の割合は高くなく、留年者の多くも卒業している。
 
●解説
電通大では、平成22~26 年度時点で、
『情報理工学部の昼間2年次終了時に「コース選択審査」3年次終了時に「卒業研究着手審査」をそれぞれ実施し、学業の進捗管理を行うとともに、学生支援担当によって適切な指導、助言に努めている。
また、基礎学力が不足している学生に対する補習授業として「数学補習授業」を実施』(上記PDFの21ページから抜粋)
というように、
『2年終りと3年終りにも「ハードル」を設ける』ことで、4年間で卒業できる学生は、4分の3足らず(途中のハードルでひっかかる人が上記データのように結構いるため)で、そして、6年間(+2年)で学部卒業できるのも約86%。
その代わり、退学・除籍者は2.6%で、たとえ時間はかかっても97%以上が”卒業は”できていることになります。
つまり、電通大では、2年次から早めにチェックをしているおかげで、学力不足などが手遅れになる前に『数学の補習』ほかいろいろな対策ができるために、「退学という最悪の事態は防げている」ように見えます。
留年から退学、そしてーーーという危険については、次のデータ。
 
●高知工科大学 ※2 のデータから見る「負のスパイラル」
「負のスパイラル」とは、単位を落とす→翌年再履修→(負担増)他の科目にしわ寄せ→単位を落とす というような構図のことです。
平成17年のデータですが「留年傾向からみたニート予備軍に対する基礎的研究」
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2005/60-6/60-6-0330.pdf
では、高知工科大学での2005年のアンケート調査等による分析が掲載されています。
調査時点での高知工科大学は、全科目が選択制(必修なし)、4年生まで進級できるが、要件をみたさないと卒業できず「過年度生」になる というシステムでした。「過年度生」の落とした科目の「再履修」は、
・足切り→開講学年の学生優先で、人数制限あり
・再履修不可規制→教員の判断による
・時間割の重複(あるある)
などの理由で簡単ではなく、再度留年→退学→ニート予備軍? という観点から、防止策が提言されています。
で、現在の高知工科大学のシステムについては↓。
http://www.kochi-tech.ac.jp/kut/undergraduate_school/characteristics/index.html
全科目選択制は、「特長」として残しつつ、履修については、「指導教員」がアドバイスする方式。また、順調に単位を取った生徒は、逆に、3年で大学院に進める「早期卒業」制度もあります。
 
以上のように、
 電通大で4人に1人が留年という現実
から、工学部新入生(在学生)とその親御さんにとって、「留年」はけっして他人事ではありません。※3 
反面、「4人のうち3人は留年しないで卒業できる」とも言えるので、新入生は今から焦らなくてもいいですが、前期の結果次第では、どこの大学にでも履修や勉強についての相談窓口がありますので、「早めに」相談をしてください。
 
■参考
電通大の「情報理工学部」の制度については、下記「情報理工学部履修規定」 
http://www.uec.ac.jp/about/basicinfo/rule/pdf/1-gakusoku/1A001.pdf
に掲載されています。電通大では、
第62条 授業科目の履修成績は、優、良、可、不可(不可がいわゆる単位を落とすこと)
2016年4月からの「情報理工学域」の「履修規定」は、現時点(4月3日)では検索しても見つかりませんでした。「類別募集」と「大くくり入試」については、2017年入試に向けて、東工大などと一緒に、いずれ記事にするときに再調査の予定です。
 
※1 東大などの場合は、たとえば「航空宇宙工学に進みたい」などの理由での「自主留年」が、昔からあるようです。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1289165707
こういう「覚悟留年」は除く。
※2 平成9年に高知県が設立し、学校法人が運営。公立大学法人になったのは平成21年から。
※3 留年が多い=チェックが厳しい ということは、逆にチェックをクリアした人は、「ブランド米」やブランド果物みたいに、品質保証されているという、プラスの側面もあります。
●今回のBGMは、アジアン・カンフー・ジェネレーション 君の街まで