美容皮膚科医の日常ーペルラクリニック神宮前院長 本田淳 -4ページ目

美容皮膚科医の日常ーペルラクリニック神宮前院長 本田淳

一美容皮膚科医の想い

東京都渋谷区 原宿 表参道
ペルラクリニック神宮前院長
本田淳のブログ

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美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。

 

当院は、院長が診察から治療まで一貫して施行すること(ワンドクター制)を特徴としています。

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以下本文となります。

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2025年の論文 前回の続きとなります。

 

A Single-Center, Blinded, Split-Body, Randomized Clinical Trial of High-Intensity, Parallel Ultrasound Beams Versus Microfocused Ultrasound With Visualization for the Treatment of Upper Inner Arm Skin Laxity


 

今回はアブストラクトのみ公開されている論文のご紹介です。

緑字は私のコメントですので、お読みになる必要はございません。
 

 

Background

上腕内側の皮膚のたるみ(skin laxity)およびシワ・ちりめんじわ(crepiness)は、加齢や紫外線損傷により真皮コラーゲン・エラスチンの構造的劣化によって生じる。
従来は外科的上腕形成術(brachioplasty)以外の有効な非侵襲的治療が存在しなかったが、近年は超音波を用いたスキンタイトニング技術が臨床的選択肢として普及している。


代表的なデバイスとして以下の2つが挙げられる:

  • Microfocused Ultrasound with Visualization(MFU-V; Ulthera®):リアルタイム超音波画像下で集束超音波を照射し、SMAS〜真皮深層に熱凝固ゾーンを形成。

  • High-intensity Parallel Beam Ultrasound(HIUS; Sofwave™ SUPERB™):非集束の平行ビームを真皮中層(深さ約1.5 mm)に照射。

両者は異なる加熱特性をもつが、これまで臨床的効果を直接比較した研究は限定的である。

 

Objective

上腕内側皮膚たるみ・crepinessの改善効果において、HIUSとMFU-Vの有効性および安全性を比較検討する。

 
 

Methods

  • 研究デザイン:前向き・単施設・盲検化・split-body(左右比較)・無作為化臨床試験。

  • 対象:上腕内側の皮膚弛緩を訴える女性14名。

  • 介入:一側にHIUS、対側にMFU-Vを単回照射。

  • 評価時点:治療前、30日後、90日後。

  • 評価項目:

    • Investigator-およびSubject-rated Laxity/Crepiness改善スコア

    • 疼痛スコア(VAS)

    • 治療時間

    • 被験者満足度

  • 盲検化:治療デバイスについて評価者を盲検化。

 
 

Results

  • 完遂症例:14名全員。

  • 効果:両群とものたるみ・crepinessの改善を認め、HIUSはMFU-Vと同等の有効性を示した。

  • 時間効率:MFU-V群の治療時間がHIUS群より長かった。

  • 疼痛:VASに有意差なし。

  • 満足度:大多数の被験者が満足または非常に満足と回答。

  • 安全性:重篤な有害事象なし。

 
 

Conclusions

SUPERB(HIUS)は、上腕内側の皮膚のたるみ・crepinessに対して有効かつ安全であり、患者満足度も高かった。
治療効率(短時間)という臨床的利点を有し、MFU-Vの代替・補完的治療法として妥当性が示唆された。

 

 

 

限界

 

サンプルサイズの小ささ
 n = 14は統計的検出力が低く、実質的には探索的試験の域を出ない。

 

客観的エンドポイントの欠如
laxity・crepinessは主観的評価であり、客観的な皮膚弾性(cutometer)や3D画像解析、皮膚厚測定については未検証(もしくは記載がない)

 

照射パラメータの未開示
HIUS・MFU-V双方の設定パラメータが記載されていない。このため「同等効果」の根拠が臨床的観察にとどまる。

(アブストラクトには、ウルセラについて使用したトランスデューサの記載がありませんでした)

 

フォロー期間(90日)が短い。

 

評価者の盲検化の限界
照射による軽度紅斑等の残存があり、評価者盲検の完全性は担保されていない可能性がある。

 

 

以上となります。

 

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以下本文となります。

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2025年の論文 前回の続きとなります。

 

Targeting Dermal Fibroblast Senescence: From Cellular Plasticity to Anti-Aging Therapies


 

今回も内容補充が加えられていますので、そんなもの読めるか、という方は原文をお読みください。
 

 

全文各項の要約です。

  • 線維芽細胞の老化

線維芽細胞の老化は、皮膚老化の核心的病態であり、恒常性破綻と創傷治癒能低下をもたらす多因子性のプロセスである。
この状態は、テロメア短縮、複製ストレス、酸化ストレス、DNA損傷、およびミトコンドリア機能不全等の細胞ストレスによって誘発され、不可逆的な細胞周期停止(主にp16INK4aおよびp21CIP1を介したG1 arrest)と、SASPによる表現型変化を特徴とする。

老化線維芽細胞は、ECM合成能の低下と分解酵素(MMPs)や炎症性サイトカインの過剰分泌を示し、慢性炎症性・分解優位の微小環境を形成する。
ROSはこの過程の主因であり、DNA損傷応答(DDR)およびミトコンドリア異常を介してp53/p21経路を活性化し、最終的に細胞老化を固定化する。
この酸化ストレス–老化の連鎖は、皮膚だけでなく心血管、腎、神経変性、呼吸器疾患にも共通する老化プロセスに関与している。

実際は、可塑性やフィードバックループがあるのですが、単純化して記述していますね。

 

   1.SASP (老化関連分泌現象)

 

SASPは、老化細胞が示す活性型分泌表現型であり、単なる機能停止状態ではなく、能動的な微小環境の制御機構として機能する。その分泌因子群は、主に以下の3つのモジュールに大別される。

 

炎症モジュール
IL-6、IL-1β、TNF-αなどのサイトカインとCCL2、CXCL8などのケモカインが中心で、NF-κBおよびC/EBPβ経路を介して転写的に誘導される。これにより、慢性炎症が引き起こされ、周囲の細胞の二次老化を促進する。

 

線維化・ECMリモデリングモジュール
MMP-1、MMP-3、MMP-9等のマトリックス分解酵素およびTGF-β・VEGFなどの成長因子を含み、ECM分解と異常修復を同時に誘導する。これにより真皮のエラスチン・コラーゲンネットワークが崩壊し、再構築能が低下する。

 

免疫修飾モジュール
SASP因子は免疫細胞の遊走と活性化を惹起し、初期には老化細胞除去を促すが、加齢皮膚では免疫老化により慢性炎症環境が持続し、線維芽細胞老化が自律的に維持される。

初期:DNA損傷・酸化ストレス・短期的な増殖停止が生じた直後(数日〜数週間以内)で、若年皮膚では、クリアランスが迅速に行われますが、加齢皮膚では免疫細胞の機能低下により以下略

原文では、SASPを単なる「悪影響」として記述されていますが、SASPは本来、創傷治癒初期の炎症誘導・腫瘍抑制・組織再構築などの生理的役割を持ちます。ほかにphase shift の件や、線維芽細胞の場合は、MMP、TGF-β優位以下略

 

 

 

  2. 治療的視点:セノリチクスとジェロプロテクターSenolytics and Geroprotectors

 

老化線維芽細胞の病的な蓄積に対抗する治療戦略として、セノリティクス(senolytics)とジェロプロテクター(geroprotectors)の2系統の薬理的介入が挙げられる。前者は老化細胞の選択的除去を目的とし、後者は老化経路そのものの抑制や恒常性維持を志向する。

 

セノリティクス

分子標的:老化細胞に特異的に活性化される抗アポトーシス経路(BCL-2/BCL-xL、p53/p21/serpine)を阻害することで、選択的に老化細胞死を誘導。

代表薬:ダサチニブ+クェルセチン、フィセチン、ナビトクラックス。

主要効果:老化マーカー(p16INK4a、SA-β-gal)の減少、筋機能・運動能の改善、健康寿命の延長。

作用メカニズム:
① 老化細胞の選択的アポトーシス誘導 老化表現型依存的に感受性が高い細胞については選択的と言えますが・・・
② SASPの減弱による炎症緩和 SASP低下は老化細胞の減少の二次的結果の場合が多いです
③ 老化細胞除去後の組織再生ニッチの生成

課題:ヒト臨床応用では、動物実験での投与間隔や用量設定をそのまま適用できず、非選択的細胞死・毒性(特に血小板減少・肝障害)のリスクが課題。

 

 

ジェロプロテクター(Geroprotectors)

定義:加齢のハロマーク(hallmarks )を包括的に標的化し、細胞老化・代謝異常・エピジェネティック変化などを遅延させる薬剤群。

作用メカニズム:Tableも合わせてまとめました

mTOR経路抑制(ラパマイシン、メトホルミン) 細胞周期が停止した状態でも持続するmTOR依存性の成長シグナルを抑制し、代謝過活性化を伴う肥大型老化表現型(hypertrophic senescence phenotype)の発現を防ぐ。

Nrf2経路活性化(クルクミン):酸化ストレス応答強化、炎症抑制。

SIRT1活性化(レスベラトロール):エネルギー代謝改善、クロマチン安定化、心血管保護。

コンビネーション療法:セノリティクス+ジェロプロテクターの併用で、除去と抑制の二面性制御を目指す。
Xuら(2015)は、ダサチニブ+ラパマイシン併用で単剤よりも老化関連病変の軽減効果を報告。

ラパマイシン、メトホルミンは上流の代謝センサー、クルクミン、レスベラトロールは下流の酸化・転写応答調整を標的としています。

 

 

 

  • 考察・結論 かなり内容を整理、補完しています

老化線維芽細胞が皮膚老化の主要な病態ドライバーであるという観点から、その制御・除去を目的としたセノリティクスおよびジェロプロテクターといった治療薬の開発が重要だと考える。

 

 

研究の方向性

現在の焦点は、SASP関連循環因子(IL-6, MMP-3等)やエピジェネティック指標(DNAメチル化パターン、Horvathクロック等)を介した老化状態の定量化・診断。

老化細胞の多様性を踏まえ、組織特異的セノリティクス、ジェロプロテクターの開発が重要課題。

投与タイミングと間欠投与の治療戦術は前臨床段階では有望だが、ヒトに対する長期安全性プロファイルは未確立。

 

併用療法

セノリティクスは老化細胞を除去し、ジェロプロテクターは老化経路を抑制し、相互補完的。この併用により、老化細胞の蓄積防止と組織再生促進の両面で相乗効果が期待される。

くわえて、運動・食事制限などの生活介入との組み合わせによる包括的アンチエイジング戦略が提案されている。

 

課題

ヒトと動物モデルとの間での老化機構の種差が大きく、ヒト臨床試験へのトランスレーショナルギャップが依然として大きい。

長期老化研究は時間的制約に加えて研究倫理上の制限を伴うため、実施可能なエンドポイントの設定と信頼性の高い老化バイオマーカーの確立が求められる。
また、老化関連介入、特に寿命延長を目的とする治療の社会実装に際しては、公平な医療アクセスと社会的公正性に関する倫理的課題の検討が不可欠である。

 

加齢皮膚への応用

皮膚の老化は主に、老化線維芽細胞の蓄積、ECMリモデリング異常により進行する。

SASPの慢性分泌が炎症環境を維持し、創傷治癒能低下・真皮恒常性破綻をもたらす。

コラーゲン・エラスチンの合成低下と断片化、GAGの減少による水分保持能低下が、弾性喪失、シワ形成、乾燥等を引き起こす。

セノリティクスは老化細胞除去によるSASP抑制、ジェロプロテクターは老化関連経路抑制による恒常性回復、維持を担う。併用療法は、単剤よりも加齢皮膚の改善効果が高いことが複数の前臨床研究で示唆されている。

 

展望

老化線維芽細胞の除去と新たな老化細胞の蓄積抑制を両立させる戦略(senolytics + senomorphics/geroprotectors併用)は、加齢皮膚における細胞老化ストレスの低減と恒常性回復・維持を目指すアプローチの一つである。
しかし、前臨床成果をヒト治療に翻訳する過程には依然として重大な障壁が存在する。

 

臨床応用における最も重要な課題は、介入効果を客観的に評価しうる信頼性の高い老化バイオマーカーの確立である。

現行の候補マーカー(p16INK4a、SA-β-gal、SASP因子、DNAメチル化クロック等)は、定量的評価指標としての再現性が不十分である。
また、senolytic・geroprotector剤の臨床実装には、投与量、投与間隔、オフターゲット効果の最適化が必須である。

 

今後の研究は、個別化精密治療の確立を目指すべきであり、線維芽細胞の可塑性、細胞老化、ECMリモデリングの相互作用を分子レベルで統合的に理解することが、加齢皮膚治療における新たな分子標的および予後予測バイオマーカー同定の進展につながる。

 

 

 

以上となります。

 

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以下本文となります。

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2025年の論文 前回の続きとなります。

 

Targeting Dermal Fibroblast Senescence: From Cellular Plasticity to Anti-Aging Therapies



緑字は私の低レベルなコメントですので、お読みになる必要はございません。

(今回は全体的に私が説明を補充している部分が多いので、原文をお読みになった方が・・・)
 

 

全文各項の要約です。

  • 細胞外マトリックス(ECM)の合成とリモデリングに対する加齢の影響:分子・細胞レベル

加齢に伴うECMの構造的・機能的劣化は、分子および細胞レベルの複合的変化が原因である。つまり、単なる「線維芽細胞活性の低下」ではなく、遺伝子発現制御、翻訳後修飾、酵素活性、細胞間シグナル伝達の統合的失調が根底にある。
また、これらの変化は、内因的老化(intrinsic aging)と外因的老化(extrinsic aging)が相互に影響する非線形的プロセスであり、外的ストレス(紫外線、汚染、喫煙等)が分子レベルでの損傷を蓄積させ、ECMの構造的不均一化、脆弱化を加速する。

ECMの劣化は受動的な過程ではなく、能動的・可塑的な組織のリモデリングプロセスの失調として進行する。

 

 

   1.ECM産生の減少

 

加齢は、線維芽細胞の転写・翻訳後修飾・分解制御の破綻によって生じる構造的なリモデリング異常であり、その中心はコラーゲン、エラスチン、グリコサミノグリカン(GAG)の量的減少と質的劣化である。

 

 

 

  コラーゲン合成低下と異常架橋による構造の劣化

 

老化に伴い線維芽細胞のCOL1A1転写活性および翻訳後修飾酵素(プロリル/リシル水酸化酵素)活性が低下し、コラーゲンIの合成量が著減する。

HSP47などの分子シャペロンの発現低下により、フォールディング不全・分泌遅延が生じる。

結果として、コラーゲン線維の架橋構造が不均一化し、I型/III型比の低下による細径化・弾性低下が発生する。

既存線維ではAGEsおよびLOX依存性架橋の蓄積により、構造が硬化かつ断片化し、同時にMMP感受性が上昇する。これらが皮膚の脆弱化・シワ・たるみの主因となる。

 

  

  エラスチン:分解と弾力性の喪失

 

老化線維芽細胞ではELN遺伝子転写低下とmRNA安定性の減弱によりtropoelastin合成が減少する。

フィブリリン-1/ファイブリン-5ネットワークの破綻により、弾性線維の合成、沈着が阻害される。

残存線維はMMP-2, -9, -12による断片化を受け、さらにLOXおよびAGEs架橋によって不可逆的に弾性を失う。

特に光老化皮膚では、変性エラスチンの蓄積(solar elastosis)が特徴的で、弾性の低下、たるみを引き起こす。

加齢皮膚では、EMILIN・LTBP・MAGPの発現低下と構造の崩壊によりトロポエラスチンの正確な沈着とフィブリリン複合体の形成が破綻し、弾性線維の質的劣化が生じています。

誤解を招きやすい書き方がされていますが、大雑把に言えば、内因性老化ではLOX↓、外因性老化ではAGE↑

 

  

  GAG–水分量の低下と生体力学的特性の変化

 

加齢に伴いHA合成酵素(HAS1–3)発現低下およびヒアルロニダーゼ(HYAL1–3)活性上昇が生じ、真皮HA含量が減少。

皮膚の保水能・膨潤性が低下し、粘弾性(viscoelasticity)が損なわれる。

硫酸化GAG(コンドロイチン硫酸・デルマタン硫酸)の硫酸化パターンの変化が起こり、サイトカイン結合能および成長因子勾配(FGF, VEGF等)形成能が低下。これにより、細胞増殖・分化・創傷治癒シグナルが減弱し、皮膚再生応答能も低下する。

HAS低下は単に水分保持能を低下させるだけでなく、グリコカリックス構造と機械的張力伝達(FAK–RhoA/ROCK軸)を変化させ、結果、YAP/TAZ経路が抑制されます。それにより細胞増殖、生存、ECM産生関連の遺伝子発現の低下が生じます。

  

 

 

    2. ECM分解の促進

 

加齢皮膚では、ECM合成能の低下に加えて、分解系の過剰な亢進状態が組織の脆弱化の主因となる。これは、主として以下の3つの経路で進行する。

 

MMP/TIMPバランス破綻による分解促進

老化線維芽細胞では、AP-1(c-Fos/c-Jun)およびNF-κB経路の活性化により、MMP-1(collagenase-1)、MMP-2(gelatinase-A)、MMP-9(gelatinase-B)の発現が上昇する。

活性酸素種(ROS)はMMP遺伝子転写促進および酵素活性化(Zn²⁺活性中心のS-ニトロシル化解除)を介して作用する。

一方、TIMP-1/2発現はエピジェネティック抑制(ヒストン脱アセチル化)やmicroRNA(miR-29等)の制御不全により減少し、結果としてMMP優位となり、マトリックス分解が促進される。これにより、コラーゲンI/IIIおよびエラスチンの連続性が失われ、真皮の物理的強度が低下する。

個人的には、加齢皮膚ではMMP-3、MMP-12(macrophage elastase)が非常に重要だと考えていて、なぜ以下略

TIMP-3の減少はエラスチン分解抑制の喪失を意味するので、これも非常に重要以下略

 

 

AGEs蓄積と架橋硬化による損傷

コラーゲン、エラスチンは糖化反応によりシッフ塩基 → アマドリ化合物 → AGEsと進行。

AGEsは分子間架橋(ペントシジン、カルボキシメチルリジン形成等)を介して硬化および弾性の低下を引き起こす。

AGE受容体RAGEの活性化により、NF-κB経路を再刺激し、MMP過剰発現・ROS産生・炎症性サイトカイン誘導というフィードバックループを形成する。結果、硬化と分解の同時進行という病的なリモデリング状態に陥る。

硬化と分解が同時進行・・・というより、AGE架橋は硬化、脆弱化を介しMMP感受性を増大させるので・・・

 

 

慢性炎症(Chronic low-grade inflammation)

加齢に伴い、TNF-α、IL-6、IL-1βなどの慢性的な発現上昇が真皮線維芽細胞をsenescence-associated secretory phenotype(SASP)へと誘導。

SASP因子はMMP-1/3を恒常的に誘導し、同時にコラーゲンⅠ転写を抑制(Smad3–p53協調抑制)。

かような慢性的な炎症環境は、生理的修復を阻害し、再構築能の低下を引き起こす。

どちらかというと、加齢皮膚ではCXCL8(IL-8)–MMP軸の方が以下略

 

これら3つの経路は相互に連結し、ROS上昇 → NF-κB/AP-1活性化 → MMP過剰発現 → ECM分解 → DAMP放出 → 炎症増幅 → ROS上昇というネガティブなループを以下略

 

 

   3. 細胞および微小環境の変化

 

皮膚加齢に伴うECMリモデリング異常は、単なる構造物の変性ではなく、細胞内老化・細胞間連携・成長因子応答性という三重のネットワーク破綻によって生じる。

 

老化線維芽細胞とSASP

加齢皮膚では、DNA損傷応答(DDR)活性化、テロメア短縮、酸化ストレス、およびp16INK4a、p21CIP1の上昇を介して線維芽細胞が老化。

老化細胞はSASPを形成し、IL-6, IL-8, MMP-1, MMP-3, VEGFなどの慢性炎症性・分解性分子群を分泌。

SASPは自己永続的なサイクルを誘導し、隣接細胞にも老化と炎症の定常状態を形成する。

この状態は、ECM合成低下・分解促進・免疫細胞遊走増加を統合的に引き起こし、組織の恒常性が損なわれる。

SASPは炎症・線維化・免疫修飾の3モジュールから成ります。

 

 

細胞間インターラクションの障害

若年皮膚では、FGF-7(KGF)やIL-1が線維芽細胞のTGF-β応答を増強し、ECM産生を促進する。

加齢では、この上皮–間質連携が破綻。つまり、細胞接着分子(integrin β1、E-/N-cadherin)の発現低下、ギャップ結合(connexin43等)減少、パラクラインシグナル(FGF、HGF、PDGF等)の減弱が生じる。

結果、線維芽細胞はケラチノサイトからの刺激に応答できず、ECMの低合成・高分解の代謝パターンが定常化する。

 

 

グロースファクターシグナルの変化 

老化線維芽細胞では、TGF-β/Smad経路の伝達効率が低下(Smad3核内移行阻害、TGFβRII発現低下)し、コラーゲン遺伝子転写が減少。

FGFシグナル(FGFR1, FGFR2)の脱感作とERK経路の持続的な活性化により、増殖反応は過剰となりつつも修復能が低下。

ECMの硬化(メカノトランスダクションの変化)がTGF-βシグナル自体を抑制するネガティブなフィードバックを形成。

結果として、加齢皮膚では線維芽細胞がECMからも外界刺激からも情報を受け取れない状態に陥る。

そもそもTGF‐βについて、かなりラフに取り扱われていて、気になって仕方ないので笑 AIにまとめてもらいました。

 

 
 
  4.臨床的結果
加齢によるECMの劣化は、構造的脆弱化と細胞機能低下が複合した障害であり、以下の5つの臨床的結果(状態)に集約される。
 
シワ形成と弾性低下
エラスチン線維の断裂とMMP活性化による分解亢進により、真皮の弾力性が喪失。コラーゲン線維は配向性を失い、細線維化・錯走化の状態に陥る。結果、肌質の不均一性を呈する。
 
たるみとturgor低下
コラーゲンⅠ/Ⅲおよびエラスチンの支持機能低下により、重力に対する抵抗性が減少。皮下脂肪分布の変化(深部脂肪は骨膜支持の減衰と萎縮によって体積を減じ、浅層脂肪は線維性組織弛緩と皮膚弾性低下により重力方向へ再配置)も加わり、顔面のボリュームが減少。
 
乾燥と皮膚の粗糙化
ヒアルロン酸や硫酸化GAGの減少により、皮膚の保水能が低下。角層の脂質構成の変化がバリア機能低下を助長し、刺激・アレルゲン感受性が上昇。
 
創傷治癒の障害
線維芽細胞の老化による増殖能・遊走能低下、MMP過剰活性化による創傷マトリックスの形成阻害、さらに血管密度減少による酸素・栄養供給不全が重なり、治癒が遅延。瘢痕形成のリスクも上昇。
TGF-β1シグナル低下、myofibroblast転換不全、HSP47減少などの方が以下略
 
損傷・感染に対する感受性の亢進
表皮・真皮の菲薄化と弾性低下により機械的脆弱性が増加。免疫機能低下とバリア障害が相まって、外因性刺激・微生物侵入に対する防御能が著減。
ランゲルハンス細胞・樹状細胞の減少、IL-1β経路の慢性活性化等も関与しています。

 

総じて、コラーゲン・エラスチン合成低下、MMP活性化、GAG減少による構造破壊と、線維芽細胞・免疫細胞の機能低下が連鎖的に作用し、皮膚老化の外見的徴候(シワ・下垂・乾燥)と生理的障害(創傷治癒遅延・易感染性)を形成する。また、加齢皮膚では、進行性のECM硬化がインテグリン–FAK–Rho軸を慢性的に過活性化し、核内YAP/TAZシグナルを持続させる。一方で、AGEsによるコラーゲン糖化、リガンド配向の変化、焦点接着の更新不全がメカノセンシングを破綻させ、メカノトランスダクション経路の異常を生じる。その結果、接着依存性生存シグナルとマトリックス合成プログラムの連携が失われ、線維芽細胞の機能不全とECM構築異常を引き起こす。

 

 

 

 

 

今回はここまでとさせてください。

 

 

 

 

 

 

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