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美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。
当院は、院長が診察から治療まで一貫して施行すること(ワンドクター制)を特徴としています。
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以下本文となります。
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2025年の論文 前回の続きとなります。
Targeting Dermal Fibroblast Senescence: From Cellular Plasticity to Anti-Aging Therapies
緑字は私の低レベルなコメントですので、お読みになる必要はございません。
(今回は全体的に私が説明を補充している部分が多いので、原文をお読みになった方が・・・)
全文各項の要約です。
- 細胞外マトリックス(ECM)の合成とリモデリングに対する加齢の影響:分子・細胞レベル
加齢に伴うECMの構造的・機能的劣化は、分子および細胞レベルの複合的変化が原因である。つまり、単なる「線維芽細胞活性の低下」ではなく、遺伝子発現制御、翻訳後修飾、酵素活性、細胞間シグナル伝達の統合的失調が根底にある。
また、これらの変化は、内因的老化(intrinsic aging)と外因的老化(extrinsic aging)が相互に影響する非線形的プロセスであり、外的ストレス(紫外線、汚染、喫煙等)が分子レベルでの損傷を蓄積させ、ECMの構造的不均一化、脆弱化を加速する。
ECMの劣化は受動的な過程ではなく、能動的・可塑的な組織のリモデリングプロセスの失調として進行する。
1.ECM産生の減少
加齢は、線維芽細胞の転写・翻訳後修飾・分解制御の破綻によって生じる構造的なリモデリング異常であり、その中心はコラーゲン、エラスチン、グリコサミノグリカン(GAG)の量的減少と質的劣化である。
コラーゲン合成低下と異常架橋による構造の劣化
老化に伴い線維芽細胞のCOL1A1転写活性および翻訳後修飾酵素(プロリル/リシル水酸化酵素)活性が低下し、コラーゲンIの合成量が著減する。
HSP47などの分子シャペロンの発現低下により、フォールディング不全・分泌遅延が生じる。
結果として、コラーゲン線維の架橋構造が不均一化し、I型/III型比の低下による細径化・弾性低下が発生する。
既存線維ではAGEsおよびLOX依存性架橋の蓄積により、構造が硬化かつ断片化し、同時にMMP感受性が上昇する。これらが皮膚の脆弱化・シワ・たるみの主因となる。
エラスチン:分解と弾力性の喪失
老化線維芽細胞ではELN遺伝子転写低下とmRNA安定性の減弱によりtropoelastin合成が減少する。
フィブリリン-1/ファイブリン-5ネットワークの破綻により、弾性線維の合成、沈着が阻害される。
残存線維はMMP-2, -9, -12による断片化を受け、さらにLOXおよびAGEs架橋によって不可逆的に弾性を失う。
特に光老化皮膚では、変性エラスチンの蓄積(solar elastosis)が特徴的で、弾性の低下、たるみを引き起こす。
加齢皮膚では、EMILIN・LTBP・MAGPの発現低下と構造の崩壊によりトロポエラスチンの正確な沈着とフィブリリン複合体の形成が破綻し、弾性線維の質的劣化が生じています。
誤解を招きやすい書き方がされていますが、大雑把に言えば、内因性老化ではLOX↓、外因性老化ではAGE↑
GAG–水分量の低下と生体力学的特性の変化
加齢に伴いHA合成酵素(HAS1–3)発現低下およびヒアルロニダーゼ(HYAL1–3)活性上昇が生じ、真皮HA含量が減少。
皮膚の保水能・膨潤性が低下し、粘弾性(viscoelasticity)が損なわれる。
硫酸化GAG(コンドロイチン硫酸・デルマタン硫酸)の硫酸化パターンの変化が起こり、サイトカイン結合能および成長因子勾配(FGF, VEGF等)形成能が低下。これにより、細胞増殖・分化・創傷治癒シグナルが減弱し、皮膚再生応答能も低下する。
HAS低下は単に水分保持能を低下させるだけでなく、グリコカリックス構造と機械的張力伝達(FAK–RhoA/ROCK軸)を変化させ、結果、YAP/TAZ経路が抑制されます。それにより細胞増殖、生存、ECM産生関連の遺伝子発現の低下が生じます。
2. ECM分解の促進
加齢皮膚では、ECM合成能の低下に加えて、分解系の過剰な亢進状態が組織の脆弱化の主因となる。これは、主として以下の3つの経路で進行する。
MMP/TIMPバランス破綻による分解促進
老化線維芽細胞では、AP-1(c-Fos/c-Jun)およびNF-κB経路の活性化により、MMP-1(collagenase-1)、MMP-2(gelatinase-A)、MMP-9(gelatinase-B)の発現が上昇する。
活性酸素種(ROS)はMMP遺伝子転写促進および酵素活性化(Zn²⁺活性中心のS-ニトロシル化解除)を介して作用する。
一方、TIMP-1/2発現はエピジェネティック抑制(ヒストン脱アセチル化)やmicroRNA(miR-29等)の制御不全により減少し、結果としてMMP優位となり、マトリックス分解が促進される。これにより、コラーゲンI/IIIおよびエラスチンの連続性が失われ、真皮の物理的強度が低下する。
個人的には、加齢皮膚ではMMP-3、MMP-12(macrophage elastase)が非常に重要だと考えていて、なぜ以下略
TIMP-3の減少はエラスチン分解抑制の喪失を意味するので、これも非常に重要以下略
AGEs蓄積と架橋硬化による損傷
コラーゲン、エラスチンは糖化反応によりシッフ塩基 → アマドリ化合物 → AGEsと進行。
AGEsは分子間架橋(ペントシジン、カルボキシメチルリジン形成等)を介して硬化および弾性の低下を引き起こす。
AGE受容体RAGEの活性化により、NF-κB経路を再刺激し、MMP過剰発現・ROS産生・炎症性サイトカイン誘導というフィードバックループを形成する。結果、硬化と分解の同時進行という病的なリモデリング状態に陥る。
硬化と分解が同時進行・・・というより、AGE架橋は硬化、脆弱化を介しMMP感受性を増大させるので・・・
慢性炎症(Chronic low-grade inflammation)
加齢に伴い、TNF-α、IL-6、IL-1βなどの慢性的な発現上昇が真皮線維芽細胞をsenescence-associated secretory phenotype(SASP)へと誘導。
SASP因子はMMP-1/3を恒常的に誘導し、同時にコラーゲンⅠ転写を抑制(Smad3–p53協調抑制)。
かような慢性的な炎症環境は、生理的修復を阻害し、再構築能の低下を引き起こす。
どちらかというと、加齢皮膚ではCXCL8(IL-8)–MMP軸の方が以下略
これら3つの経路は相互に連結し、ROS上昇 → NF-κB/AP-1活性化 → MMP過剰発現 → ECM分解 → DAMP放出 → 炎症増幅 → ROS上昇というネガティブなループを以下略
3. 細胞および微小環境の変化
皮膚加齢に伴うECMリモデリング異常は、単なる構造物の変性ではなく、細胞内老化・細胞間連携・成長因子応答性という三重のネットワーク破綻によって生じる。
老化線維芽細胞とSASP
加齢皮膚では、DNA損傷応答(DDR)活性化、テロメア短縮、酸化ストレス、およびp16INK4a、p21CIP1の上昇を介して線維芽細胞が老化。
老化細胞はSASPを形成し、IL-6, IL-8, MMP-1, MMP-3, VEGFなどの慢性炎症性・分解性分子群を分泌。
SASPは自己永続的なサイクルを誘導し、隣接細胞にも老化と炎症の定常状態を形成する。
この状態は、ECM合成低下・分解促進・免疫細胞遊走増加を統合的に引き起こし、組織の恒常性が損なわれる。
SASPは炎症・線維化・免疫修飾の3モジュールから成ります。
細胞間インターラクションの障害
若年皮膚では、FGF-7(KGF)やIL-1が線維芽細胞のTGF-β応答を増強し、ECM産生を促進する。
加齢では、この上皮–間質連携が破綻。つまり、細胞接着分子(integrin β1、E-/N-cadherin)の発現低下、ギャップ結合(connexin43等)減少、パラクラインシグナル(FGF、HGF、PDGF等)の減弱が生じる。
結果、線維芽細胞はケラチノサイトからの刺激に応答できず、ECMの低合成・高分解の代謝パターンが定常化する。
グロースファクターシグナルの変化
老化線維芽細胞では、TGF-β/Smad経路の伝達効率が低下(Smad3核内移行阻害、TGFβRII発現低下)し、コラーゲン遺伝子転写が減少。
FGFシグナル(FGFR1, FGFR2)の脱感作とERK経路の持続的な活性化により、増殖反応は過剰となりつつも修復能が低下。
ECMの硬化(メカノトランスダクションの変化)がTGF-βシグナル自体を抑制するネガティブなフィードバックを形成。
結果として、加齢皮膚では線維芽細胞がECMからも外界刺激からも情報を受け取れない状態に陥る。
そもそもTGF‐βについて、かなりラフに取り扱われていて、気になって仕方ないので笑 AIにまとめてもらいました。
4.臨床的結果
加齢によるECMの劣化は、構造的脆弱化と細胞機能低下が複合した障害であり、以下の5つの臨床的結果(状態)に集約される。
シワ形成と弾性低下
エラスチン線維の断裂とMMP活性化による分解亢進により、真皮の弾力性が喪失。コラーゲン線維は配向性を失い、細線維化・錯走化の状態に陥る。結果、肌質の不均一性を呈する。
たるみとturgor低下
コラーゲンⅠ/Ⅲおよびエラスチンの支持機能低下により、重力に対する抵抗性が減少。皮下脂肪分布の変化(深部脂肪は骨膜支持の減衰と萎縮によって体積を減じ、浅層脂肪は線維性組織弛緩と皮膚弾性低下により重力方向へ再配置)も加わり、顔面のボリュームが減少。
乾燥と皮膚の粗糙化
ヒアルロン酸や硫酸化GAGの減少により、皮膚の保水能が低下。角層の脂質構成の変化がバリア機能低下を助長し、刺激・アレルゲン感受性が上昇。
創傷治癒の障害
線維芽細胞の老化による増殖能・遊走能低下、MMP過剰活性化による創傷マトリックスの形成阻害、さらに血管密度減少による酸素・栄養供給不全が重なり、治癒が遅延。瘢痕形成のリスクも上昇。
TGF-β1シグナル低下、myofibroblast転換不全、HSP47減少などの方が以下略
損傷・感染に対する感受性の亢進
表皮・真皮の菲薄化と弾性低下により機械的脆弱性が増加。免疫機能低下とバリア障害が相まって、外因性刺激・微生物侵入に対する防御能が著減。
ランゲルハンス細胞・樹状細胞の減少、IL-1β経路の慢性活性化等も関与しています。
総じて、コラーゲン・エラスチン合成低下、MMP活性化、GAG減少による構造破壊と、線維芽細胞・免疫細胞の機能低下が連鎖的に作用し、皮膚老化の外見的徴候(シワ・下垂・乾燥)と生理的障害(創傷治癒遅延・易感染性)を形成する。また、加齢皮膚では、進行性のECM硬化がインテグリン–FAK–Rho軸を慢性的に過活性化し、核内YAP/TAZシグナルを持続させる。一方で、AGEsによるコラーゲン糖化、リガンド配向の変化、焦点接着の更新不全がメカノセンシングを破綻させ、メカノトランスダクション経路の異常を生じる。その結果、接着依存性生存シグナルとマトリックス合成プログラムの連携が失われ、線維芽細胞の機能不全とECM構築異常を引き起こす。
今回はここまでとさせてください。
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