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美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。
当院は、院長が診察から治療まで一貫して施行すること(ワンドクター制)を特徴としています。
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以下本文となります。
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前回の続きです。
緑字は私の低レベルなコメントですので、お読みになる必要はございません。
当院では、バイオスティミュレーターを現段階では積極的に用いていません。
あくまで中立的な見方・コメントをしています。
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結果
本試験には21名が登録され、うち20名が完遂した。群別内訳は、PLLA-SCA群11名、CaHA-R群10名である。Table1に示すとおり、人口統計学的背景は両群間で類似していた。
サンプル数が少ないですね。
人口統計学的背景は両群間で類似していた。 これに関する、群間差の統計検定(χ²検定、t検定等)は示されていません。
遺伝子発現の変化
ベースライン
ベースライン時において、既知の4つのタンパク質(SCGB2A1、SCGB1D2、UPK3BL、C2orf72)が発現低下していたが、これらの差次発現遺伝子に関連する有意な経路は認められなかった。このことは、注入後に観察された遺伝子発現パターンの違いが、患者群の背景差によって説明されるものではないことを示唆している。
この記述も統計学の専門家であれば、厳しく指摘をするところでしょうね・・・
ベースラインの差が臨床効果の解釈に与える影響を正しく扱うには、ANCOVAなどで共変量調整するのが標準以下略
下線部は明らかに論理の飛躍です。
BLおよび90日目における各製品のSTRINGおよびReactome解析
CaHA-R群のDay 0とDay 90を比較すると、8つの遺伝子が発現上昇を示した(p < .05)。
これらは炎症関連の経路プロファイル(細胞ストレス応答、細胞老化、インスリン様成長因子 [IGF] の調節)に関連していた (Figure1)。以下の通りであるー
hitinase 1 (CHIT1): 活性化マクロファージにより分泌され、単球分化の後期に発現。
heparan sulfate glucosamine 3-sulfotransferase 2 (HS3ST2): ヘパラン硫酸生合成に関与し、IL-6を標的としてIL-6経路を抑制。
BCL2A1: NF-κBが炎症性メディエーター応答で転写誘導する遺伝子。
IL-6: 免疫、組織再生、代謝に関わる多機能性サイトカイン。
DNASE2B: 酸性条件下でDNAを加水分解する酵素。
KCNJ5: 細胞膜のカリウム流入チャネルをコードし、主に外向きカリウム流を制御(これは遺伝子ですが、筆者はチャネルタンパク質と勘違いしているようです。老婆心ながら、カリウムの外向き流を制御し、細胞内に流入させる傾向が強いチャネルです)。
SPP1 (osteopontin): ハイドロキシアパタイトに結合する骨基質タンパクで、細胞-マトリックス相互作用において重要。
ATP6V0D2: 細胞内pHの維持のためプロトンを輸送するATPaseで、細胞膜に局在すると細胞外環境を酸性化。
STRING解析では、CaHA-R群においてIL-6を中心に4つの遺伝子が相互作用ネットワークを形成していた (Figure1)。
Reactome経路解析では、「ストレス応答(SPP1, IL-6, ATP6V0D2)」「細胞老化と抗炎症応答(IL-6)」「IGF輸送と結合タンパクによる取り込みの調節(IL-6, SPP1)」が抽出された。
ここでは、CaHAは炎症関連遺伝子をアップレギュレートし、細胞老化などのパスウェイに関係していると主張しています。実際は、IL-6を含む少数遺伝子に依存した脆弱な解析結果であり、過剰解釈の可能性が高いと思われます。
PLLA-SCA投与後Day 90において、13の遺伝子が有意に発現上昇し、抗炎症性経路に関連していた(p < .05, Figure2)。
以下の通りであるー
AC110995.1:長鎖インタージェニック非コードRNA 3070。
KCNJ5:上述
MARCO:マクロファージ受容体、コラーゲン様構造をもつスカベンジャーレセプターで、宿主防御に重要な役割
LILRA2:白血球免疫グロブリン様受容体A2で、微生物感染に対する自然免疫応答の一部。
HS3ST2:CaHA-R群と共通して上昇、IL-6シグナルを抑制する。
IL-6
LGMN:レグマイン、アスパラギニル結合を特異的に加水分解するシステインプロテアーゼ。
C2:補体系古典経路に関与する血清糖タンパク。
CMKLR1:Chemerin Chemokine-Like Receptor 1 アディポキネチンホルモン結合能を持ち、脂肪分化および脂肪細胞代謝を正に制御。
SLC15A3 :Solute Carrier Family 15 Member 3ヒスチジンやジ・トリペプチドを輸送するプロトン共役型アミノ酸トランスポーター。
VSIG4:T細胞応答のネガティブレギュレーター。
RAB42:GDP/GTP結合およびGTPアーゼ活性を有するRas関連タンパク。
SIGLEC1:シアル酸依存性で細胞表面の糖鎖リガンドに結合するレクチン様接着分子。
Fifure2に示すように、STRING解析ではIL-6を中心とした6つの遺伝子間相互作用が同定された。
PLLA-SCAに関連して刺激された遺伝子について、Reactome解析で同定されたパスウェイは以下の通りー
VENTXによる転写調節:Ventファミリーに属するホメオドメインタンパクで、中胚葉パターニングや造血幹細胞維持に関連。
IL-10、IL-4、IL-13に関連する抗炎症シグナル伝達。
細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK1/2)カスケードに関連するMAPキナーゼ経路。
マクロファージにおけるCD163依存的抗炎症応答。
STRING解析において、ネットワーク規模がわずか6遺伝子で、IL-6 が中心であり、抗炎症プロファイルの証拠というのは以下略
n=10前後の小規模RNA-seqで抽出された経路を、そのままメカニズムについてのエビデンスとするのは厳しいかもしれませんね。Reactome解析に関しても、この経路がどこまでエビデンスとして意味があるのかと言うと以下略
そもそも、CaHA-RのIL-6誘導は「炎症性」として記述され、ここではPLLA-SCAのIL-6誘導は「再生的」として記述されていますね。
このあたりで、IL-6の二面性についてまとめておきます。ご存知のように、IL-6についてシグナル伝達が2種類同定されているので、その点をAIにまとめてもらいました(なぜか、カジュアルな口調になっていて戸惑いますが笑)。
PLLA-SCA vs CaHA-R のDay 90比較
Day 90における比較で、PLLA-SCA群ではCaHA-R群と比較して17遺伝子が有意に発現上昇していた(p < .05, Figure3)。これらには脂肪酸取り込み(FABP4)、脂肪細胞内での輸送や代謝(LIPE, PLIN1, CIDEC, TUSC5/TRARG1, SPX)に関与する遺伝子が含まれていた。
脂肪組織でのエネルギー放出に関与する酵素
ULBP2:ナチュラルキラー細胞をリクルート・活性化するサイトカインを放出するタンパク
TRBJ1-5:抗原認識に関与するタンパク
C14orf180, PCDH8:膜貫通タンパク
G0S2:アポトーシスシグナルに関与する遺伝子
LEP 遺伝子:エネルギー恒常性の主要因子
STRING解析では、PLIN1を中心とする相互作用ネットワークが形成されていた。
Reactome解析では、脂肪細胞分化と脂肪組織代謝に寄与する遺伝子制御が示唆された。
前の段落でもそうでしたが、FDR補正についての記載がありません(メソッド部分に、DESeq2のadjusted p-valueの使用について書かれていましたが、図表ではp < .05という表現になっています)。
STRINGネットワークの中心はPLIN1ですが、脂肪代謝関連遺伝子間の既知ネットワークであり新規性は以下略
上でも触れましたが、Reactome解析はいわゆる仮説生成ツールですので、メカニズムのエビデンスとはならないと思います。
内容的にこれだけであれば、遺伝子名と既知の機能を恣意的に安易に結び付けている、と指摘されても以下略。図中の2年以上の臨床効果、というのもどこから出てきたものか・・・
そもそも、パンチバイオプシーは皮下脂肪を含まないと書かれていました。すると、脂肪関連遺伝子の発現は、必ずしも脂肪細胞由来とは限らない、ということになります。dWAT(dermal white adipose tissue)の可能性はないとは言えませんが、この組織に関しては研究途上で以下略
安全性
本研究では、治療に関連する有害事象は認められなかった。
一方、生検に関連する有害事象としては、7例の被験者において計11件の反応がみられた(圧痛、出血、紅斑、軽度の疼痛、および違和感)。
これで「結果」は終了ですが・・・qPCRの結果はどこにいったのか??品質管理のためのみ?それにしても・・・
考察
先行研究により、両治療がコラーゲンを増加・産生することが示されてきた。本研究でもその所見が確認された。著者らは以前、PLLA-SCAおよびCaHA-Rの両者で炎症応答を認めることを報告している。しかし、今回の炎症応答に対応する遺伝子発現パターンの解析により、CaHA-Rに関連する炎症は組織再生に負の影響を示し、一方、PLLA-SCAに関連する炎症は再生的であることが明らかとなった。さらに拡張解析では、PLLA-SCAが複数の遺伝子制御機構を介して脂肪細胞に潜在的に良好な効果をもたらし、皮膚の3層すべてを改善し得る健全なプロファイルを示すことが見出された。臨床的には、これらは皮膚のツヤ(glow)の増加、顔面脂肪の機能および構造の改善、加齢徴候の軽減等、肌質の向上に反映される可能性がある。
繰り返しになりますが、遺伝子発現パターンを根拠として、各製剤の炎症パターンを区分けしていますが、科学的ではなくレトリック以下略。そもそも小規模RNA-seqでは、gene signatureを確立するのは困難でしょう。
皮膚の3層? にわたって検証はされていません。
バイオスティミュレーターが遺伝子発現に及ぼす影響として、IL-6トランスシグナル伝達を誘導し、それがTHP-1マクロファージにおけるオステオポンチン(SPP1)のアップレギュレートに寄与することが挙げられ、注目に値する。
PLLA-SCAは、IL-6の影響下においてMARCOおよびVSIG4のアップレギュレートを介する脂肪組織にポジティブな変化に関連している。IL-6は急性炎症の初期に中心的役割を果たすが、炎症の適時収束と再生の開始にも不可欠であることが示されている。損傷や異物反応に応じて早期に放出されたIL-6は、組織常在マクロファージ、角化細胞、血管内皮細胞、および間質細胞から炎症性サイトカインの分泌を誘導するが、炎症が減ずると再生環境への転換を支援する。
実際に、この一連のイベントは、初期の炎症反応が、乳酸分子を取り囲むカルボキシメチルセルロースエンベロープの吸収と一致する可能性があり、筆者らは、その後、露出した乳酸分子により再生応答が続くの仮説を立てている。この過程全体において、IL-6は多面的なメディエーターとして炎症から再生への転換を調整している(PLLA-SCAは、まずCMCの吸収に伴って炎症を誘発し、その後、PLLAが露出することで再生反応が始まる。この炎症→再生の切り替えをIL-6が調整しているという時間軸に沿ったメカニズムの仮説を提示しているようです)。
IL-6の作用はマクロファージの極性によって異なり、シグナルに基づき、炎症調節因子としても純粋な炎症誘発因子としても機能する。
抗炎症性サイトカインの放出は、炎症期から再生期へのスイッチをもたらす。MARCOはアポトーシス細胞の除去やエンドサイトーシスに関与し、とりわけ脂肪組織マクロファージで発現して代謝の健全性を維持する。
PLLA-SCAに関連するIL-10およびIL-4経路は創傷治癒や組織修復と関連しており、脂肪細胞の調節を可能にする再生経路を説明しうる。
IL-6トランスシグナル伝達を誘導し、それがTHP-1マクロファージにおけるオステオポンチン(SPP1)のアップレギュレートに寄与することが挙げられ IL-6トランスシグナル伝達の関与を示すには、本来sIL-6Rやsgp130の測定が不可欠です。
PLLA-SCAは、IL-6の影響下においてMARCOおよびVSIG4のアップレギュレートを介する脂肪組織にポジティブな変化に関連している。 バイオプシーは皮下脂肪は含まれないので、そもそもMARCOやVSIG4上昇が脂肪細胞に由来するかどうかは判明しておらず、論理が飛躍していますね。
MARCOはアポトーシス細胞の除去やエンドサイトーシスに関与し、とりわけ脂肪組織マクロファージで発現して代謝の健全性を維持する。 FRBでは、スカベンジャーリセプター(まさにMARCO等)発現マクロファージが長期に稼働します。つまり、MARCOには二面性があり、バイオマテリアルに対する免疫の文脈においては、慢性炎症と線維化に関与する場合もあり、再生促進とは以下略
PLLA-SCAに関連するIL-10およびIL-4経路は創傷治癒や組織修復と関連しており、脂肪細胞の調節を可能にする再生経路を説明しうる。 そもそもSTRINGやReactomeは既知の経路との相関を示すツールですので、実際の経路活性化を証明するものではなありません。
フィラーの作用は、コラーゲン新生以外にも拡張され、脂肪組織に対する作用が長期的効果において重要な役割を果たしているとされる。Kruglikovらは、「脂肪由来幹細胞(ADSCs)の成熟脂肪細胞への分化」と「脂肪細胞の肥大」に長期的効果が関連し、これらが脂肪組織量の持続的な増加に寄与する可能性を提唱している。さらに、真皮白色脂肪組織(dWAT)へのポジティブな作用は、皮膚のバリア機能、病原菌に対するカテリシジンの抗菌作用、浅層の再構築による皮膚萎縮の軽減や皮膚のハリ感の改善といった、皮膚の健常性に大きな影響を及ぼすことが示唆されている。
脂肪細胞への脂肪酸取り込み(FABP4)、輸送および代謝に関与するタンパク(LIPE, PLN1, CIDEC, TUSC5/TRARG1, SPX)をコードする遺伝子は、この観点から特に興味深い。ただし、脂肪新生のメカニズムや影響は完全には解明されていない。それでも、脂肪組織の健常性の回復は、再生的?スキンバイオスティミュレーターの新しい研究領域を開くものと考えられる。
「脂肪由来幹細胞(ADSCs)の成熟脂肪細胞への分化」と「脂肪細胞の肥大」に長期的効果が関連し このこと自体は引用文献も含めて未検証です。
脂肪細胞への脂肪酸取り込み(FABP4)、輸送および代謝に関与するタンパク(LIPE, PLN1, CIDEC, TUSC5/TRARG1, SPX)をコードする遺伝子は、 これらの遺伝子の発現変動は脂肪代謝に影響するかもしれませんか、ポジティブに作用するかどうかについては不明です。
全体的に、遺伝子発現データを皮膚の健康とやらを直結させるのは無理がありますね。
本研究の限界は、サンプルサイズの小ささ、遺伝子評価の限定性、生検の部位と深さ、ならびに希釈されていないCaHA-Rを使用した点であった。サンプルサイズは小さいものの、有意と判断された遺伝子はPLLA-SCAおよびCaHA-Rの影響に関する一定の知見を示した。
本研究での生検は深部真皮を含まなかったため、皮下脂肪も含まれていなかった。しかし、真皮内にはdWATが存在し、本研究で上昇が示された遺伝子の影響を受けている可能性が高い。
生検は鼻唇溝部位で行われたため、より深いパンチ生検を行うと顕著な瘢痕を残す可能性があった。
現時点では、顔面の適応に対して米国FDAで承認されているのは希釈されていないCaHA-Rの注入のみである。
今後は、体部など他の治療部位を含め、PLLA-SCAによる再生的な脂肪細胞調節作用を検討するために、さらなる研究が必要である。
サンプルサイズは小さいものの、有意と判断された遺伝子はPLLA-SCAおよびCaHA-Rの影響に関する一定の知見を示した。
n=20程度のRNA-seqでは検出力が極めて低く以下略
真皮内にはdWATが存在し、本研究で上昇が示された遺伝子の影響を受けている可能性が高い。 dWATの同定・定量はなされていませんね・・・そもそも皮下脂肪の生検データなしに「脂肪再生」を主張するのは以下略
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