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美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。
当院は、院長が診察から治療まで一貫して施行すること(ワンドクター制)を特徴としています。
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お手数をおかけして申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
以下本文となります。
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PLLAとCaHAに関する論文をご紹介します。
緑字は私の低レベルなコメントですので、お読みになる必要はございません。
当院では、バイオスティミュレーターを現段階では積極的に用いていません。
あくまで中立的な見方・コメントをしています。
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要旨
イントロ:
注入型バイオスティミュレーターは、顔の加齢に伴う症状を改善する目的で広く用いられている。本研究は、2種類のバイオスティミュレーターが誘導する遺伝子経路の差異を比較することを目的としている。
メソッド
鼻唇溝に対する治療として、ポリ-L-乳酸(PLLA-SCA)と ハイドロキシアパタイト(CaHA-R)の注入(ベースライン(BL)と28日目の2回)を行い、遺伝子の発現を比較した。観察期間13週間のランダム化試験(n = 21)である。
BLと90日目にパンチ生検を実施し、RNAを抽出し、バルクRNAシーケンスを実施し遺伝子発現を解析した。両経路のデータは、Search Tool for Retrieval of Interacting Genes/Proteins(STRING)およびReactomeデータベースを使用して検証した。
結果:
Day 0とDay 90での解析では、PLLA-SCAとCaHA-Rにおいて異なる遺伝子発現の制御が示された(BL時のわずかな差異を補正した上で、Day 90で9〜12遺伝子においてp<.05)。PLLA-SCAは脂肪細胞再生に関与する遺伝子群と相関し、CaHA-Rはこれらの遺伝子に影響を与えなかった。臨床的には、PLLA-SCAは、コラーゲン構造の改善以上の効果をもたらし、長期の持続効果を伴った健全な脂肪組織の再構築・補填に寄与することを示唆している。さらに、アップレギュレートされると見られるアディポカインは再生を促進し、皮膚の健常性に好影響を与える可能性がある。
結論:
PLLA-SCAは新規かつ独自の遺伝子発現プロフィルを有しており、脂肪細胞機能の調節を介した再生促進のメカニズムを支持する可能性がある。
サンプル数、理論の飛躍、恣意性等、色々気になるところですが、全文を読みつつ考えたいところです。
以降、本文(抜粋)です
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イントロ
皮膚の老化は、ROSの生成、DNA損傷、機能障害、ならびに ECM構成要素の質の低下といった、分子メカニズムが重なり合って生じると考えられる。脂肪細胞の機能や、顔面解剖における脂肪組織の機能的・動的作用の役割を強調するエビデンスが増えており、これについては後述する。
加齢は皮膚・皮下組織に影響を及ぼす。表皮では、色素異常、しわの顕在化、乾燥やくすみとして現れる。真皮では、コラーゲンの減少とエラスチンの断片化が進み、構造的支持力が損なわれる。さらに、老化した線維芽細胞が増加し、プロテアーゼ性の液性因子を分泌してECMの分解と機能障害を助長する。皮下組織においては、顔面脂肪コンパートメントの位置の変化や体積の減少が顕著な老化所見として現れる。
老化のメカニズムとしては、エピジェネティクス変化、テロメア短縮、免疫老化、慢性炎症等も挙げられます。
皮下脂肪の老化については、まだ検証途上という感じで・・・主要なドライバーとしてよいかどうかは以下略
従来、顔面脂肪組織は体積や輪郭の調整手段として扱われてきたが、均質で不活性な充填物であり、皮膚・筋肉・骨と比べると重要性の低いもの(expendable)とみなされてきた。
しかし現在では、顔面の健康な脂肪組織はアディポカインを分泌することによって、線維芽細胞等の周囲組織に影響を与える代謝的に能動的な組織であることを示すデータが増えている。
さらに、皮膚の支持能については脂肪組織の量だけでなく質も重要である。脂肪の健全性が高まると線維芽細胞増殖、真皮厚の増加、弾力性の向上に結びつく可能性がある。
しかし現時点では、脂肪細胞を調節する選択肢は限られている。
もちろんアディポカインの中には、レプチンのようにTGF-β経路を介した線維化促進作用を有し、炎症を増強するものもあります。
ポリ-L-乳酸(poly-L-lactic acid, PLLA)やハイドロキシアパタイト(calcium hydroxylapatite, CaHA)を含む注入型バイオスティミュレーターは、アンチエイジング領域における主要な治療手段として急速に普及している。
筆者らの先行研究では、PLLA-SCAがコラーゲン合成を誘導するのみならず、組織リモデリングや形態形成(morphogenesis)に関わる経路に作用することを示した。一方、CaHA-Rはコラーゲン産生を刺激するが、PLLA-SCAと比較すると炎症関連経路をより強くアップレギュレートしており、これはカルシウム塩の組成に起因すると推測されている(引用論文7)。
本研究では、PLLA-SCAに関連する形態形成経路をさらに明らかにすることと同時に、各バイオスティミュレーターによって活性化されうるコラーゲン関連以外のメカニズムを明らかにするために、バルクRNAシークエンシングによる遺伝子発現解析が行われた。
Morphogenesisは胚発生における形態形成プロセスですので、成人の皮膚組織リモデリングに外挿するのは・・・だから引用符を付けているのでしょうが
CaHA-Rも・・・その理由はカルシウム塩の組成に起因すると推測されている:前回ご紹介した論文とは真逆の内容を主張しています。カルシウム塩組成に直接帰因すると断定するのはどうかと思いましたが、文献7はクローズドのため以下略。通常は、マテリアルの粒径・表面特性等の物理化学的因子も免疫反応に大きく影響します。
バルクRNAシークエンシングによる・・・:指摘するまでもなく、本解析では細胞種特異的な応答を区別できないので、通常はscRNA-seqや空間トランスクリプトミクスが以下略
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メソッド
研究デザイン
本研究は、鼻唇溝の治療を対象とし、ポリ-L-乳酸(PLLA-SCA, Sculptra)とハイドロキシアパタイト(CaHA-R, Radiesse [+])の注入による遺伝子発現の変化を比較するために行われた、ランダム化・単施設・13週間の臨床試験である。
被験者はランダムに左右いずれかの鼻唇溝で生検を受けるよう割り当てられ、治療はベースラインおよび28日目に施行された(CaHA群では2回目は任意)。製品のプロトコルに従い、両側の鼻唇溝に均等に注入された。生検は直径3 mmのパンチでBLと90日目の2回行われ、2回目は1回目とは反対側の鼻唇溝から採取された(被験者ごとに2検体)。検体はRNA later溶液に移し、室温で4時間保存後、4°Cで保管した。RNAサンプルはバルクRNAシークエンシングのためAzenta US, Inc(South Plainfield, NJ)に送付された。各生検からRNAを抽出した。次にRNAからcDNAを合成し、qPCR処理のため前増幅を行った。これらのqPCR反応を実行し、各遺伝子を二重測定で解析した。データ解析では、qPCRデータの品質管理と統計解析をRAWデータファイルで評価・実行した。
さらに、被験者の顔面はCherry Imaging社製の3DスキャナーでBL、28日目(治療前)、90日目(生検前)に撮影された。生検部位の瘢痕を軽減するためにレーザー治療が提供された。
(CaHA群では2回目は任意):CaHA群で2回目注入をオプションにしている・・・さすがに被験者によって治療内容が異り、群内に異質性を混入させるのは・・・ただでさえサンプルサイズが少なく、FDR補正を行っても検出力が・・・
RNA-seq は 数千〜数万遺伝子を同時に測定以下略
生検は直径3 mmのパンチでBLと90日目の2回行われ、1回目とは反対側から2回目は採取された(被験者ごとに2検体)。これでは、同一部位での経時比較ができませんね。内部対照の不適格以下略。
RNAサンプルはバルクRNAシークエンシングのためAzenta US, Inc(South Plainfield, NJ)に送付された。各生検からRNAを抽出した。次にRNAからcDNAを合成し、qPCR処理のため前増幅を行った。これらのqPCR反応を実行し、各遺伝子を二重測定で解析した。 これは誤解を生みやすい文章ですね。Bulk RNAシーケンスは前増幅などしませんので、Bulk RNAシーケンスは外部委託して、それとは別に筆者の研究室で?qPCRアレイ解析を行ったのでしょう。
被験者集団
被験者は年齢22〜50歳の男女で、研究者による、しわ評価スケールを用いた判定により両側鼻唇溝に軽度以上の陥凹を認める者が適格とされた。Fitzpatrickスキンタイプおよび人口統計学的背景は問わなかった。
突っ込みどころは多々ありますが
評価
有効性評価のために:生検(RNA)サンプルは、(1) 標的皮膚バイオマーカー(瘢痕形成、コラーゲン、エラスチン、ECMの完全性、表皮バリア、抗老化、抗酸化、細胞更新/再生、炎症、成長因子、保湿)について解析され、(2) バルクRNAシークエンシングが行われた。
サンプルは、Day 0におけるPLLA-SCA vs CaHA-R、Day 0からDay 90までの各製剤単独の変化、ならびにDay 90でのPLLA-SCA vs CaHA-Rの比較として解析された。
標準的な安全性評価として、有害事象のモニタリングおよび報告が実施された。
標的皮膚バイオマーカー(瘢痕形成、コラーゲン、エラスチン、ECMの完全性、表皮バリア、抗老化、抗酸化、細胞更新/再生、炎症、成長因子、保湿) バイオマーカーと書いてあるわりには・・・具体的な遺伝子・タンパク質パネルの方が以下略
サンプルは、Day 0におけるPLLA-SCA vs CaHA-R、Day 0からDay 90までの各製剤単独の変化、ならびにDay 90でのPLLA-SCA vs CaHA-Rの比較として解析された。 多重比較をどのように処理しているか、ベースライン値を共変量として組み込まれているか・・・などが気になります。
注入量
被験者は、PLLA-SCAについては7〜8 mLの注射用滅菌水と1 mLのエピネフリン入りリドカインで希釈した8 mL調製液を用いて、2回の治療を受け、CaHA-Rについては、当時の承認された適応に従ってプリフィルドシリンジによる2回の治療を受けた(2回目はオプションと上述されています)。鼻唇溝の真皮深層または皮下に注入された。
ベースラインにおける平均注入量は、PLLA-SCAで2 mL、CaHA-Rで1.65 mLであった。
28日目(±3日)に2回目の治療が行われ、PLLA-SCA群は平均2.27 mL、CaHA-R群は平均1.23 mLが注入された。
注入量は最適な効果を得るために治験医師の裁量に委ねられ、遺伝子レベルでの治療効果を反映する承認下での臨床使用に準じたものであると考えられる。
遺伝子レベルでの治療効果を反映する承認下での臨床使用に準じたものであると考えられる。 遺伝子・分子レベルでの臨床的最適化、というのは具体的にどういうことか・・・また、群間での投与条件の違い等、気になりますね。
RNA Sequencing
Azenta社において、Illumina HiSeqを用いた2×150 bpのペアエンドリードによるRNAライブラリ調製およびシーケンシングが実施された。得られたリードはTrimmomatic v.0.36を用いてトリミングされ、STARアライナー v.2.5.2bを用いてENSEMBLで公開されているヒト(Homo sapiens)参照ゲノムGRCh38にマッピングされた。Subread package v.1.5.2のfeatureCountsを用いて遺伝子ごとのユニーク(一意)リードカウントが算出され、そのカウントテーブルを差次発現解析に使用した。解析はDESeq2で実施され、Wald検定によりp値とlog2 fold changeが算出された。各比較において、調整済みp値が0.05未満で、かつlog2 fold changeの絶対値が1を超える遺伝子を差次発現遺伝子(differentially expressed genes, DEGs)と判定した。
統計学的に色々突っ込みどころはありそうですが、Bulk RNA-seqでは、細胞特異性の解釈ができない中、どのように以下略
RNA Sequencing Bioinformatics
差次的に発現した遺伝子は、STRINGおよびReactomeデータベースに入力された。STRINGは既知および予測されたタンパク質間相互作用を収載しており、直接的(物理的)あるいは間接的(機能的)な相互作用を含む。これらは計算予測、臓器?間での知識転用(knowledge transfer between organs)、一次データベースからの統合情報に基づいている。具体的には、ゲノム内容の予測、ハイスループット実験、共発現解析、自動テキストマイニング、既存データベースの知識等が情報源となる。
初期解析では2倍以上の発現変動を示す遺伝子を対象とし、拡張解析では1.5倍以上の変動を示す遺伝子も含めた。
Reactomeはオープンソースかつオープンアクセスで、手動キュレーションされ、査読済みのパスウェイデータベースである。これはゲノム研究をマイニングする際の、基礎・臨床研究、ゲノム解析、モデリング、システム生物学におけるパスウェイ情報の可視化、解釈、解析のためのバイオインフォマティクスツールである。
この部分も専門家から見ると、多くの問題を含むところだと思われますが・・・
knowledge transfer between organs 臓器?・・・organisms つまり生物種間の間違いではないかと思います。
初期解析では2倍以上の発現変動を示す遺伝子を対象とし、拡張解析では1.5倍以上の変動を示す遺伝子も含めた。
? こんなあからさまなp-hackingを? 探索的データ解析という認識?
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