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美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。
当院は、院長が診察から治療まで一貫して施行すること(ワンドクター制)を特徴としています。
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以下本文となります。
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前回の続きとなります。
Insights into the unique roles of dermal white adipose tissue (dWAT) in wound healing
2024年の論文です。
抜粋し、適宜要約しています。
緑字は私のコメントですので、読み飛ばしを推奨いたします。
- dWAT の機能と特性
総論
dWATは、他の脂肪組織と比較して高度な多機能性を有し、分化能に加えて生理的条件に応じた可逆的な機能変化を示す可塑性を備える。この柔軟性は、皮膚の恒常性維持および創傷治癒プロセスにおいて重要な役割を果たす。
dWATは創傷治癒への関与のみならず、免疫応答や炎症制御にも寄与し、さらにECMの構造と機能の調節を通じて皮膚組織全体の構造的統合性に関与する。
これらの機能は、dWATがエネルギー貯蔵の機能以外に、生理的・病理的環境に応答する能動的な組織であることを示唆する。dWATの多機能性および可塑性、ならびにその分子レベルのメカニズム関する研究は、皮膚の生理と病態の理解を深め、将来的に、治療戦略の構築に新たな可能性をもたらすと期待されている。
dWATの可塑性と多機能性
dWATは、他の脂肪組織と異なり、高度な可塑性と多能性を有し、創傷治癒や毛包周期に応じて体積が変化し、また脱分化・再分化を呈する。
Zhangらは、成熟dWAT脂肪細胞がPDGFRα陽性の前駆細胞に脱分化する過程を、GFP標識とFACS解析で証明し、single-cell RNA-Seqにより線維芽細胞様表現型への変換を確認した。
Marangoniらは、bleomycin誘導線維化モデルにて、dWATがα-SMA陽性筋線維芽細胞へ転分化することを示した。
Plikusらは創傷部に新生毛包とともに新規脂肪細胞が出現し、BMP(骨形成タンパク質:bone morphogenetic protein)により筋線維芽細胞が脂肪細胞に再プログラムされるメカニズムを解明した。
Zhangらは、毛成長開始期に線維芽細胞が脂肪細胞に再分化する現象を確認した。
これらの知見は、dWATの細胞運命が可逆的であり、創傷治癒において線維芽細胞との双方向性変換が機能的役割を果たすことを示唆している。また、dWATの分化状態を制御することは、瘢痕形成の抑制や皮膚再生の促進といった側面における新たな治療戦略の標的となりうる。
注:原文は脱分化(dedifferentiation)と再分化(redifferentiation)、転分化(transdifferentiation)の用語の使用法が曖昧といいますか、いい加減です・・・
注:詳述しませんが、分化段階の特異性・可逆性・細胞系譜の精密追跡についての論理展開が甘以下略
免疫および炎症応答
dWATは単なるエネルギー貯蔵器官にとどまらず、脂肪細胞自体、またはdWAT内の免疫細胞の免疫活性を介して、創傷治癒および感染防御の一翼を担っている。
特に、皮膚損傷に際しては、ATGL依存性トリグリセリド加水分解により脂肪酸が迅速に放出され、炎症性単球由来マクロファージ(Ly6chigh )をリクルート・活性化して血管新生と創傷治癒を促進する。この過程において、脂肪滴を喪失した成熟脂肪細胞はPdgfrα⁺Pdgfrβ⁺線維芽細胞様細胞(dFB)へと分化・移行し、ECMの産生を通じて創傷治癒をさらに促進する。
さらに、dWATは抗菌ペプチドCampおよびケモカインリガンド4(CCL4)を高発現し、皮膚感染に対する局所免疫機能を担保している。Staphylococcus aureus感染刺激によりdWATは急速に増大し、preadipocyteの増殖とCampの産生を伴って感染抑制に寄与することが示されている。
PPARγ阻害などによりdWATの形成が抑制されたモデルでは、感染感受性の亢進が観察され、dWATの感染防御機能の重要性が実証された。
以上の知見は、dWATが脂質動員、線維芽細胞分化、免疫細胞活性化、抗菌ペプチド産生を介して、皮膚バリア機能を維持するという重要な役割を担っていることを示唆している。これらを元に理解を深めることのより、今後の創傷治癒や感染症治療に対する新たな治療戦略の展開につながる可能性がある。
注:脂肪細胞は免疫活性を持つというのは誇張表現で、炎症性サイトカインや抗菌ペプチドの産生を通じて、免疫調節機能を有する、というところです。
注:成熟脂肪細胞はPDGFRα+ PDGFRβ+線維芽細胞(dFBs)に分化し・・・とありますが、Pdgfrα+/β+は線維芽細胞だけでなく脂肪前駆細胞にも共通するマーカーで、この表現型のみで以下略
dWATと ECMdWATは脂肪酸を供給するという代謝的機能により、真皮線維芽細胞のECM産生および恒常性維持に対する調節的役割を担っている。
Zhangらの研究では、dWATの量と線維芽細胞のECM関連遺伝子発現には負の相関があることがマウスモデルで明らかにされた。つまり、dWATが少ないと線維芽細胞のECM関連遺伝子発現が増加し、逆に高脂肪食でdWATが増えると、ECM関連遺伝子の発現の低下が示唆された。
dWATの枯渇で線維芽細胞内の脂肪酸酸化関連遺伝子がダウンレギュレートされ、dWAT由来Conditioned mediumとの共培養でこれら遺伝子がアップレギュレートされることも確認されている。
脂肪分解酵素ATGLの阻害実験では、脂肪分解の抑制により真皮の肥厚が観察され、dWATの脂質代謝がECMの制御に寄与していることが裏付けられた。また、dWATは単に代謝基質を供給するだけでなく、真皮線維芽細胞との間で脂肪酸を介した細胞間コミュニケーションを通じて、その機能を精緻に制御しており、線維芽細胞の代謝やECMの機能的協調と恒常性維持に寄与していると考えられる。さらに、創傷環境下においてdWATは筋線維芽細胞へと分化し、創傷治癒において支援機能も有する。Shookら(2020年)は創傷周辺組織のscRNA-seq解析により、ECMや創傷修復関連遺伝子に富む筋線維芽細胞サブタイプ(FB2, FB4, FB5, FB6)の存在を確認しており、これらの細胞群はdWAT由来である可能性が高く、創傷刺激によって脂肪細胞が筋線維芽細胞様の表現型へと運命転換することが示唆している。
総じて、dWATは脂肪酸放出を介して線維芽細胞機能を調節し、ECMの構造と力学的性質を制御することで創傷治癒の物理的基盤を提供している。これらの知見は、皮膚における脂肪細胞と線維芽細胞の高度な相互作用の実態を明らかにし、皮膚疾患、創傷治癒に関する新たな研究と治療戦略の構築に寄与するものである。
注:相変わらず、原文では「dermis」と「subcutaneous tissue」の用語の使い方がおかしい以下略。
注:脂肪酸酸化とECM産生に直接的な因果関係があるかのように書かれていますが、示されているのはあくまで「遺伝子発現変化」です。実験系の限界ですね。
注:ATGL阻害と真皮肥厚についても、やや論理の飛躍が以下略
注:dWATからmyofibroblastへの分化経路については不明ながら、引用文献では、dWATに由来する脂肪細胞が創傷後にmyofibroblast様表現型(αSMA陽性)を示すことが系譜追跡と免疫染色で示唆されています。
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