論文紹介ーざ瘡瘢痕に対するマイクロジェットインジェクターを用いた治療 | 美容皮膚科医の日常ーペルラクリニック神宮前院長 本田淳

美容皮膚科医の日常ーペルラクリニック神宮前院長 本田淳

一美容皮膚科医の想い

東京都渋谷区 原宿 表参道
ペルラクリニック神宮前院長
本田淳のブログ

いつも当院のブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。

 

当院は、院長が診察から治療まで一貫して施行すること(ワンドクター制)を特徴としています。

◆  ペルラクリニック神宮前Webサイト

 

【 以前の当院アドレス  info@perla-j.jp  は、現在ご利用になれません

メールでのご予約・ご相談の方は、以下のフォーム 

https://perla-clinic-j.com/inquiryよりご連絡ください。

 

お手数をおかけして申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします】

 

 

 

以下本文となります。

―――――――――――――――――

 

マイクロジェットインジェクターに関する論文をご紹介します。

 

 

 

2024年の論文です。

 

 

要約です

緑の文字は私が書き足したものですので、ご参考まで(読み飛ばし推奨)
 

イントロ

尋常性ざ瘡(ニキビ)はしばしば永久的に瘢痕を残す場合があるが、中でも萎縮性瘢痕(atrophic scars)が典型的である。萎縮性瘢痕は、その有病率および患者のQOLへの影響の大きさから、大きな課題となっている。治療選択肢は多岐にわたり、ポリ-D,L-乳酸(poly-D,L-lactic acid, PDLLA)を用いる手法も含まれる。

目的
本研究の目的は、レーザーアシストノンニードルマイクロジェットインジェクション(laser-assisted needle-free microjet injection)による PDLLA投与が、萎縮性瘢痕の治療において有効かつ安全であるかを評価することである。
 

メソッド
顔面の萎縮性瘢痕を有する韓国人被験者5名を対象に、PDLLA溶液(!?)をマイクロジェットシステムを用いて5回施術した。評価は、ベースライン、各治療セッション前、ならびに12週および22週のフォローアップ時に行った。評価項目は、Global Aesthetic Improvement Scale(GAIS)および患者満足度スコアを用いた

 
結果

12週および22週のフォローアップ評価において、萎縮性瘢痕およびテクスチャーの改善が認められ、患者満足度も高かった。施術に伴う不快感は軽微であり、一過性の副作用がみられたが、フォローアップ期間中に有害事象は報告されなかった。

結論
当該システムにより投与されたPDLLAは、顔面の萎縮性瘢痕の改善に有効であると考えられる。長期的な安全性および持続効果を評価するためには、今後、 RCT(randomized controlled trials)の実施が必須である。

 

 
以下、本文から抜粋した追記事項(一部)です。
ご興味のある方のみどうぞ。
 
 
イントロ
  • 萎縮性瘢痕は、治癒過程におけるコラーゲン産生と分解の不均衡に起因して発生し、これにより真皮内のコラーゲン線維が酵素分解される(MMPsによる過剰分解や、TIMPsの発現低下・機能低下による間接的な分解促進、つまり MMPs/TIMPsバランスの破綻) 
  • PDLLAは、microneedle fractional radiofrequency、manual injections、needle-free jet injections等、様々な手法によりざ瘡瘢痕の治療を目的とした注入剤として研究されてきた。
  • 本研究で使用したレーザーアシストタイプマイクロジェットインジェクターは、高速ジェット圧を利用して振動と衝撃(vibrations and shocks:一般用語を用いていますが、oscillatory mechanical strain、impact-induced strain:shear stress・・・以下略)を発生させ、細胞内のメカノトランスダクション(mechanotransduction)を誘導する。
  • この後、機器の説明らしきものがありますが、・・・前ブログの論文・同一著者の方が、今少しきちんと書かれています。
 
メソッド
  • 萎縮性の顔面ざ瘡瘢痕を有する33歳から52歳の韓国人被験者5名が参加(男性1名、女性4名)。Fitzpatrick skin type III
  • 現在、同疾患で治療中の者および過去6か月以内にEBDを含む顔面の美容治療を受けた者は除外した。
  • PDLLA 50 mgおよびヒアルロン酸(HA)7.5 mgを含有する製剤を、10 mLの生理食塩水に溶解・dissolved(?懸濁・suspensionでは?)し、使用前に2時間にわたりボルテックス撹拌(vortexing)を行った。
     
  • プロトコル
    1か月に2回、計5回の治療セッションを実施され、トータル3mlの希釈されたPDLLAが用いられた。施術は、すべて同一の皮膚科専門医が施行した。
    注入に際し、口径200 μmのノズルを使用し、周波数30 Hzで1セッションあたり14,000〜15,000パルスを照射を行った。1パルスあたりの薬液送達量は0.2〜0.3 μLで、3 mlの生理食塩水にPDLLA 16 mgが含まれていた。
    この部分、忠実に訳しましたが、トータル3ml(:total of 3cc  一般的には科学論文で㏄ は避 略)という書き方が色々と紛らわしく・・・1パルス 0.2~0.3μL 1セッション14,000~15000ですから、計算して辻褄をお考えください。英文に問題が 略

     
  • 評価
    ベースライン時、各治療セッション前、および最終セッション後12週のフォローアップ時に、臨床用デジタル写真および3D画像(LifeViz Infinity;QuantifiCare社)を撮影した。
    治療効果の評価は、最終セッション後12週および22週に実施され、GAISを用いて、盲検化された2名の研究に関与していない医師によって行われた。
    GAISスコアは1~5の5段階で評価された。
    審美的結果に対する被験者自身の満足度については、同じく12週および22週のフォローアップ時に、0〜3の4段階評価スケールを用いて自己評価された。高スコアはより高い満足度を示す。
 
結果
  • 最終セッションから12週後のフォローアップにおけるGAISおよび患者満足度スケールの全評価項目において、改善を示す良好な結果が得られた。
  • これは22週後のフォローアップ時点でも安定的に維持された。全被験者が萎縮性瘢痕の改善について高い満足度を示し、さらにskin textureの向上も自覚したTable 1
  • 全被験者が、施術中に軽度の不快感を報告しており、疼痛スコアは0〜5のスケールで2〜3の範囲であった。各治療後には軽度のoedema(BrE)およびerythemaが認められ、いずれも約24時間以内に消退した。
  • 軽度の点petechiaeが全被験者に認められたが、72時間以内に自然消退した。
  • 22週間のフォローアップ期間中、製剤に起因する有害事象(結節形成や局所的な炎症等)は一切認められなかった (Figures 1234, and 5).
    (スコアの平均値・中央値や統計的有意性・p値などは記載されていません・・・n=5ですから、そもそも統計的推論を行っても本質的に検定力不足となりますね。後ほど言及されます)
考察
  • 本研究の焦点は、新たな瘢痕治療法として注目されているPDLLAである。
  • PDLLAは、生体適合性・生分解性・生体刺激性を有する合成ポリマーであり、真皮内コラーゲンの生成を促進し、時間の経過とともに徐々に体積増加をもたらすことが知られている。
  • 先行研究では、PLLAがローリング型のざ瘡瘢痕に対し、最長で4年間の改善効果を持続する可能性が示唆されている(全文が読めず4年間云々は確認できませんでした
  • PDLLAは結節や異物反応のリスクが低く、良好な安全性プロファイルを示しているという報告もある。
  • 本研究で用いられた製剤は、粒子径50 μm未満のPDLLA 50 mgに少量のヒアルロン酸(HA)を添加した懸濁型フィラーである。
     
  • 粒子径の小さいPDLLAは、真皮再生効果を有し、 fine wrinkles, skin rejuvenation, whitening, erythema, and photoaging等に対して有効である。一方、粒子径の大きいPDLLAは、通常、皮下への注入によってボリューム増加(subcutaneous volume augmentation)を目的として使用される。
  • 希釈したPDLLAを真皮内に注入することで、陥凹性瘢痕等の病変に対しても適用可能であり、manual techniqueと比較して優れた治療効果が得られる可能性がある。
     
  • 先行研究により、PDLLAには、ECM、I型およびIII型コラーゲンの再生、基底膜の再構築、弾性線維の修復、幹細胞の動員と分化、真皮乳頭層線維芽細胞の増殖促進等の作用があることが報告されている。
  • PDLLA製剤を粒子に分割することで、免疫反応時に細胞外(ECM)に囲まれる面積が増え、皮膚の再生に寄与する。 さらに、1ショットあたりの注入量が少ないため、異物反応のリスクも軽減される(直訳です・・・曖昧な表現で、論理の飛躍があるようにも思います。前ブログで触れています).
  • 本治療の目的は、より深部への薬剤送達を必要とする萎縮性瘢痕の外観改善であり、当該システムを用いることで、真皮への迅速かつ精密な穿孔(puncture )が可能となる。同時に、manual techniqueでは達成できないmechanotransduction効果を期待できる(manual techniqueでもmechanotransductionは生じますので、本来はエビデンスを示す必要があります)
     
  • Loftiらは、多様な形状の萎縮性ざ瘡瘢痕に対して、RFアシストサブシジョン(radiofrequency-assisted subcision)とPCL(polycaprolactone)ベースのフィラーとの併用療法を実施し、その有効性および安全性を評価した。
    この研究は、単群準実験的デザイン(single-arm quasi-experimental design)であり、中等度から重度の顔面萎縮性ざ瘡瘢痕を有する10名の被験者を対象とした。介入後、ざ瘡病変の総数および特定のサブタイプにおいて顕著な改善が認められた(統計分析がなされているようです。Tables 1 and 2)。当該研究では症例数の制約が方法論的限界として認識され、より大規模な検証研究の必要性が強調された。
     
  • Ahnらは、頬部および眉間部に生じたアイスピック型およびボックスカー型の瘢痕に対し、直径1 mmの回転式スカルペル・メスを用いた回転式部分切除術(rotational fractional resection )の有効性を評価した。
    被験者3名に対して1回の治療を実施し、術後2か月時点での瘢痕外観の改善および有害事象について評価が行われた。
    結果、瘢痕の著しい改善が認められ、有害事象としては軽微な suture markのみが報告された。当該手法は、レーザー治療に伴うphotothermal damageを回避しつつ、瘢痕改善を図る点で意義深い。
     
  • 本研究の限界
    被験者数が少なく、統計的検出力・検定力(statistical power)が不十分であった。
    参加者はFitzpatrick skin type IIIに分類される韓国人のみであり、かつ大半が女性であった。
    正確な注入量の定量が困難であり、各被験者へのPDLLA注入量が標準化されていない。
    本研究における全施術は1名の術者によって実施されたため、他の術者による再現性や技術差による変動が考慮されていない。
 
結論
  • 本研究では、レーザーアシストニードルフリーマイクロジェットインジェクターを用いたPDLLAの投与により、主として萎縮性瘢痕の改善および肌質の総合的な改善(global skin quality improvement)といった効果が見受けられた。
    本治療法の有効性と長期的な安全性・効果の持続性を確立するためには、randomized controlled trialsを含むさらなる研究が必要である。


    個人的には、PDLLAのマイクロジェット生成時の剪断応力・shear stressによる粒子構造の変化リスクについて、どのように言及されるか楽しみだったのですが・・・
 
以上となります。


―――――――――――――――――

―――――――――――――――――

◆  ペルラクリニック神宮前Webサイト(原宿・表参道)

ポリシー・診療の流れ

ウルセラ説明

ソフウェーブ

ウルトラセルZi:

ミラドライ説明

XERF説明

治療費一覧

◆ お問い合わせ

◆ アクセス ( JR原宿駅 徒歩1分  )

◆ 診療時間 10時~18時  /月・木休診(振替診療の場合もあります)

 

◆ 美容皮膚科ペルラクリニック神宮前では、初診から治療・治療後フォローまで、院長が一貫して、お一人お一人に最適化した治療を、良心的な価格でご提案、実施いたします。

 

◆ 東京都内の他、埼玉、千葉、神奈川等近県、日本全国からご相談をいただいております。


 

ブログトップページに戻る