論文紹介ー抗老化関連ニュースから・・・ | 美容皮膚科医の日常ーペルラクリニック神宮前院長 本田淳

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美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。

 

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以下本文となります。

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ニュースでも取り上げられていた話題です。原著論文をご紹介します。

Preliminary Data on the Senolytic Effects of Agrimonia pilosa Ledeb. Extract Containing Agrimols for Immunosenescence in Middle-Aged Humans: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Parallel-Group Comparison Study

 

2025年の論文です。

 

要約です。

 

  • アグリモールを含有するキンミズヒキ(Agrimonia pilosa Ledeb.APE)抽出物の老化免疫細胞除去効果を評価するために、免疫の老化を有する40〜59歳の日本人110名を対象にして、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間試験を実施した。
  • 被験者をAPE群(53名)およびプラセボ群(55名)に分け、8週間摂取させた。
  • 主要評価項目はSA-βGal高発現CD8+ T細胞の割合のベースラインからの変化、副次評価項目には、SA-βGal 高発現 CD4+ T 細胞の割合、CD4+ および CD8+ T 細胞サブセット等とし、APE投与(50mg/日;アグリモール0.2mg含有)の影響を評価した。
  • 全体としては主要・副次評価項目ともに統計学的有意差は認められなかったが、男性集団ではAPE摂取によりSA-βGal 高発現CD8+ T 細胞の割合が減少し(p=0.044)、ナイーブCD8+ T細胞(naïve CD8+ T cell)の増加とエフェクターメモリーCD8+ T細胞(effector memory CD8+ T cell)の減少が確認された。
  • これらの所見は、APEがヒト向けのセノリティック剤(老化細胞除去剤)として潜在的可能性を持つことを示唆するものの、本試験は予備的な知見に留まり、今後の検証が必要である。

 

 

 

以下、本文から抜粋したセミプロレベルの追記事項です。
ご興味のある方のみどうぞ。
緑字は私が書き足したものですので、ご参考まで
 
結果 より
  • 635名に対してスクリーニング検査が実施され、そのうち110名が試験対象として選定された。
  • プラセボ群(n = 55、男性28名、女性27名)およびAPE群(n = 55、男性27名、女性28名)
  • 年齢に関しては両群間で有意差はない。
  • 登録対象者では非登録群と比較して、 high-SA-βGal CD8+ 、CD4+T cellの割合が有意に高かった
    →40〜50歳代における免疫老化を呈するコホートであることを示唆(と記載されています)
  • naïve CD8+ T cellは登録群で有意に低く、一方でeffector memory CD8+ T cell およびTEMRA(terminally differentiated effector memory RA⁺)細胞数は有意に高かった。
    →登録対象者が年齢以上に免疫老化状が進行しいる状態にあることを示唆(と記載されています)
  • 2名脱落:プラセボ群 55名完遂。、APE群  53名完遂。
 
  • 平均摂取率は、プラセボ群で99.7%、APE群で99.97%であった。
  • FAS(Full Analysis Set)のベースライン特性のパラメータに関しては、プラセボ群とAPE群間に有意差は認められなかった。

     
サブグループアナリシス
  • high-SA-βGal CD8+ T cellの割合に関して、男性被験者については、8週時点でAPE群がプラセボ群よりも有意に低かった。女性は有意差なし 。
  • CD8⁺ T細胞/リンパ球比およびCD4⁺/CD8⁺比に関して、ANCOVAまで実施したが、有意差なし。
  • T細胞サブセット について
    naïve CD8+ T cell:男性被験者において、8週時点ではAPE群がプラセボ群よりも有意に高い値を示した。
    effector memory CD8+ T cell:男性被験者において、8週時点ではAPE群がプラセボ群よりも有意に低い値を示した(ANCOVA, p=0.0462)。
    このことについて、naïve CD8+ T cellの増加は、老化したeffector memory CD8+ T cellの除去による可能性を示唆するものである」と記載されています・・・因果関係ではなく相関関係ですね。
     
  • 探索的有効性解析
    PBMCにおけるp16、p21、p53、Sirt1の遺伝子発現量(老化関連分子マーカー)をdPCR法で測定した。その結果、これらの遺伝子発現レベルの変化は、high-SA-βGal CD8+ T cellの変化とは関連性が見られなかった。
  • 安全性
    有害事象:プラセボ群55名中14名に15件、APE群 54名中14名に22件。軽度で、試験期間中に自然消失。
    ただし、試験責任医師により、有害事象は試験サプリメントとの因果関係はないと判断された。
 
考察 より
  • Geroscienceは老化プロセスそのものを標的とした疾病予防戦略。
    老化特性の一つである細胞老化は、その中でも重要な因子であり、セノリティクス(老化細胞除去剤)は、細胞老化に対する治療手段として研究されている。
  • 伝統的な薬用ハーブであるAPEは、動物実験ではセノリティクス効果が報告されている。
  • 本研究では、免疫老化を有する壮年の日本人被験者を対象に8週間のAPE摂取実験を実施した。
     
  • 結果、全体集団では効果は観察されなかったが、男性群において high-SA-βGal CD8+ T cell減少・effector memory CD8+ T cell減少・naïve CD8+ T cell増加が観察された。
    先行研究によると、high-SA-βGal CD8+ T cellは、memory T cellと TEMRA T cellに由来すると推測されており、effector memory CD8+ T cellはSA-βGal高発現であることから、当該研究において減少したのは、この細胞群である可能性が高い
    実際に、本研究では、central memory T cell は不変、かつ、effector memory CD8+ T cellは有意に増加、naïve CD8+ T cellは増加しているため、老化したeffector memory CD8+ T cellの選択的除去が行われた可能性を示唆する(が、構成比率の変化を示しているのみなので略)

    また、先行研究により、high-SA-βGal CD8+ T cellは、テロメアの機能障害、p16依存性細胞老化(p16-mediated senescence)、SASP因子産生など、老化細胞の典型的表現型を示すことが実証されている。よって、今回のhigh-SA-βGal CD8+ T cellの減少は、少なくとも表現型の観点からはセノリティクス作用を示している可能性がある。

    SA-βGalは老化のスクリーニング指標として有用であるが、単独マーカーとしては特異性に限界がある。KLRG1(killer cell lectin-like receptor G1)やCD57、p16、γ-H2AXなどの追加の老化マーカーの評価が必要である。また、SASP因子(IL-6, IL-8, MMPs 等)はセノリティクス効果を評価するのに有用である。

    本研究において、p16、p53、Sirt1の発現量に有意な変化は認められなかった。この原因については、APEの老化細胞除去効果が限定的である可能性、または解析に用いたPBMCは、CD3⁺ T細胞の他、B細胞、NK細胞、単球、樹状細胞を含む異種細胞集団であるため、CD8⁺ T細胞に特異的な変化を検出しづらくなった可能性がある(測定対象の細胞集団の異質性が結果の感度を低下させた可能性がある)。

     
  • 性差について
    女性ホルモン(特にエストラジオールやプロゲステロン)およびその調節因子(FSH、LH)による、免疫細胞の機能および老化プロセスへの影響(エストロゲンは老化関連タンパク質の発現制御に関与している等の先行研究がある)。

    加えて、閉経前・周閉経期・閉経後女性におけるホルモン血清レベルの変動は、セノリティクス介入に対する反応性に影響を与える可能性がある。

    エストロゲンはアンチエイジング効果を有することが複数の研究で示されており、将来的には、被験者の性ホルモンレベルを測定し、APEの老化細胞除去効果との関連を検証する必要がある。
     
  • セノリティクス剤とメカニズム
    標的は、抗アポトーシスプロテイン(BCL-2ファミリー等。老化細胞はアポトーシス抵抗性を獲得しており、この経路の阻害を目的とする)、機能不全に陥ったオルガネラ(ミトコンドリア等)、老化細胞表面抗原、膜電位の異常等

    APE  は、250種以上の植物由来成分を含有し、その一部がBax・caspase-3活性化を誘導し、またERK–AKTシグナル経路を抑制し、がん細胞のアポトーシスを促進するという報告がある。

    なお、APE  に含まれる、フロログリシノール(アグリモール)は、SA-βGal-positive doxorubicin-induced senescent WI-38 cell(ドキソルビシン誘導SA-βGal+老化WI-38細胞)の割合を減少させる(アポトーシス誘導を介したセノリティクス作用が示唆されている)。

    さらにアグリモールB は、状況依存的にミトコンドリアに対して相反する作用を示すことが報告されている。すなわち、Sirtuin/Nrf2経路を活性化し、ミトコンドリア生合成(biogenesis)とエネルギー産生促進に寄与し、ミトコンドリア機能を改善する作用がある。その一方で、腫瘍細胞においてはPGC-1α(peroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator 1-alpha)に結合し、ミトコンドリア機能を阻害しアポトーシスを誘導することも報告されている。老化細胞においてはミトコンドリア機能を抑制することでアポトーシスを誘導する可能性がある。
     
  • APEのセノリティクス効果とその臨床的意義
    本研究の結果は、今後のセノリティクス開発に向けた予備的な知見として意義を持つしかしながら、APEの老化細胞除去作用を明確にするにはさらなる研究が必要である。
    仮にセノリティクス効果が確立されたとしても、それが加齢関連疾患の実臨床に有効か否かは不明である。

    また、中枢神経系の一部の疾患に関して免疫細胞の関与が複数報告されているが、これらの知見からAPEによる老化CD8⁺ T細胞の除去によって、中枢神経系に好影響を与える可能性が示唆される。実際、本研究において、APE摂取により活力・疲労感といった心的状況が改善されることも確認されている。
 
結論  より
  • 今後の研究設計について
    免疫老化への介入法としてAPEの有用性を検証するためには、以下の統合的な研究アプローチが必要である。
    in vitroモデルを用いた機序解析
    動物モデルによるin vivo検証
    大規模かつ長期的なヒト臨床試験による有効性および安全性の評価
 
制限事項   より
  • 年齢層の限定性
    60歳以上の高齢者に対するAPEの効果は未検証である。
  • 性別特異的反応の原因精査が不十分
  • SA-βGalのみを老化細胞のマーカーとして評価対象としており、他のマーカーの評価がなく、包括的理解が不十分

  • CD8⁺ T細胞における細胞周期関連マーカー(p16、p21、p53、Sirt1)の発現動態を評価できておらず、メカニズムが未解明

  • 本研究では、細胞老化への影響を免疫老化マーカーによって検証したものであり、加齢関連疾患に対する有効性を示したものではない。

 

 
 
以上となります。
 

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