皮膚の細胞老化に関して:シグナル伝達経路と天然由来の治療薬 | 美容皮膚科医の日常ーペルラクリニック神宮前院長 本田淳

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以下本文となります。

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皮膚の老化に関する論文をご紹介いたします。

 

Cellular senescence in skin-related research: Targeted signaling pathways and naturally occurring therapeutic agents

 

 

 

2023年の論文です。

 

まずは、要約から。

 

皮膚細胞老化の研究の現状

  • 細胞老化(cellular senescence)は、研究者の関心を集めているが、ヒト皮膚におけるその役割については、いまだに明確ではない。
  • 皮膚は人体で最大の臓器であり、外部環境および内部環境の影響を受けるため、細胞老化の研究や治療標的として適している。
皮膚細胞老化の特徴
  • 細胞老化は有益な側面と有害な側面を持つため、治療の方向性は状況に応じて異なる。
  • 有益な側面:腫瘍抑制(がん化を防ぐ)、創傷治癒(傷の修復を促進)
  • 有害な側面:皮膚老化の進行、慢性炎症や疾患の発症
 
皮膚老化に対する治療戦略
  • セノリティクス(senolytics)
    • 老化細胞を選択的に除去し、皮膚の健康を維持する。
  • セノモルフィクス(senomorphics)
    • 老化細胞の性質を調整し、慢性炎症やSASP(老化関連分泌現象)を抑制する。
  • プロセノセンス(prosenescent)アプローチ
    • 必要に応じて、創傷治癒などの目的で細胞老化を一時的に促進する。
植物由来成分の活用
  • 植物由来の化合物が、皮膚の細胞老化に対する有望な治療薬候補として注目されている。
 
今後の展望
  • 分子レベルのメカニズムのさらなる解明
    • 皮膚細胞老化に関わるシグナル伝達経路の詳細な解析が必要。
  • 標的治療の最適化
    • 皮膚に対する外用療法と全身療法(経口薬等)の適切な選択。
  • 臨床試験の実施
    • セノリティクスやセノモルフィクスの有効性と安全性を確認するための試験が求められる。
 
 
 
以下、全文からの抜粋、追加です。
興味がある方のみどうぞ。
 
 
 

イントロ

  • 細胞老化は、加齢に伴って増加する不可逆的な細胞周期停止状態であり、加齢関連疾患(骨粗鬆症、神経変性疾患、がん、特発性肺線維症、2型糖尿病、肥満等さまざまな慢性疾患)に関連している。

  • 皮膚における細胞老化の役割はまだ明確ではない。

  • 本研究の目的は、皮膚の細胞老化に関する最新の進展をレビューし、生理学から病理学、シグナル伝達経路(miRNAの役割を含む)までを包括的に論じること。同時に、天然植物由来成分の皮膚外用剤についても焦点を当てる。
     

  • 研究の意義:皮膚の細胞老化に関与する細胞メカニズムやシグナル伝達経路の理解は、根本的な原因を標的とした治療法の開発に有用である。

 

 皮膚老化の機能的・生理学的特徴

  • 内因性老化:生理的なプロセスによる老化。乾燥肌、細かいシワ、表皮の菲薄化、メラノサイトの減少、ランゲルハンス細胞の減少、真皮表皮接合部(DEJ)の平坦化、線維芽細胞の減少、細胞外マトリックス成分(コラーゲン、弾性線維、オリゴ糖)の分解、毛細血管の減少が特徴。

  • 外因性老化:紫外線(UVR)、汚染、喫煙などの環境要因による老化。角質層の肥厚、肥大した異常なメラノサイト、異常な弾性線維の蓄積(elastosis)、フィブリンの断片化が特徴。

  • 殊に紫外線(UVR)の影響について:UVRは、細胞の増殖を妨げ、p16INK4a、p21CIP/Waf-1、p53の発現をアップレギュレートする。
     

  • 細胞老化は、核DNAの損傷、活性酸素種(ROS)の生成、ミトコンドリア機能障害、およびSASP成分の放出等が関与している。

  • 1961年にHayflickとMoorheadが、培養中のヒト肺線維芽細胞が増殖能力を失い、不可逆的な細胞周期停止状態に入ることを発見(細胞レベルでの老化理論 を初めて提唱)

  • Jeyapalanら(2007)は老化したヒヒの皮膚に老化細胞が蓄積する ことを世界で初めて報告した。

  • 現在では、細胞老化が皮膚老化の基本的なメカニズムである というエビデンスが増えつつある。また、真皮線維芽細胞がこのプロセスで最も重要な細胞とされている。

  • 老化細胞は、良性母斑、前癌病変、加齢関連疾患の部位など、ほぼすべての皮膚領域で検出される。

  • 代謝的にアクティブな老化細胞は、サイトカインや細胞外マトリックス修飾酵素(MMPs、ADMAファミリープロテアーゼ、LOX等)などを放出し、皮膚の完全性と機能を損なう可能性がある。

 
ケラチノサイトとメラノサイトにおける細胞老化の特徴
  • ケラチノサイト

  • 特徴: 表皮の主要な細胞種。加齢に伴う老化細胞の蓄積は比較的少ないが、様々な損傷要因に常にさらされている。

  • サブポピュレーション: 分化状態と機能に応じて異なる。終末分化したケラチノサイトは脱落しやすく、損傷応答としてアポトーシスを起こす。

  • 加齢の影響: 表皮のターンオーバーが遅くなり、老化細胞の蓄積が促進される。

  • 老化マーカー: SA-β-gal、p21CIP/WAF-1、ラミンB1の減少、p16INK4a、TAF、HMGB1、H2A.Jの増加が検出される。p16INK4a陽性細胞は基底層に限局し、形態的にメラノサイトと類似していることから、老化メラノサイトは老化ケラチノサイトよりも多く存在する可能性が指摘されている。
     

  • メラノサイト

  • 特徴: メラニンを産生し、隣接するケラチノサイトを光から保護する。加齢や光損傷に関連した病変でp16INK4aがアップレギュレートされると、メラノサイトは表皮の主要な老化細胞集団となる。

  • 他の老化マーカー: HMGB1の減少、機能不全のテロメアなど。

  • パラクリン効果: 老化メラノサイトはパラクリン作用により周囲の細胞の増殖を抑制し、表皮萎縮を引き起こす。

  • セノリティクス薬: ABT-737は老化メラノサイトを効果的に除去するが、Bcl-2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質Bcl-wが過剰発現している場合、ABT-737やABT-263に対する耐性が生じる。

 

線維芽細胞

  • 線維芽細胞の役割と老化への影響

  • 線維芽細胞は、ECMの構築と維持を担う細胞であり、皮膚老化の主要な原因ともなる。

  • ケラチノサイトに比べて、増殖速度は遅く、また抗酸化力も低い。さらにヌクレオチド除去修復の効率も低い。これにより、酸化ストレスやDNA損傷が蓄積しやすい。
     

  • 老化線維芽細胞の特徴

  • 皮膚老化: 老化線維芽細胞は増殖を停止し、SASPを分泌する。SASPは炎症を誘発し、ECMを分解し、組織微小環境を撹乱する。

  • 全身の老化への関与: 線維芽細胞は結合組織実質の主要な構成要素であり、全身の老化や加齢関連疾患にも関与する。

  • 老化マーカー: ヒトの老化線維芽細胞では、加齢に伴いp16INK4aの発現が増加する(in vitroおよびin vivoで確認)。
     

  • 線維芽細胞のサブタイプと老化

  • 乳頭層と網状層の線維芽細胞は、形態と機能が異なる。加齢に伴い、乳頭層線維芽細胞が網状層線維芽細胞に分化する可能性が指摘されている。セノリティクス薬は、この分化を逆転させ、乳頭層線維芽細胞の表現型を回復させる可能性がある。
     

  • ミトコンドリア機能不全と老化

  • 老化線維芽細胞では、ミトコンドリア機能不全が観察され、NAD/NADH比が低下する。これにより、IL-1経路に依存しないSASPが誘導される。
     

  • 線維芽細胞と表皮の相互作用

  • IGF-1の役割: 真皮線維芽細胞は、ケラチノサイトの増殖を促進するIGF-1を分泌する。IGF-1はケラチノサイトのIGF-1受容体を活性化し、UVB応答に重要な役割を果たす。

  • 老化線維芽細胞ではIGF-1の発現が減少し、ケラチノサイトの適切なUVB応答が妨げられる。

 

 

細胞老化と関連するシグナル伝達カスケード

  • 細胞老化の定義: 正常細胞がさまざまなストレスに対して示す生理的な応答。近年の研究により、さまざまなストレスが、シグナル伝達経路を活性化するメカニズムや、老化との関連について重要な知見が得られている。

  • 複数の生理的ストレスが同時に作用することは、老化プロセスに甚大な影響を与える。
     

  • 細胞老化のマーカーとシグナル経路

  • 初期の研究: 40年前にストレス下での細胞老化が報告されたが、そのメカニズムの解明は特定のマーカーに依存していた。

  • シグナル経路の評価: 増殖、アポトーシス、細胞周期に関連する特定のタンパク質やマーカーを評価することにより、細胞が老化プロセスに誘導されるか否かを予測できる。
     

  • 主要な老化関連シグナル経路

  • p16INK4a/Rb経路および p19ARF/p53/p21CIP/WAF-1経路:これらは細胞周期を制御する重要な経路で、細胞老化の評価に頻繁に使用されている。
     
  • BubR1経路:

    • 有糸分裂チェックポイントタンパク質BubR1の減少は、マウスモデルで早期老化を引き起こすことが示された。

    • p16とp19の相反する役割: p16Ink4aの不活性化は細胞老化と早期老化を軽減し、p19Arfの不活性化は老化を促進する。
       

  • MAPK経路:

    • 細胞老化を引き起こし、SASPを活性化。

    • 悪性腫瘍や加齢関連疾患を含む生理的および病理的プロセスに関与。
       

  • Notch経路

    • リガンド依存性の活性化によりNotch1細胞内ドメイン(N1ICD)を解放し、細胞老化を誘導。
    • 二次的ながん遺伝子誘導性老化にもNotchが必要
       
  • Nrf2-ARE経路:

    • 細胞の酸化還元バランスを調節し、細胞内酸化ストレス損傷を軽減。

    • Nrf2の発現低下は早期老化を誘導。
       

  • p53経路:

    • 細胞周期停止、DNA修復、アポトーシスを制御。

    • p53機能の喪失と染色体不安定性が二次的な細胞老化を誘導。

    • p53 および p21 の発現低下が細胞老化に関与する
       

  • FOXO経路:

    • 細胞周期、アポトーシス、代謝を制御。

    • 特にFOXO4-p53アキシスは加齢関連疾患の治療標的として注目されている。


       

老化によるDNA損傷
  • DNA損傷と細胞老化の関係

  •  細胞分裂に伴い、複製中のDNAに変異が生じるリスクが増加する。増殖が促進するほど、悪性腫瘍や加齢に伴う異常のリスクが高まる。

  • 老化プロセスは、時間の経過とともに内在性要因(遺伝的要因、ホルモン等)と外在性要因(紫外線曝露、大気汚染等)によって進行し、酸化還元バランスの不均衡やDNA損傷を引き起こす。
     

  • 皮膚老化と光損傷

  • 光損傷の影響: 皮膚老化は多因子性のプロセスであり、光損傷の影響を強く受ける。特にUVAとUVBがDNA損傷とがんの発症に関与する。

    • UVA: 変異原性は弱いが、真皮に深達し、酸化ストレスと炎症を引き起こす。

    • UVB: より強い変異原性を有し、DNAと直接相互作用してジピリミジン光生成物を形成し、DNA損傷を引き起こす。

  • DNA損傷の評価

    •  in vitro:UVBに曝露された皮膚線維芽細胞とケラチノサイトでは、DNA損傷、細胞周期停止、SA-β-gal活性の増加、p16INK4a、p21CIP1/WAF1、p53の活性化、ラミンB1のダウンレギュレーションが観察された。

    • in vivo:UVB曝露により、マウス表皮でDNA損傷とラミンB1が低い老化細胞が確認された。また、毛包の前駆細胞数が減少し、表皮と毛包前駆細胞領域でp21CIP1/WAF1が蓄積が認められた。

  • タバコ抽出物の影響:タバコ抽出物を皮膚および口腔線維芽細胞に塗布すると、早期の細胞周期停止、酸化DNA損傷、炎症性サイトカインとMMPの分泌、細胞結合タンパク質(E-カドヘリンとZO-1)のダウンレギュレーションが引き起こされた。

  • 持続的なDNA損傷の結果、早期の細胞老化と皮膚老化の加速を引き起こす。また、がんの発症リスクを高める可能性がある。

 
皮膚病変における細胞老化の役割
  • 細胞老化の二面性:一時的な細胞老化は、創傷治癒において重要な役割を果たす。特に、SASPの抗線維化および血管新生促進作用が、組織リモデリングを促進する。一方、慢性的な老化細胞の蓄積は、皮膚機能や健康に悪影響を及ぼし、老化を促進する。

  • 創傷治癒について
    急性創傷の治癒: 短命の老化線維芽細胞が創傷部位に蓄積し、SASPの一時的な誘導が治癒を促進する。特に、PDGF-AA(血小板由来成長因子AA)の分泌が筋線維芽細胞の分化を誘導し、修復に寄与する。

    慢性創傷: 糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、放射線性潰瘍などでは、老化レベルが高い。セノリティクス(例:ダサチニブ+ケルセチン)による老化細胞の除去が、放射線性潰瘍の改善に有効であることが示されている。
 
  • 老化と創傷治癒
    再生能力の低下: 加齢に伴い、老化細胞の蓄積が増加し、皮膚の再生能力が低下する。若いマウスに老化線維芽細胞を移植すると、創傷治癒が遅延し、自然老化マウスと同様の治癒速度を示す。

    若年と高齢の反応差: 若年者では創傷治癒中にp21とp53が誘導されるが、高齢者ではこの反応が弱い。

  • ケロイドと細胞老化
    ケロイド中にも老化線維芽細胞が認められるが、老化細胞の蓄積が線維芽細胞の増殖停止を引き起こし、ケロイドの進行を抑制する可能性が示唆されている。

 
  • 皮膚腫瘍と細胞老化

  • 脂漏性角化症: 加齢性の良性表皮増殖で、病変細胞にはp16発現が増加し、正常細胞より生存時間が長い。

  • 非メラノーマ皮膚がんにおける細胞老化の二面性:
    日光角化症(前がん病変)では間質細胞に高レベルの細胞老化が観察されている。
    一方、扁平上皮がん(浸潤性病変)では老化した線維芽細胞は希少である。

  • SASPの相反する作用:
    腫瘍抑制効果:免疫監視の強化、細胞老化の誘導
    腫瘍促進効果:血管新生促進因子、炎症促進性因子、メタロプロテイナーゼの放出
    p38MAPKとp44/p42MAPK経路を介した皮膚発がんの促進(扁平上皮癌の動物モデルで実証)。
     

  • メラノーマの形成メカニズムと細胞老化の関係:
    発症に関与する主要な遺伝子変異:BRAF、NRAS、NF1
    既存の母斑(慢性的に日光に曝露されてない部位)から発生する可能性を示唆。なお、遺伝子変異単独では悪性転換に不十分という知見がある。

  • 母斑における細胞老化の特徴:
    観察される老化マーカーは、SA-β-Gal、PTEN、p16INK4aで、これらは増殖停止を誘導する。また、異形母斑と早期メラノーマでは老化マーカーの発現が減少している。
     
  • 発癌における細胞老化の役割は複雑であり、解明するにはさらなる研究が必要である。
 
  • 色素性疾患と細胞老化

  • 老人性色素斑: 過色素部位では老化線維芽細胞が増加。

  • 肝斑: 光老化により悪化する多因子性疾患。病変部では老化線維芽細胞とケラチノサイトが観察される。

  • 白斑: 自己免疫疾患で、病変部および非病変部双方に老化ケラチノサイト、メラノサイト、線維芽細胞が存在。
     

  • 全身性強皮症と細胞老化

  • 全身性強皮症(SSc): 皮膚の線維化を主症状とする全身性自己免疫疾患。セノリティクス治療が有効であることが示唆されている。

  • ダサチニブ投与により SASP 遺伝子発現が低下し、改善が見られた。

  • ナビトクラックス(ABT-263)によって、ブレオマイシン誘発強皮症マウスモデルで、線維化を逆転させる効果が確認された。

  • 水疱性類天疱瘡、皮膚エリテマトーデス(CLE)、乾癬は、免疫老化が関与している可能性が指摘されている。

 
  • 毛髪疾患と細胞老化

  • 加齢性脱毛症: 毛包真皮幹細胞における老化細胞マーカーの発現。p16INK4aとSA-β-Galの過剰発現。AP1-Cyr61経路の調節異常が関与。毛包の間葉系ニッチでのSASP成分増加。

  • 男性型脱毛症: 10代からの発症する可能性がある。毛包真皮乳頭細胞の増殖能力低下。SA-β-Galとp16INK4a/pRb発現の増加。p16INK4aノックアウトにより、毛包真皮乳頭細胞の成長促進とG1期細胞数の増加。
     

  • 老化関連皮膚疾患という概念の提案: 加齢だけでなく、あらゆる年齢で発症する可能性のある疾患を含め、「老化関連皮膚疾患」として広く捉えることが重要だと考える。

 
 
植物由来バイオ化合物と皮膚細胞の老化
  • 老化細胞は、SCAPs(senescent cell antiapoptotic pathways)経路アップレギュレートによるアポトーシス抵抗性を示す。そこで、セノモルフィクス薬は、アポトーシスを誘導することなく老化やその分泌表現型(SASP)を抑制することで、セノリティクス薬とは異なる老化制御効果(セノセラピューティック効果)を発揮する。
  • 植物由来化合物の皮膚細胞老化の抑制:安全で緩やかな薬効だが累積的な効果が期待できる。
  • 抗老化成分・ポリフェノール:分類は4つ;フラボノイド;スチルベン;リグナン;フェノール酸。酸化ストレス、炎症、オートファジーを介して細胞老化を抑制する。また、単なる抗酸化作用にとどまらず、細胞代謝、増殖、炎症、成長に関与するタンパク質と相互作用する。さらに、老化細胞の除去を促進し、SASPを抑制する。
     
  • 天然由来のセノリティクス(senolytics)やセノモルフィクス(senomorphics)の作用メカニズムは異なり、完全には解明されていない。
  • 植物由来の抗酸化物質は、細胞の損傷を防ぎ、幹細胞性(stemness)を維持することで、老化を抑制する可能性がある。
  • 抗酸化物質のセノリティック効果は、用量と標的細胞の種類によって異なり、高用量の使用は、 DNA損傷リスク、早期老化誘導の可能性が指摘されている。
  • 詳細はTable 1 にまとめた。
 
 
将来の展望
  • 植物由来物質の将来性:
    • 現在の知見は主にin vitro研究に基づいており、in vivoモデルでの抗老化活性を示す研究は限られている。

    • バイオアベイラビリティ、最適なデリバリーシステム、副作用を最小限に抑えた最適な用量を解明することが必要である。そのためには、一貫した代謝プロファイルを達成するための標準化が必要となる。

  • 化学物質と植物由来成分の併用:ダサチニブ+ケルセチン(D+Q)の組み合わせは、複数の前臨床加齢関連疾患モデルで試験されており、老化細胞の除去に有効であることが示されている。
  • メトホルミンやラパマイシン等の合成セノモルフィクスは、老化抑制に有用であることが示されている。

  • プロバイオティクスとして Lactococcus lactisやSphingomonasなどの細菌が、皮膚の老化プロセスを抑制する可能性がある。

  • 細胞老化の二面性:
    有益な役割: 腫瘍抑制、創傷治癒・組織リモデリング(胚発生等)促進。
    有害な役割: 腫瘍促進、加齢関連疾患・肥満、糖尿病のリスクを高める。
     

  • 治療戦略:プロセノセンス療法とアンチセノセンス療法

    プロセノセンス療法(Prosenescence therapy)
    腫瘍抑制や創傷治癒を目的とした一時的な老化細胞の誘導が有効な場合がある。

    アンチセノセンス療法(Antisenescence therapy)
    老化細胞の蓄積による慢性炎症や疾患を防ぐため、セノリティクスやセノモルフィクスを用いる
     

  • がん治療への応用

    1-2パンチアプローチ: 放射線治療、アルキル化剤、アントラサイクリン系化学療法レジメンは、腫瘍細胞にアポトーシスや壊死を誘導するが、同時に細胞老化も引き起こす。そのため、化学療法・放射線治療後にセノリティクスを併用することで、老化細胞を除去するという治療戦略が提唱されている(Guida et al., 2021; Prasanna et al., 2021; Rahman et al., 2022)。

  • 皮膚におけるセノリティック療法の可能性
    全身性の老化関連疾患では、セノリティクスの経口投与が有効と考えられる(Iske et al., 2020; Wang et al., 2020)。しかし、皮膚の場合は、老化皮膚細胞が組織構造、完全性の破壊をもたらすため、外用セノリティック薬によって皮膚のrejuvenationが期待される(Chaib et al., 2022)、(Kohli et al., 2022)。

 
結論
  • 細胞老化は、さまざまな皮膚疾患において多面的な役割を果たすことが報告されている。皮膚は面積が広く、アクセスしやすい器官であり、外部環境と内部環境の双方に反応するため、細胞老化やセノリティクス/セノモルフィクス物質の作用を研究するための格好のターゲットである。

  • 天然由来の物質を中心に、治療アプローチを改善し、新たな抗老化剤を発見する機会が提供される。

  • 臨床試験で検証された老化経路を標的とする革新的なツールは、老化皮膚や老化関連疾患の個別化医療を可能にする。

 

以上となります。
 
 
 
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