非架橋ヒアルロン酸・アミノ酸製剤 論文紹介2:顔の若返り効果の形態計測分析 | 美容皮膚科医の日常ーペルラクリニック神宮前院長 本田淳

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以下本文となります。

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スキンブースター・ECM製剤に関する論文をご紹介いたします。

 

 

Morphometric analysis of the effects of high molecular weight sodium hyaluronate and amino acids mixture on face rejuvenation

 

 

2024年の論文です。

 

まずは、ごくごく簡単な要約です。

 

【目的】

  • 本研究では、ヒアルロン酸とアミノ酸を組み合わせた注入剤の美容的効果を検証した。

【メソッド】

  • 30~55歳の女性を対象に、高分子量ヒアルロン酸ナトリウムとアミノ酸(グリシン、L-プロリン、L-ロイシン、L-リシンHCL、L-バリン、L-アラニン)を有効成分とする製剤を中顔面およびフェイスラインに注入し、その形態的変化を客観的に評価した。

【結果】

  • 顔全体の水分レベルが有意に増加し、また、下顎角の角度、耳珠間幅、下顎角間幅、およびマリオネットラインの評価スコアの減少が確認された。これらの結果は、注射による機械的刺激と製剤中のヒアルロン酸とアミノ酸による化学的刺激が相乗的に作用し、肌質を改善する可能性を示している。

【結論】

  • 注入による機械的刺激が肌質向上に寄与することが示唆され、さらにヒアルロン酸とアミノ酸の混合注入剤は、安全で効果的なアンチエイジング治療のオプションになると考えられる。
 
 
 
以下は、専門的な追記事項・抜粋になります。
ご興味ある方のみどうぞ・・・読解に困難を感じる部分が多かったです。難易度が高いというよりも(略
 
 
イントロ
  • 皮膚の老化は、表皮・真皮・表皮真皮接合部など各層で生じる。
    老化は、生体内で遺伝、環境、生活習慣等、多くの要因が関与し、時間とともに生理機能が漸進的に低下する生理的プロセスである。

    近年、アンチエイジング香粧品 (Antiaging cosmetic products )は、化粧品と医薬品の特性をあわせ持つ外用製剤として用いられ、美容ケア産業の拡大に伴い、消費者需要に応えるべく増加し続けている。しかし、その合成成分が皮膚に蓄積し、毒性を生じる可能性があり、結果、正常な皮膚環境を損なう恐れがある。
    そのため、アンチエイジングを目的とした香粧品または有効成分について、科学的エビデンスに基づき客観的かつ厳密に効果を評価する必要がある。
     

  • 本研究では、高分子量ヒアルロン酸ナトリウム、グリシン、L-プロリン、L-ロイシン、L-リシンHCL、L-バリン、L-アラニンを有効成分として含む注入用混合製剤を、30~55歳の女性32名の中顔面およびフェイスラインに注入し、形態計測的解析を用いて効果を評価した。

    今回使用したマトリックスワクチン?(matrix vaccine)は、アミノ酸およびヒアルロン酸により線維芽細胞のコラーゲン・エラスチン産生を促進することで効果を発揮する。その結果、顔のボリュームロスの改善、シワの軽減、皮膚の保水力を強化することにより、若々しく自然な美しさをもたらす。また、抗酸化作用を有することから、皮膚の老化、水分の喪失、ニキビ跡、紫外線によるダメージ、小じわ等に対しても有効な治療法となりうる。

     本研究では、効果の評価を客観的かつ定量的に行うため、コンピューター支援解析を導入した。これは計算特徴重要性テストを採用し、従来の高価で複雑な評価方法に代わる測定手法である。この新しいアプローチにより、アンチエイジング治療の効果を、より簡便かつ経済的に評価できる可能性を示した。
    さらに、この手法は、新規製品の美容上の有効性を可視化すると同時に、臨床医は患者に対する法的・倫理的責務を果たすことが可能となる。
    また、顔のリジュビネーション評価を主観的判断のみに委ねると、治癒プロセスの長期化、誤診、薬剤・化学物質の過剰使用を招く恐れがある。
    したがって、本研究で設定した作業仮説は以下の二点に集約される。
    1「高分子量ヒアルロン酸ナトリウム、グリシン、L-プロリン、L-ロイシン、L-リシンHCL、L-バリン、L-アラニンを含む混合製剤の有効性は、顔のリジュビネーションにおいて客観的に評価する必要がある」
    2「当該製剤は顔のリジュビネーション治療に適用可能である」
    (この部分はかなり意訳しています)

 

メソッド

  • 本研究は単一施設における非劣性試験で、アクティブコンパレータを用いた後ろ向き研究として行われた。
    女性を対象とし、高分子ヒアルロン酸ナトリウムとアミノ酸の混合液の製剤が(原文にはコラーゲンもミックスされていると書かれていますが?)中顔面およびフェイスラインのリジュビネーション効果と安全性を評価することを目的とした。
    本研究の選定条件は以下の通りである。
     

    年齢が30~60歳であること
    軽度~中等度の皮膚の光老化が認められること
     Fitzpatrick's phototypeがIIIまたはIVであること
    2回の治療セッションが施行されていること
    第1セッション前、第2セッション前、治療から3か月後の画像が存在すること


研究デザイン
  • 本研究では、32名の被験者を対象に、中顔面・フェイスラインの治療前(初回注入前)、2週間後(2回目注入前)、および12週後の計3つの時点で、observ®520システムによる撮影・解析、ならびに標準化された条件下で正面・側面写真をデジタルカメラで撮影し、合計864枚の画像を収集・アーカイブした。撮影は同一撮影者が一定の手順を踏み、被験者はフランクフルト平面に準じて立位姿勢を保ち、露出条件固定のカメラと三脚を用いて一貫性を確保した。

製品の特性および利点

  • 当該製剤は、分子量1200 kDaの非架橋ヒアルロン酸と、コラーゲン合成に不可欠なアミノ酸(グリシン、プロリン、リシン、ロイシン)、およびエラスチン産生に関与するアラニンとバリンを化学量論的比率で配合した製剤である。
    顔、首、デコルテのシワ改善、弾性力の復元、シワやたるみの軽減、皮膚のくすみや保水力の回復を目的として用いられる。
    さらに、分子量1200 kDa超のヒアルロン酸は、フリーラジカルに対するスカベンジャーとして機能し、真皮内の線維芽細胞をはじめとする構造物を保護する。それにより、抗酸化作用とボリュームアップ効果を発揮する。
    また、当該製剤に含まれるアミノ酸とヒアルロン酸の組み合わせは、ECMプロテインの生合成を調節し、elastogenesisを促すことが確認されている。

形態計測パラメーター

  • 本研究では、水分量(後述*、頬骨zygoma、頬骨下部malar-原文に明確な定義がありません、下顎角gonionの皮膚の厚さ)、下顎角度(gonion angles)、耳珠間幅(bitragion breadth)、下顎角間幅(bigonion breadth)、およびマリオネットラインのグレード(後述**)を測定した。また、これらのパラメーターと、被験者の喫煙習慣、BMI、日常的な運動頻度、1日の水分摂取量との関連性を、治療セッション間で検討した。人口統計学的データはクリニックの登録フォームより後ろ向きに取得した。

  *水分量評価(Hydration):

  • 本研究では、水分レベルの間接的な指標として、皮膚の厚みや弾力性を計測した。具体的には、Lafayette製スキンフォールドキャリパーを用いて左右のzygoma、malar、およびgonionの3つの領域で皮膚の厚さ測定することにより、皮膚の水分レベルを定量的かつ客観的に表した。
    
 
 
     
 
 
マリオネットライングレードスケール(Marionette lines grade scale)
  • マリオネットラインは、口角と下顎縁との中間地点で測定し、最も深いシワを5点とする5段階評価を用いた。評価スコアの低下はシワが改善傾向にあることを意味する。
 

コンピュータ解析(専門的な知識を要します。私が説明できる範囲―はっきり申し上げて低レベルですーの要約ですので詳細は原文をご覧ください)

  • (薬剤の効果を定量的に評価するための、コンピュータによる解析手法について説明されています)
    具体的には、MATLABを用いて形態学的特徴の変化を解析し、薬剤投与前後で、どの特徴が最も識別力が高いか(大きく変化した、効果が高い、ということ)を評価するために、主に2つの手法を用いた。
  • 1.ROC曲線を用いたrankfeatures関数による特徴量のランキングで、ROC曲線とランダム分類器(random classifier)の斜線との間の面積に基づいて各特徴量の識別能力を評価した。
  • 2.カイ二乗検定に基づく特徴選択で、fscchi2関数を使用して各特徴量と2値ラベル(投与前後)との関連度を測定した。なお、カイ二乗検定のために連続データは4つの等幅カテゴリーに離散化されている。
  • これらの解析により、薬剤が最も効果を示す顔面部位を客観的に特定することを可能とした。
 
統計解析
  • 本研究ではSPSS 19ソフトウェアを用いて解析を行った。データの分布特性は、歪度および尖度値に基づいて評価し、これらが+1から−1の範囲内であれば正規分布と判定した。本研究の全データは正規分布に従っていたため、パラメトリック検定を用いて有意性を検討した。セッション間における形態計測パラメーターの差異は、Paired sample t-testを用いて評価した。
 
 
結果
  研究対象者
  • 本研究の対象は、平均年齢47.66 ± 10.24歳の女性32名であり、これらの被験者の写真データを用いてアーカイブ解析を行った。対象女性の平均身長は163.28 ± 6.25 cm、平均体重は63.09 ± 8.11 kgであった。
 
形態計測解析
  • 水分量評価では、両側においてセッション間で有意な増加が確認された。一方、gonion angle、bitragion breadth、bigonion breadthおよびマリオネットライングレードは、セッション間で有意な減少を示した。
    初回セッション前後の水分量評価ついては、両側gonionおよび左側zygomaを除き、有意差が見られた。また、全パラメータ中で最も顕著な変化は初回セッション前と12週後の比較であった。 (Tables 1 and 2)
  • 対象女性の43.8%が喫煙者、68.7%が運動習慣を有し、1日平均水分摂取量は2.11 ± 0.68リットル、平均BMIは23.74 ± 3.46 kg/m²であった。
    初回セッション前の左側malarの水分量パラメータと12週後のbitragion breadthおよび喫煙状況に正の相関が見られた。
    さらに、BMIはbigonion breadth、マリオネットライングレード、12週後および第2セッション前の右側malar水分量と相関していた。また、12週後においてはgonion anglesとマリオネットライングレードとの間に強い正の相関が確認された。
    飲水量と形態計測パラメータを比較すると、初回セッション前のマリオネットライングレードにのみ有意な関連が認められた。 (Table 3)
 
コンピュータ解析結果
  • 治療後の形態学的特性に生じた有意な変化を明らかにするため、2種の解析手法(前述)が用いられた。解析対象は合計11項目の特徴量であり、各解析では特徴量を重要度順に並べる際、その評価基準が適切であるかを検証した。その結果はTable 5にまとめられている。
     
  • 以下、水分量等の評価が書かれていますが、既述されており、原文の記載が重複しています。
 
 
考察
  • 皮膚の老化は、加齢に伴う内的要因と紫外線などの外的要因により進行する。この過程で、老化細胞が皮膚の様々な層に蓄積することにより、皮膚の生理機能が次第に低下する。

    ところで創傷治癒の後期ステージにおいては、線維芽細胞が産生するECMプロテインが、組織の再構築において中心的な役割を果たすが、この際、ヒアルロン酸(HA)は結合組織における細胞接着、増殖、遊走、ECMプロテインの合成を促進する特性を持っている。
    これらの作用によりHAは、皮膚の修復とリジュビネーションを促進するアンチエイジング成分として利用されている。
     
  • さらに、既存の文献では、HAにグリシン、L-プロリン、L-ロイシン、L-リシンHCL、L-バリン、L-アラニンといったアミノ酸を加えると、その効果が増強されると報告されている。

    本研究では、高分子HAとアミノ酸を組み合わせた製剤のアンチエイジング効果を客観的に評価した。なお、HAとアミノ酸の併用による改善は皮膚の形態にも反映されるため、客観的な評価には形態計測および解析が不可欠である。
 
  • 本研究では、zygoma, malar, gonion各領域の水分レベルを評価した。
    一回目のセッション終了時点で、最も水分レベルが高かったのはmalar(右側12.20%、左側13.16%)であった。また、zygomaでは右側7.5%、左側2.38%、gonionでは右側9.30%、左側7.69%の改善が見られた。

    二回目のセッション終了後、水分レベルは各部位さらに向上し、zygomaで右側27.91%、左側23.81%、malarで右側21.74%、左側30.23%、gonionで右側8.51%、左側16.67%の改善が確認された。

    治療12週間後には、zygoma(右側37.5%、左側26.13%)、malar(右側36.59%、左側47.37%)、gonion(右側18.60%、左側25.64%)という結果で、より一層の向上が認められた。

 
  • 本研究では、gonion anglesの減少を指標としてリフティング効果も評価した。下顎角の最大の減少は一回目のセッション後に見られ、その後も減少が確認されました。

    具体的には、一回目のセッション後に右側で2.57°、左側で2.59°の減少、二回目のセッション後には右側2.08°、左側1.38°の減少、12週間後には右側4.65°、左側3.97°の減少が記録された(数字は各測定時間の変化量だと思います)

     

 
  • 本研究では、bitragion breadthとbigonion breadthの減少がタイトニングを示す指標として用いられた。bitragion breadthは治療前に平均14.28 ± 0.78 cmから12週間後には13.45 ± 0.81 cmに、bigonion breadthは平均10.68 ± 0.98 cmから9.77 ± 0.91 cmに減少した。

    さらに、製剤に含まれるアミノ酸は、マリオネットラインにも改善効果を示し、グレードスケールが治療前平均3.75 ± 0.80、12週間後には2.81 ± 0.78に改善した。

    また、Sparavignaらの研究では、HAとアミノ酸の混合物の製剤がコラーゲンおよびエラスチンの活性化を促し、弾性線維症に有効であることが示されている。

 
  • ECMは、加齢によりその構造が劣化し、皮膚は弾力性とボリュームを失い、老化の兆候が現れる。ECMに対する治療は老化を遅らせ、皮膚の再構築において重要であると考える。

    本研究では、ECM修復によるアンチエイジング効果を形態学的パラメータを用いて評価した。その結果、特に治療12週間後に、水分レベル、リフティング効果、抗シワ効果(anti-wrinkle effects)が顕著に改善されたことを明らかにした(原著論文はところどころ厳格性が欠けていたり、明らかな誤記があります・・・)

 
  • 皮膚は加齢とともに、シワ、弾力性やボリュームの喪失、たるみ、肌理の乱れ、血色の悪さといった変化をきたす。ECMのコラーゲン量を減少させる内因性および外因性要因は、皮膚の老化を加速させる。
    本研究では、水分摂取、喫煙、運動といった外因性要因を検証した。

    特にタバコの煙は、外因性要因の主たるものであり、シワの形成に大きな影響を与えることが確認された。

 
  • 文献によると、喫煙者は非喫煙者よりもコラーゲン分解が進みやすいことがが確認されている。また、日光、喫煙、水分摂取、飲酒、栄養不足といった要因が老化を促進し、弾力性低下やシワ形成、皮膚の菲薄化や乾燥を引き起こす。

    本研究では、皮膚の形態計測データと運動、喫煙、水分摂取習慣との関連も検証したが、一部のパラメータでは有意な相関が認められなかった。これは、被験者数の少なさ等の要因によるものと考えられる。

 
結論
  • 本研究により、当該治療は、注射による機械的刺激と、HAおよびアミノ酸の作用により、肌質の改善が確認され、安全で効果的なアンチエイジング治療として期待できることが示された。

    本研究は後ろ向き研究として設計されているため、今後は、アミノ酸のみ、HAのみ、無処置群を含む前向き研究や、より多くの被験者を対象とした検証、また、長期的な効果な検討も含めた研究が必要である。

 
以上となります。
 
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