いつも当院のブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。
美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。
当院は、院長が診察から治療まで一貫して施行すること(ワンドクター制)を特徴としています。
【 以前の当院アドレス info@perla-j.jp は、現在ご利用になれません。
https://perla-clinic-j.com/inquiryよりご連絡ください。
お手数をおかけして申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします】
以下本文となります。
―――――――――――――――――
バイオマテリアルに関する論文の紹介になります。
Tailoring biomaterials for skin anti-aging
2024年の論文です。
前回の続きです。
再生材料に求められる一般的な要件
- 生体適合性:良好な生体適合性は、アンチエイジング用バイオマテリアルの基本的な要件であり、免疫反応や炎症、毒性を引き起こさず、長期間安定した機能を維持する必要がある。
HAは体内のECMに組成が類似しており、高い生体適合性と保湿能力を備えているため、美容医療で広く使用されている。
コラーゲンも重要なマテリアルであり、リコンビナントDNA技術で生成されることで免疫原性のリスクを低減できる。例えば、VYMIXのようなリコンビナントコラーゲン製品は、ヒトコラーゲンに類似した構造を持ち、美容用途に適している。また、ナノテクノロジーや化学修飾による改善で、バイオマテリアルの安定性や生体活性(生物学的活性)が向上している。
- 免疫原性:バイオマテリアルの免疫原性は、適度な炎症反応を利用してコラーゲン生成を促進し、皮膚の弾力性やしわを改善する。一方、過剰な免疫反応が生じると副作用が生じる。
PLLAは、異物性炎症反応を通じて線維芽細胞のコラーゲン産生を刺激し、コラーゲン沈着のための安定したスキャホールド(足場)となり、短期・長期のアンチエイジング効果をもたらすが、過剰な炎症は紅斑や腫脹、壊死等の副作用を招く可能性がある。そのため、投与量や注入技術の精密な制御と、患者のモニタリングおよびアフターケアが重要となる。
- 生分解性:生分解性は皮膚のアンチエイジング用バイオマテリアルの重要な特性であり、徐々に体内で分解・吸収されることで拒絶反応や損傷を回避できる。理想的には、分解生成物が損傷した組織を支持・刺激し、組織再生と修復を促進し、最終的には体内の自組織に置換されるのが望ましい。
PLA、PCL、ゼラチン等のバイオマテリアルは、それぞれ異なる分解速度と代謝経路を持ち、治療ニーズに応じた適切な選択が可能である。分解速度は、表面加工(コーティングや親水性の調整)、他の材料との複合化、またはスキャフォールドの細孔構造や微細形態(ナノファイバースキャフォールドの調整)によって制御できる。Shamsahらの研究では、50:50 PCL/PLLA電界紡糸(エレクトロスピニング)シルクスキャフォールドが、高い加水分解活性と剛性を報告している。
-
表面の物理的および化学的特性:バイオマテリアルの表面特性(トポグラフィー、電荷、官能基など)は、細胞やコラーゲンの挙動を調節し、アンチエイジング効果を高める上で重要な役割を果たす。例えば、適切な表面トポグラフィー(7.7~19.8 nm)は線維芽細胞の増殖やコラーゲン分泌を促進し、皮膚の弾力性を維持する。また、負に帯電した表面は保湿と線維芽細胞接着を促進し、コラーゲンの成長を促進する。一方、正に帯電した表面は炎症反応を抑制し、細胞増殖活性を低下させる特性を持つ。官能基(カルボキシル基やヒドロキシル基)を含む表面も、細胞接着や修復を向上させる可能性がある。これらのことから、アンチエイジング用バイオマテリアルは、老化プロセスを遅らせるだけでなく、皮膚を保湿し、引き締め、栄養供給し、修復する能力を備えていることを志向すべきである。
- プロテイン:
コラーゲンやシルクフィブロイン(SF)は、皮膚再生やアンチエイジングに重要な天然プロテインバイオマテリアルである。特に、海洋由来コラーゲンは高い生体利用率と抗酸化特性を持ち、しわや弾力性の改善に効果がある。リコンビナントコラーゲンやSFなどの進化型バイオマテリアルは、抗老化分野で注目されているが、高コストや技術的課題の克服が必要である。
ムラサキガイ由来接着プロテイン(MAP)は、低免疫原性と優れた生体適合性、抗炎症および抗酸化特性を備え、皮膚老化予防に有益な効果を示す。ムラサキガイオリゴペプチドは細胞老化を抑制し、酸化ストレスによる損傷を軽減することが研究で確認されている。
リコンビナントDNA技術により、高機能なMAPナノファイバースキャフォールドが開発され、ティッシュエンジニアリングや皮膚再生分野での応用が進展している。MAPは細胞の増殖やECM成分の分泌を促進し、皮膚アンチエイジングにおける多様な可能性を提供している。 - Polysaccharides(多糖類):
ヒアルロン酸(HA)は、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸からなる長鎖の多糖類であり、優れた保湿性、生分解性と生体適合性を持ち、皮膚の若返りやアンチエイジングに広く使用されている。
近年のHA製品(例:CLHAパッチ)は、線維芽細胞の刺激、コラーゲン生成の促進によって皮膚の外観を改善することが確認されている。さらに、HAをエピガロカテキンガレート(EGCG)などの抗酸化物質と複合することで、紫外線保護や抗酸化効果を強化されている。
一方で、現在のHAベースのフィラーは体内持続期間が6か月程度と短いため、繰り返しの治療が必要となり、また、化学架橋剤を使用しているため、高コストや副作用のリスクが課題である。そのため、化学架橋を必要としない(長期継続性の)新しい注入材の開発が望まれている。
キトサンは、優れた生分解性、生体適合性、抗菌性を持つ天然由来の共重合体であり、FDAに組織の機能回復を目的とした用途としてのバイオマテリアルとして承認されている。
キトサンはMMP活性を阻害し、エラスチンやコラーゲンを保護することで皮膚のたるみやしわを軽減し、さらに抗酸化および酵素阻害特性(anti-hyaluronidase and antityrosinase activities)を通じて皮膚の健康を増進する。
また、再アセチル化キトサンフィルムは高い水溶性と安定性を持ち、抗酸化剤を封入した場合には抗酸化物質の放出速度を遅らせることで、長期的なアンチエイジング効果を期待できる。
キトサンを他の材料と複合することでその応用範囲は広がり、例えばクエン酸緩衝液で中和されたキトサン膜は角質除去と保湿効果を向上させる。また、キトサンナノファイバーとナノリグニンを複合化したマテリアルは、ビタミンや抗炎症剤などの成分送達キャリアとしても機能することが示唆されている。
アルギン酸は、優れた吸湿性、生体適合性、生分解性、抗酸化特性を持つ再生医療用途において最も有望なバイオマテリアルの一つであり、FDAに承認も受けている。
抗酸化遺伝子の発現レベルを高め、細胞の酸化ストレスと炎症反応を軽減し、細胞再生とコラーゲン合成を促進して皮膚の老化を遅らせる作用がある。化学的および物理的修飾(架橋形成やナノ粒子カプセル化)により、その安定性や浸透性が改善され、アンチエイジング効果がさらに強化されている。また、ビタミンCやE等の抗酸化物質との複合により、フリーラジカルや環境要因によるダメージを軽減する効果が向上する。具体例としては、ポリフェノール含有オリーブ抽出物を添加したアルギン酸フィルムは、光誘発性酸化ストレスを軽減し、線維芽細胞の形態回復やECMタンパク質の発現を促進することで、光老化プロセスを遅らせることが実証されている。
・リボ核酸
ポリデオキシリボヌクレオチド(Polydeoxyribonucleotide, PDRN)はDNA分解から得られる天然のバイオマテリアルであり、生体適合性、安全性の高さからイタリア保健省にて承認されている。細胞成長促進、コラーゲンおよびVEGF生成の刺激、抗炎症、抗色素沈着、DNA修復等の効果を持つ。
具体的には、線維芽細胞におけるI型およびIII型コラーゲンの生成を促進し、UVB損傷モデルにおいては、DNA修復を促進し、皮膚老化の予防や損傷軽減に寄与することが示唆された。さらに、PDRNはチロシナーゼ活性を阻害し、色素沈着を軽減し、皮膚組織の再生を促進する作用を示している。これらの結果は、PDRNの効能を明確にし、今後の臨床研究や新規美容医療製品の開発につながる知見を提供している。
合成分子材料 -
PLA
弾力性や剛性、生体適合性、熱可塑性、および良好な成形性の優れた特性を持つバイオマテリアルで、PLLA、PDLLA、または PDLAに分類できる。特にPLLAはアンチエイジング治療において広く使用されている。
PLLAが注入されると炎症反応を誘発し、粒子のカプセル化、線維芽細胞の活性化、線維形成、1型コラーゲンの沈着、その後、PLLAの分解と炎症の鎮静・リモデリングと経時的に変化し、その臨床効果は6か月以上持続することが確認されている。
例えば、Sculptra™などのPLLA製品は顔の若返り目的に使用され、保湿や弾力性の改善、経表皮水分喪失の減少、紅斑、色素沈着、毛穴のサイズの改善など、肌質の総合的な向上に寄与する。なお、Ray らの研究において、PLAナノ粒子(PLA NPs )のコラーゲン合成促進作用の有無を検証した際に、線維芽細胞単体との培養ではなく、線維芽細胞-マクロファージとの共培養がコラーゲン生成に寄与することを見出した。このことは、この共培養はさまざまな細胞間および生体材料-細胞相互作用を研究するための良好なモデルであることを示唆している。
-
PCL
生理的な温度でゴム状の粘稠性を示す優れた弾性と強度、生体適合性、長期作用持続性(すべてのポリエステルの中で持続時間が最も長いと考えられている)を持つ半結晶性ポリマーであり、顔面用フィラー等の医療用途で広く使用されている。
PCLは、ブロック共重合体を構成可能で、その調整により、親水性と疎水性のバランスや、機械的・物理的特性を変化させることができる。つまり、PCLの特性を、目的とする特性に合わせて精密に制御することが可能である。
PCLフィラーは、炎症を誘発し、リモデリング期ではIII型およびI型コラーゲンを順次生成・沈着させる。製品としてEllanse™やFillerX™は、効果が長期間継続(~4年)することが報告されているが、軽度の腫脹や紅斑といった副作用も報告されている。これらの課題を克服するため、Hongらは粒子フリーのPCL:DLMR01を開発し、コラーゲン新生を促進し、他のフィラーで問題視されていた不均一な組織再生や修復を克服した。また、Gautamらは、PCLをゼラチンやI型コラーゲンと複合したスキャフォールドの開発に成功し、線維芽細胞の活性を高め、コラーゲン生成を促進し、皮膚のハリと弾力性を回復することを示唆した。
-
バイオセラミックスは、優れた生体適合性、高い圧縮性、低引張特性を持ち、組織再生や修復を促進する特性がある。主にβ-リン酸三カルシウムやハイドロキシアパタイト(HAp)が使用され、多孔性スキャフォールドとして設計されている。これらのスキャフォールドは、組織への機械的支持を提供し、外部からの圧力に耐え、組織の形状を維持する一方で、周囲の組織と統合し、細胞移動、栄養供給、血液輸送の再構築を促進する。
CaHAp(カルシウムハイドロキシアパタイト) は、顔のしわの改善や輪郭形成、弾力性回復を目的としたフィラーとして広く使用されている。
製品としてはRadiesseがあり、このマテリアルは数週間以内に成分中のゲルキャリアは分解されるものの、CaHAp自体は注入部位に残る。3か月後、CaHApマイクロスフェアは線維芽細胞、フィブロネクチン、マクロファージによってカプセル化され、コラーゲン生成のためのスキャフォールドとして機能する。さらに、9か月後にはマイクロスフェアはマクロファージに吸収されることが確認されており、臨床効果は12~18か月持続するとされている。また、CaHApは鼻形成術、顎形成術、側頭部の形成術等にも使用され、周囲の組織と一体化して美容効果を高め、従来のフィラーで懸念される吸収、変形、変位といった問題もクリアしている。
―――――――――――――――――
◆ ペルラクリニック神宮前Webサイト(原宿・表参道)
◆ ウルセラ説明
◆ ミラドライ説明
◆ 治療費一覧
◆ お問い合わせ
◆ アクセス ( JR原宿駅 徒歩1分 )
◆ 診療時間 10時~18時 /月・木休診(振替診療の場合もあります)
◆ 美容皮膚科ペルラクリニック神宮前では、初診から治療・治療後フォローまで、院長が一貫して、お一人お一人に最適化した治療を、良心的な価格でご提案、実施いたします。
◆ 東京都内の他、埼玉、千葉、神奈川等近県、日本全国からご相談をいただいてお*7す。