間が空いてしまいましたが、続きです。
新たに搭載された、1927nmの波長を有するレーザーに関してです。この波長の水の吸収係数は1550nmに比し高いため(H2Oの吸収スペクトルより)、生体(皮膚)においては、エネルギーを高くしても、波長1550nmのレーザーのようにエネルギーに依存した深達度の変化は顕著には見られません。 5~20mJ の可変域で、深達度は、200~250μm程度です。
また、施術後合併症として必ず留意しなくてはならないPIH(炎症後色素沈着)は、フラクショナルレーザーの場合、そのカバー率(施術対象となる皮膚面積のうち、レーザーによる熱作用で組織が変性、蒸散する面積の比率)と強い相関があると一般的に言われています。炭酸ガスフラクショナルレーザーの場合、経験的に、カバー率5~10%であれば、PIH発生率をかなり抑えることができますが、逆に言うと、PIHを避けるためには、カバー率はあまり上げられません。それでも治療効率(1回の治療効果)は、Non-ablative fractional laser によるカバー率10~20%の治療よりも高いことが多いのですが(この辺り、治療効果-人間の目で捉えられるマクロの変化-とカバー率の関係も考察しなければならないのですが)、ダウンタイムの問題、また、長期に渡ってドット状の跡が残る場合がある事などから、治療を受けるハードルを上げてしまったことは否めません。
1927nm のTm:glass fiber laserの場合、比較的安全に20%以上のカバー率で治療することが可能です。しかも、1550nm のEr:glass fiber laser で同日に加療しても同様です。もちろん、我々の目的は、カバー率を安全に上げることではなく、臨床的な効果を安全に上げることですが、この機器の場合、ほぼ同義と言っても良いようです。もちろん、症状によって適切な治療器は異なってきますが、当該機器は、広範な適応と、優れた臨床的効果が望めそうです。
よく言われているように、皮膚の比較的深い部分に原因があるターゲットには1550nmを、皮膚浅層のターゲット(色調の不整も含めて)の改善を図るには、1927nmを用いて、加療していくことになります。現実には、downtime performanceやリスク考え合わせ、各患者様の症状に応じてコンビネーション治療を行うことになります。