昨日、老化のメカニズム(正確には免疫老化のメカニズム)が解明されたとして、各種メディアが報じていました。
これまで、免疫老化のメカニズムは、免疫を担当する細胞(特に T細胞というリンパ球)の機能劣化が主原因ではないかと考えられてきました。しかし、今回明らかにされた研究成果によると、単なる機能劣化ではなく、PD-1という物質(細胞膜にあるタンパク質)が発現したT細胞が、そうでないT細胞の数を相対的に上回ることが免疫老化の本質である、ということらしいのです。
具体的に、PD-1陽性のT細胞がどのようなものかと言いますと、まず第一に、外敵を迎撃するための機能(免疫応答能)を完全に失っていること、そしてオステオポンチン(OPN , early T-lymphocytie activation-1:Eta-1)という炎症性のサイトカインを大量に産生することを特徴としています。こんな細胞が多数派を占めれば、病気に罹りやすくなり、かつ悪化するスピードも速まることは想像に難くないでしょう。また、癌細胞やC型肝炎、HIVなどは、このシステムを利用して免疫反応から逃れているとも言われています。
当然、研究者達は、このPD-1を抑制する薬 ― 抗PD-1抗体 ―の開発に精励しており、アメリカでは癌患者に対して臨床試験も行われています。
このような薬が実用レベルになれば、免疫系のリジュビネーション(若返り)も夢ではなくなることでしょう。
(ちなみに、PD-1 とは、programmed cell death 1 の略です)