コラーゲン 熱変性 | 美容皮膚科医の日常ーペルラクリニック神宮前院長 本田淳

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続きです。


つい先日、サーマクールのメーカーが主催するミーティングに参加した時のことですが、高出力で照射した方が有効であるという意見と、低出力であっても時間をかけて照射すれば(あるいは、した方が)効果が出るという二つの意見が出ていました。

もっとも、前者の先生も、部分的な照射に限り高出力にしているとの事で、双方とも正しい見解だと言えるのでしょう。ただ、患者様の立場としては、高出力照射は、激痛を伴い、熱傷のリスクも上がるわけですから、後者の方法で効果があるのなら、当然そちらを選択するでしょうね。


昨日のブログで、コラーゲンの熱変性に伴う収縮により即時的な効果が得られると書きましたが、少し詳しく書いてみます。

コラーゲンが熱により変性すると、高次構造(3重のラセン構造:コラーゲンへリックス)を維持できなくなり、ラセンが解け(アンフォールディング)、ゼラチンになります。これを冷やすと、ある程度ラセン構造が復活(フォールディング)するのですが、完全には元には戻りません。生体外のものは、40℃程度でゼラチン化すると、ものの本には書いてありますが、人間の生体内では、もう少し高い温度までは構造を保ったまま(ゼラチン化せず)収縮するものと考えられます。 



真皮、皮下組織に熱を加えリフトアップするマシンの機序を説明するにあたり、よく、肉の調理が喩えとしてあげられます。「肉を焼くと、縮まるでしょ?」などと、端的に説明されます。おそらくこの喩えは、急速に高温加熱し、固く焼きあがることをイメージしている思われます。確かに、サーマクールの施術で、かなりの高出力で照射する場合(つまり、高温、短時間で熱変性を起こす場合)は、現実的に、そういう現象が起こっていると言えるでしょう。(ちなみに、肉調理においては、まず収縮し固くなり、さらに熱するとゼラチン化して柔らかくなるという二段階の現象が起こります。)


最近は(昔から?)、低温加熱とか低速加熱という考え方が、調理の世界にはあるようです。私は、そちらのプロでは当然ありませんので、あくまで伝聞にすぎませんが、肉を柔らかく、旨みを残して焼く(蒸す)ためには、45℃~55℃の間の加熱を、いかにゆっくり行うかがポイントとされているそうです。これは、筋膜の変化が45℃くらいから現れ始めることに関係があるようです。


柔らかみ、旨みといったことは、あまり、美容医療の世界でのお顔のリフトアップとは関係ありませんが、低速加熱(ゆっくり加熱する)がまさしくポイントで、上記のような温度でも、肉塊の奥深くまでタンパク質の変性が起こることが明らかとなっています。


このあたりの話が、サーマクールやトリニティの施術において、時間をかけて照射すれば、あまり出力を上げなくても効果を出せるということとアナロジーがあるのでは、と考えています。