前回の続きです。
そもそもレーザー光とはどのような原理で発振されるのかということを、簡単にご説明致します。
高校の物理の授業を思い出して頂きたいのですが、レーザー発振器は、二枚の平行な鏡を両端に配した光共振器に、レーザー媒質(この場合 ※Nd:YAG です)満たし、さらにこのレーザー媒質にエネルギーを与え電子をポンピング(基底状態から高いエネルギーレベルに引き上げる)するためのフラッシュランプを伴う構造になっています。
光(光子)は、ポンピングによる励起状態(エネルギーが高い)にある電子が、その下のエネルギーレベルに落ちる時に発生します。このように外部の光子によらずに発する場合を自然放出といいます。
この自然放出の他に、誘導放出という現象があります。これは、やはりポンピングされ励起状態にある電子が存在する場に、外部から光子が入射した時、この光子とエネルギー、位相、進行方向の同じ光を放出する現象です。つまり入射時に一つだった光子が出射時には二つになっているわけです。 この現象を、雪崩のごとくレーザー媒質内で引き起こし、かつ鏡で反射を繰り返すことによって、増幅させたものがレーザー光です。
まさに、レーザー(LASER)の語源、Light Amplification by Stimulated Emission(誘導放出) of Radiation の通リです。
ただ、誘導放出を引き起こすためには、レーザー媒質を反転分布状態にしておくことが前提になります。反転分布状態とは何やら難しい言葉ですが、要は励起状態(通常より高いエネルギー状態)の電子の数を、そうでない電子の数より相対的に多くしておくということです。そうしておかないと、せっかく光子が発生しても、吸収されて電子のポンピングに使われてしまうことになり、誘導放出が起こらないのです。
この反転分布状態を作り出すのが、上述のフラッシュランプの役割です。
そして、反転分布状態になりやすい物質をレーザー媒質に使うのです。
長くなりましたので、今回はここまでにさせて下さい。
※ Nd:YAG Y(イットリウム)とAl(アルミニウム)の複合酸化物から成るGarnet(ガーネット)構造の結晶体で、Y(イットリウム)の1%をNd(ネオジウム)に置き換えたものです。Nd:YAG の波長が1064nmであるのは、ドーピングイオンNd3+によるものです。
ちなみに泌尿器科で使われているホルミウム(Ho):YAGレーザーは、波長2060nm。また、エルビウム(Er):YAGレーザーは、波長2940nmとなります。