続きです。
最初は、脂肪組織から分泌されるアディポサイトカインの中で、唯一善玉ではないかと言われているアディポネクチンからです。
このホルモン(サイトカイン)は、非常に大きいプロジェクトとして研究が進んでいます。そのため簡単にお話しするは難しいので、今回は触りだけにしておきます。
アディポネクチンは、AMPK(AMP kinase)という酵素を活性化することにより、肝臓では糖新生を抑制し、筋肉では糖の取り込みを促進し、また両者で脂肪の燃焼を促進します。
つまり、インスリン抵抗性や糖尿病を改善し、高脂血症を改善します。その他、血管拡張作用により血圧を下げ、動脈硬化の予防・改善に働き、心肥大を抑える作用もあります。
また、昨日もお話しましたが、この善玉のホルモンは脂肪細胞が適正サイズを越えると分泌量が減ります。特に内臓脂肪が増えると分泌量が減ることが分かっています。さらに、心臓病や糖尿病との重症度と逆相関(重症なほどアディポネクチン濃度が低い)しているので、これらの診断にも利用できます。
当然、これだけ有用な作用があるアディポネクチンを治療薬として「形」にできないかものかと、研究が進んでいます(マウスの実験では、残念ながら脂肪を劇的に減らすという効果はなかったようですが、疾患の予後に関してはいいデータが出ているようです)。
ちなみに、脳においては、アディポネクチンは正反対の作用を示すことも分かっており、脂肪を蓄え、食欲を増す方向に働きます。そのため、脳のアディポネクチンリセプターに特異的に作用する薬が創製できれば、新たな抗肥満薬となると期待されています。