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美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。
当院は、院長が診察から治療まで一貫して施行すること(ワンドクター制)を特徴としています。
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以下本文となります。
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2025年の論文
Assessment of the Possible Impacts of Collagen Biostimulators on Surgical Facelift
アブストラクトのみです。
緑字は私の低レベルなコメントですので、お読みにならなくても結構です。
イントロ
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コラーゲン・バイオスティミュレーターやスレッド、EBD等の低侵襲治療件数は、近年急速に増加している。
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これらは、コラーゲン・エラスチン・ECM リモデリングを惹起する一方で、中長期的には線維化や瘢痕化を伴う可能性があるため、フェイスリフト手術を施行する際に、剥離難度・合併症リスクの上昇に関与する懸念が以前から指摘されていた。
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この問題については、現在のところ術者の臨床経験ベースの議論が主体であり、体系的なデータやガイドラインは存在しない。
目的
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コラーゲン・バイオスティミュレーター治療歴のある患者に対するフェイスリフト手術について
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手術難度
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手術時間
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合併症発生率
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術式や術中手技の変更
の4点について、フェイスリフトを行う術者の認識を評価すること。
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メソッド
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デザイン:横断的アンケート調査(survey, questionnaire-based study)。
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対象:顔面の外科治療に従事する外科医 63 名(形成外科医と耳鼻咽喉科医を含む)。
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質問票の内容:
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患者の既往歴
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術前の評価
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術中の問題点・困難性
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手術時間の延長の有無
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合併症
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術式の変更の有無
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統計解析:Abstract では具体的な統計手法(χ², ロジスティック回帰等)の記載なく、基本的には記述統計の提示にとどまる?
結果
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術者のプロファイル
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70%:フェイスリフトと低侵襲治療の両方を自ら行っている。
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28%:バイオスティミュレーター治療は他の医師に委ねている。
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フェイスリフト時期への影響
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59%:バイオスティミュレーター治療により、フェイスリフトの適応時期を延期できる可能性。
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「バイオスティミュレーターにより外見上の若返りが得られ、手術を先送りにできる」というポジティブな意味合い。
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術式・術中戦略への影響
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43.8%:バイオスティミュレーター治療歴に応じて手技を変更している(特に線維化がみられる症例)。
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手術時間・合併症への影響
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50.8%:手術時間が延長した。
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84.4%:合併症率が増加した。
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具体的には
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91.8%:組織剥離の困難さ
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73.3%:術後の皮膚表面の不整
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57.4%:炎症の遷延
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バイオスティミュレーター の種類別の影響
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97%:使用されている バイオスティミュレーターの種類が、手術難度に影響する因子となる。
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術中に識別しやすいもの:
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スレッド:76.6%
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CaHA:57.8%
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バイオスティミュレーター治療から手術までのインターバル
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理想的なインターバルに関しては、コンセンサスは得られなかった。
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ただし、「注入から 6 か月以内の症例は、手術の難度が上がる」考えられている。
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結論
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バイオスティミュレーター は、フェイスリフトを行う時期を遅らせることができる。一方で、同手術の難度を上げ、手術時間を延長し、合併症率を高めている可能性が高い、と術者は認識している。
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今後、バイオスティミュレーターやスレッド治療を施行する場合は、将来フェイスリフトを行う際に治療の困難性が高まる可能があることをあらかじめ患者に説明する必要がある。
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同時に、印象論ではなく、明確なクリニカルアウトカムに基づく前向き研究・ガイドライン策定が必要である。
限界
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本研究は、術者の印象(perception)を問う横断的サーベイであり、実測されたアウトカムを伴わない。
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したがって、エビデンスレベルは Level V(expert opinion/survey)。
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「バイオスティミュレーターが合併症 を増加させる」という因果推論は、当該デザインからは導けない。
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「合併症率が増えた」と答えた 84.4% は、ほとんどが retrospective な印象であり、対照群との比較(バイオスティミュレーター未治療の フェイスリフト症例との相対リスク)は提示されていない。
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Abstract では、collagen biostimulators, threads, energy-based technologies を同じコンテクストで扱いながら、実際の解析対象は主にバイオスティミュレーター?
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注入深度、注入量がアブストラクトでは不明。
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「合併症率の増加(84.4%)」と言っているが、どのような事象を “complication” と定義したのか不明瞭。
classic surgical complication(hematoma, skin necrosis, nerve injury, infection 等)とは性質が異なる、技術的困難性も含まれている可能性がある。
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「バイオスティミュレーター治療を行う 医師は将来のフェイスリフト手術の困難性を患者に説明すべき」との提案は、倫理的には合理性があるものの、エビデンスレベルとのバランスを考えると、やや強すぎる印象。少なくとも、「現時点では high-level evidence は欠如しているが、術者の間ではこのような懸念が広く共有されている」という枠組みに留める方が・・・
長所(確度の高いポイント)
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フェイスリフト術者が「biostimulators・threads 既往症例に対して、かなりの割合で術式変更・手術時間延長・技術的困難を感じている」という“広く共有された印象”を、数値で可視化した点は有用。(確度 0.95)
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特に「施注から 6 か月以内は難しいと感じる」「threads と CaHA は術中に識別しやすい」という所見は、臨床現場の感覚と合致しており、今後の前向き研究設計の仮説生成には役立つ。(確度 0.9)
限界・注意点(敵対的査読でもほぼ consensus になるであろう部分)
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デザインが perception survey にとどまり、hard endpoint(客観的合併症率・手術時間など)に基づいていないため、「biostimulator が facelift を危険にする」という断定的メッセージには使えない。(確度 1.0)
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biostimulator / threads / 注入平面 /用量 / 時間経過を層別化していないため、mechanism に迫る議論や、製剤別・プロトコル別の具体的ガイダンスは導けない。(確度 0.9)
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既存ナラティブ(“biostimulators make facelift harder”)を定量化したに過ぎず、そのナラティブ自体の妥当性を検証する研究ではない。(確度 0.85)
結論としての実務的な使い方
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この論文は「facelift surgeon の間で共有されている危惧の強さ」を把握するための レベル V エビデンス としては価値があるが、
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実際にあなたが、「どの製剤をどの層に入れるか」、「将来の SMAS リフト/deep-plane リフトをどこまで阻害するか」
を設計する際には、FBR(foreign body reaction)と線維化に関する組織学的データ・長期追跡研究・解剖学的研究(Cotofana らの加齢顔面解剖レビューなど)と統合して評価する必要があります。(Thieme)
以上となります。
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