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美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。
当院は、院長が診察から治療まで一貫して施行すること(ワンドクター制)を特徴としています。
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以下本文となります。
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2025年の論文 前回の続きとなります。
Targeting Dermal Fibroblast Senescence: From Cellular Plasticity to Anti-Aging Therapies
緑字は私の低レベルなコメントですので、お読みになる必要はございません。
全文各項の要約です。
- ECMと線維芽細胞の役割
ECM はまた、成長因子・サイトカイン・matricellular proteinのリザーバーとして機能し、局所濃度や提示様式を制御することにより、細胞応答の精密な調節に寄与する。
線維芽細胞は integrin, discoidin domain receptor (DDR), syndecan などの受容体を介して ECM と双方向にシグナルをやり取りし、MAPK, Rho GTPase 経路などを介して細胞骨格の再構成や運動性を制御する(線維芽細胞は integrin–FAK–MAPK 経路を介して ECM 物性を感知し、その硬度・配向・架橋密度に応じて遺伝子発現を動的に再構成します)
さらに tenascin や osteopontin といったmatricellular proteinは、構造支持体としてではなく、ECM–細胞間相互作用のモジュレーターとして機能する。
YAP/TAZ, MRTF-A 経路に言及がないのは意外です。ECMの非線形弾性特性(strain stiffening)や mechanosensitive feedbackに基づく細胞挙動調節は現代的な以下略
コラーゲン
ECMは、組織特異的な構成を持ち、その中核をなすのがコラーゲンである。皮膚乾燥重量の約70–80%を占め、真皮の引張強度(tensile strength)と構造的完全性(structural integrity)を担う。
コラーゲンは、線維芽細胞によってプロコラーゲン(procollagen)として合成され、プロリンおよびリジン残基の水酸化やグリコシル化(glycosylation)といった翻訳後修飾を経て、細胞外でペプチダーゼにより切断され、成熟コラーゲンへと変換される。この際、ビタミンC(アスコルビン酸)はprolyl hydroxylase・lysyl hydroxylaseの補因子として不可欠であり、その欠乏は構造異常を引き起こす(壊血病)。
コラーゲンは少なくとも 28 種類あり、それぞれが異なる遺伝子によってコードされている。真皮ではI型コラーゲンが主成分で、真皮網状層に豊富に存在し、伸展抵抗性を付与する。一方でIII型コラーゲンは真皮乳頭層に多く、柔軟なマトリックスを形成し、創傷治癒初期の細胞遊走を促進する(Ⅲ型は、I型コラーゲンよりも線維径が細く、架橋密度が低いため、形成されるECMは柔軟性(pliability)と可変性(compliance)に優れています。この力学的特性が、創傷治癒初期の線維芽細胞・角化細胞・免疫細胞の遊走性を高めます)。IV型コラーゲンは皮膚基底膜、血管基底膜の主要成分であり、VII型コラーゲンは表皮と真皮を結合するアンカリングフィブリルを形成して表皮–真皮接合の安定性に寄与する。
さらに、線維性コラーゲン(fibrillar collagens:I, II, III, V, XI)はECM構造的フレームワークを形成し、非線維性コラーゲン(non-fibrillar collagens:IV, VI, VII等)は基底膜、アンカリングフィブリル、細胞周囲マトリックスにおいて、特化した機能を有する。コラーゲン合成はTGF-β, CTGF, PDGFなどの成長因子、ならびにメカノトランスダクションや炎症性メディエーターによって厳密に制御されている。
コラーゲン合成と線維配向は単に化学的シグナルだけでなく、integrin–FAK–Rho/ROCK経路によるメカノトランスダクションを受けます。
IV型はネットワーク形成型、VI型はマイクロフィブリル型、VII型はアンカリングフィブリル型です。
エラスチン
エラスチンは、皮膚や血管などの結合組織に可逆的な伸展性(elastic recoil)を与える主要な構造タンパク質であり、その三次元ネットワーク構造が機械的レジリエンス(resilience)を担う。
真皮線維芽細胞および血管平滑筋細胞によって発現するが、発生期から成人初期にかけて合成が盛んで、加齢により著明に減少する。
前駆体であるトロポエラスチン(tropoelastin)は細胞外に分泌され、フィブリリン-1(fibrillin-1)やフィブリン-5(fibulin-5)等のマイクロフィブリル上に配置され、弾性線維(elastic fiber)を形成する。
この際、lysyl oxidase(LOX)によってリシン残基が脱アミノ化され、デスモシン/イソデスモシン架橋を介して成熟エラスチンが構築される。この架橋はエラスチン特有の耐久性と可逆的な伸展性をもたらします。
一方で、紫外線曝露や慢性的な炎症性サイトカイン刺激により、MMP-2, MMP-9, およびエラスターゼが誘導され、エラスチンの断裂、断片化が生じる(いわゆるsolar elastosis)。
さらに、AGEsによるリジン残基の架橋は、可塑性を喪失し硬化したエラスチンを形成し、加齢皮膚の硬化と弾性低下に関与する。
エラスチン分解について、他にCathepsin S/K/Lなどのリソソーム酵素、neutrophil extracellular traps (NETs)によるエラスチン断裂、オキシダント誘導型の分解があります。
AGEsによるエラスチン硬化は、もちろんリジン架橋だけではなく、メイラード反応によるタンパク質間架橋形成・ヒドロキシリジン糖鎖の変性も含まれます。加齢皮膚ではAGE-modified elastinがRAGE(Receptor for Advanced Glycation End products)を介して慢性炎症を促進し、炎症–分解–硬化の悪循環が形成されていることが報告されています。
プロテオグリカン
プロテオグリカン(proteoglycans)は、コアプロテインにグリコサミノグリカン(GAG)鎖が共有結合した高分子複合体であり、ECMの水分保持能・compressibility(圧縮率)を決定する主要成分である。GAG鎖(ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸等)は硫酸基・カルボキシル基による強い負電荷を持ち、水分子および陽イオンを引きつけてハイドロゲル構造を形成する。
プロテオグリカンは単なる物理的成分ではなく、成長因子リザーバーとしても機能し、ECM構築・細胞接着・シグナル伝達・恒常性に重要な役割を果たしている。代表的な分子の機能については以下の通り。デコリン(decorin):小型ロイシンリッチプロテオグリカン(SLRP)に分類され、コラーゲンフィブリルに結合して直径と配列の制御を行い、過剰沈着を抑制し、抗線維化作用を示す。さらに、TGF-βに直接結合しその活性化を阻害するため、線維化制御の重要な分子です。ビグリカン(biglycan):同じくSLRPに属し、コラーゲンとの結合に加え、Toll様受容体(TLR2/TLR4)を介するシグナル制御を担う。これにより、創傷治癒や線維化過程でのマクロファージ活性化・炎症反応に関与します。ベルシカン(versican):大型の凝集型プロテオグリカンで、ヒアルロン酸と結合してECMの水和性を高め、発生期や創傷治癒期における細胞遊走・増殖・組織再構築に寄与する。
後述されますが、真皮では主にデルマタン硫酸型GAG(decorin, biglycan結合)とヒアルロン酸(versican結合)が優勢で、それぞれ構造的・機能的に独立した水和ドメインを形成しています。
加齢真皮ではdecorin・biglycanのGAG鎖短縮と脱硫酸化が進行し、水分保持能と成長因子結合能が低下します。
Versicanには複数のアイソフォーム(V0–V4)が存在し、発生期・創傷治癒期・加齢皮膚で異なる発現を示し以下略
グリコサミノグリカン(GAG)
GAGsは、繰り返し二糖単位(repeating disaccharide units)からなる非分岐線状多糖類であり、高い負電荷密度(硫酸基・ウロン酸基)を有することにより、強力な水分子結合能を示す。
主要な真皮GAGには以下が挙げられる。
ヒアルロン酸:非硫酸化GAGで、分子量依存的に1000倍以上の水を保持し、ECMの水和性と粘弾性、圧縮率を規定する。CD44およびRHAMM(receptor for hyaluronan-mediated motility)との相互作用を介して細胞遊走・増殖・炎症応答に寄与する(他にLAYN(layilin)やTLR2/4を介したHA断片の炎症誘導も)。
コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate)およびデルマタン硫酸(dermatan sulfate):多くがプロテオグリカン(decorin, biglycanなど)のGAG鎖として存在し、コラーゲンや成長因子との相互作用を介してECMの構築とシグナル伝達の調整に寄与する。
GAGは、単なる保湿成分ではなく、プロテインおよび成長因子との相互作用によってその活性や分布を調節し、細胞接着・移動・増殖・分化といった細胞機能に関与する。
ヘパラン硫酸(heparan sulfate)およびケラタン硫酸(keratan sulfate)も真皮・血管周囲で検出され、FGFやVEGFの局在化、濃度勾配形成を担います。
ヒアルロン酸(HA)は確かに保湿・粘弾性の中心因子ですが、分子量依存的に生理作用が異なることが知られています。ざっくり、高分子HA(HMW-HA)は抗炎症・免疫抑制的作用を持ち、低分子HA(LMW-HA)はTLR2/4を介して炎症性シグナルを活性化します。これは、よく知られているように、感染や損傷時に「危険信号(DAMPs:Damage-Associated Molecular Patterns)」として機能する、という生物学的に理にかなった以下略
接着性糖タンパク質(Adhesive Glycoproteins)整理して要約しています
adhesive glycoproteinsは、ECMと細胞の接着・移動・組織秩序形成を仲介するマルチドメイン構造のマルチリガンド型糖タンパク質群である。これらは単なる接着分子ではなく、メカノケミカル信号の変換装置として、シグナル伝達と遺伝子発現を動的に統合する役割を果たす。主な分子は以下の通り “adhesive”は、物理的な接着というより、情報伝達のインターフェースと捉えますので以下略
Fibronectin(フィブロネクチン)
約440 kDaの二量体糖タンパク質で、コラーゲン・フィブリン・ヘパリン・ヘパラン硫酸・インテグリン等の分子と結合する。
RGD配列(Arg-Gly-Asp)を介してインテグリンα5β1などに結合し、細胞の接着・移動・創傷治癒・再構築を促進する。
可溶性の二量体血漿フィブロネクチンと、ECM内の不溶性多量体フィブロネクチンが存在し、alternative splicing(選択的スプライシング:EDA, EDBドメインの選択的発現)により組織特異的アイソフォームを形成する。
EDA(+)-FNは創傷治癒・線維化・がんの浸潤に関与し、EDA(-)-FNは恒常性維持に寄与する。
Laminin(ラミニン)
α, β, γ鎖からなるヘテロ三量体で構成される。主要アイソフォーム(laminin-111, -332等)は、基底膜の構造的・機能的主軸を形成。
インテグリン(α6β4, α3β1等)やジストログリカン(dystroglycan)に結合し、上皮細胞の極性形成、基底膜安定化、血管新生を調節。
発生・再生・腫瘍浸潤において、ラミニンの再構築と鎖構成の変化(γ2鎖upregulation 等)が形態形成を方向づける。
その他
Tenascins(テナシン):抗接着的(anti-adhesive)・脱接着的(de-adhesive)機能をもち、組織リモデリングや創傷治癒期に一過性に発現。
Thrombospondins(トロンボスポンジン):血小板および細胞外でのTGF-β活性化制御や血管新生抑制に関与。
Vitronectin(ビトロネクチン):血漿および細胞外でRGD配列を介して細胞接着・血栓形成・補体系の調整を担う。
箇条書き部分がやや〇〇に感じましたので、整理しました。無視して原文を参照されてください笑
機能 | 分子機構 | |
---|---|---|
構造的支持(structural support) | コラーゲン・ラミニン・エラスチンのネットワークにより張力・圧力分散 | 架橋(LOX)・フィブロネクチンすスキャフォールド形成 |
区画化(compartmentalization) | 上皮・間質間の物理的・生化学的バリア形成 | 基底膜の選択的透過性(ラミニン+IV型コラーゲン) |
シグナル伝達(signaling) | インテグリン–FAK–MAPK経路、DDR–Src経路など | 機械的刺激→転写制御(YAP/TAZ, β-catenin) |
細胞遊走(migration) | ECM分解+再構築+RGD依存接着 | MMP群による再構築、fibronectinリガンド転移 |
組織恒常性(homeostasis) | ECM turnoverと成長因子貯留の動的平衡 | MMP/TIMP比、ヘパラン硫酸によるFGF/VEGF制御 |
2. ECM合成・リモデリングにおける線維芽細胞の役割
私的に〇〇な部分が多かったので整理してます。原文をお読みください
線維芽細胞は、皮膚等の結合組織の構造的・機能的恒常性を担う中核となる細胞であり、ECMの合成と分解の動的平衡を制御する。これにより、組織は張力・圧縮・損傷などの環境変化に適応可能な可塑性を保持する。
ECM合成
線維芽細胞は、コラーゲン(I, III, V型等)、エラスチン、フィブロネクチン、プロテオグリカンを合成・分泌し、これらを架橋・配置し、三次元支持構造を形成する。
この過程は、TGF-β / SMAD, PDGF, FGF, mechanotransductionによって転写レベルで厳密に調節されている。
線維芽細胞は単なる「構造物供給細胞」ではなく、ECMそのものを情報・力学的ネットワークとして、設計・再構築するエンジニア的な役割を持つ細胞である。
ECM分解
ECMの分解は主にMMPs群によって担われる。これらはZn²⁺依存性エンドペプチダーゼであり、コラーゲン・エラスチン・ラミニン・プロテオグリカンなどを基質とする。
過剰な分解を防ぐため、MMP活性はTIMPによって抑制される。
このMMP/TIMP比がECMのターンオーバー速度を規定し、組織リモデリング、創傷治癒、線維化進行を決定づける。
少し古典的・・・ADAM / ADAMTSファミリー(特にADAMTS2, 5, 12)によるECM剪断、LOXやtransglutaminaseによる架橋密度制御、オートファジー経路(ATG5/7)依存性ECMターンオーバー 以下略
動的平衡と病態
加齢皮膚では、MMPの過剰発現(MMP-1, MMP-9等)とTIMPの低下が観察され、コラーゲン・エラスチン線維の劣化が進行する。
紫外線・酸化ストレス・炎症性サイトカイン(IL-1, TNF-α)もMMP誘導を介してphotoagingを促進する。
このMMP/TIMP不均衡は、創傷治癒遅延や瘢痕形成、線維化にも関与する。
一方、過度なTIMP活性はECM過剰蓄積をもたらし、線維化を誘導するため、両者の適正なバランスが重要である。
加齢皮膚ではECM合成能の低下+分解酵素の過剰という非対称型失調モデルの方が・・・
細胞間相互作用と力学応答
線維芽細胞は免疫細胞や血管内皮細胞と相互作用し、サイトカイン・成長因子(TGF-β, VEGF, PDGF)を介して組織のマイクロバイラメントを制御する。
また、細胞はメカノトランスダクションの経路を通じて力学刺激を感知し、YAP/TAZ経路などを介してECMの剛性・配向・架橋密度を再設定する。これにより、線維芽細胞はECM構築と分解の双方を制御する。
MMP/TIMPバランスは、加齢皮膚・線維症・創傷治癒異常に共通する分子制御点であり、MMP阻害薬・TIMP誘導薬・senomorphic介入などが治療標的として注目される。
さらに、線維芽細胞サブポピュレーションによって異なるECM制御能を理解することが、再生医療・組織工学の鍵となる。
3. ECM組成と真皮繊維芽細胞サブポピュレーション
ECMは線維芽細胞の生成物であると同時に、その表現型を制御する動的調節因子である。線維芽細胞サブポピュレーション(乳頭層・網状層・皮下層)は、構造的・機能的に異なるECM構築能をもつ。
乳頭層線維芽細胞(papillary fibroblasts):星状形態で、表皮基底膜近傍に存在。Ⅲ型コラーゲン、ラミニン、Ⅳ型コラーゲンを主に合成し、表皮–真皮接合部の構造的安定性とケラチノサイト支持に寄与する。
網状層線維芽細胞(reticular fibroblasts):大型、紡錘形で、主にⅠ型コラーゲンを産生し、真皮深層の張力強度と線維束配向を担う。
ECMによるフィードバック制御:ヒアルロン酸を豊富に含む乳頭層ECMは、成長因子・サイトカイン応答性を修飾し、線維芽細胞のフェノタイプを再定義する局所フィードバックループを形成する。
損傷応答:損傷後、前脂肪細胞(pre-adipocytes)が転分化(transdifferentiation)して線維芽細胞様細胞となり、創傷部位でECM沈着を担う。
(Figure 3)
もういい加減書き飽きましたが、サブポピュレーション二分法は過度な単純化で時代以下略
ECMが線維芽細胞フェノタイプを制御する・・・の件ですが、メカノトランスダクション経路による可逆的調節と、エピジェネティックリプログラミングによる不可逆的変化があります。
前脂肪細胞(pre-adipocytes)が転分化(transdifferentiation)して線維芽細胞様細胞・・・可塑的中間状態(adipo-fibroblast hybrid)を経ることが知られていて、可逆性があります。
今回はここまでとさせてください。
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