山本六三展-幻想とエロス-(Ⅲ)


 もう一つ、書き忘れました。忘れてばかりなので、座談会の内容は、後日まとめなければと思っています。備忘録のつもりで、とりあえず記載しておきます。

 ちょうど、10分遅れて座談会の会場に入ったときに、アルフォンス井上氏が、「山本六三氏が、山本氏の銅版画について書かれた澁澤龍彦氏のエッセイに、お怒りであった」ということを話されていたように思います。

 私もそのエッセイは読んでいますが、どこに掲載されていたかすぐに思い出せません。『城と牢獄』というような囁き声も会場であったように思うし、その中の一篇なんでしょう。以前に、サワムラ・シスターズさんもこの本を探しておられたこともあったので、きっと、その時に私も読んで印象に残ってるのかもしれません。

 澁澤龍彦氏の著作は、かなり処分してしまいましたが、まだまだ、全集、著作集、初版本が某所においてあります。手元にあれば、簡単にわかるのでしょう。『城と牢獄』であれば、全集はもちろん、新編ビブリオテカ澁澤龍彦にも収録があります。

 澁澤さんのエッセイは、あのとおりの文章ですから、貶しているようで実は絶賛しているのか、絶賛していながら貶しているのか、良くわからないところがあります。山本氏も、例の「白痴美の銅版画家」という澁澤氏による称号を問題にしているのではないか、というお話だったと思います。もちろん、澁澤氏のこのエッセイには、「技巧を追及するあまり曖昧なものを潔癖に排除してるようだ」(原文がないので正しい引用でないかもしれないので、後ほど訂正します)等々、座談会でお話があった(昨日の記事を参照)、線にこだわりメゾチントなどの面的な偶然性の伴う技法を嫌ったというエピソードにつながるような感想も含まれていますし、さすがと思わせる素晴らしいエッセイなのですが…。間違いなく、澁澤さんは「最大級の賞賛」をこめているのだと思っています。

 不遜ながら、ハルもこの澁澤さんの文章に賛同するものです。なぜなら、澁澤さんもこのような無垢な-生の肉体や精神を感じさせない-愛らしい少女がお好きであったのには間違いないでしょうから…。山本さんも実は、澁澤さんにこのような本質をずばり書かれてしまい、照れ隠しの怒りといったものではなかったのでしょうか?