モンテ・オリヴェート・マッジョーレ修道院とソドマ | フィレンツェ暮らしアレコレ

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フィレンツェの中心街から郊外に移り住んでマッタリのんびり?
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こんにちは。

季節外れの暑さで土日最高気温が28℃まで上がったフィレンツェです。


 この日曜日シエナから南東へ車で45分程の所に有るシエナの名家出身の聖ベルナルド・トロメイが創設した大型修道院、モンテ・オリヴェート・マッジョーレを訪れました。

 ここは私にとって、25年以上前に参加したワイン愛好家グループの旅行で立ち寄ったのですが、開館時間に間に合わず内部を見学できず仕舞いで、ずっと心に引っかかっていた所で、個人的に意義深い見学でした。

 宗教離れが進む中、今なお多くの青年を含む30名ほどの修道僧が活動し、グレゴリオ聖歌のミサ(一般の観光客も参列可能)ワインやリキュールにオリーブオイルなどを作り(ブックショップで販売)

修道院内部を有料見学できます。

特に見応えがあり、有名なのがジョバンニ•アントニオ・バッツィ、通称ソドマと言う、16世紀前半、主にシエナで活躍した画家の初期を代表する聖ベネディクトの生涯を描いたフレスコ画の連作がある事で有名です。


このフレスコ画の中央、黒髪の男性が当時20代後半の彼の自画像とされています。

出身はピエモンテのヴァルチェッリで、ミラノでレオナルド・ダ・ヴィンチの影響を受けシエナの名家に才能を買われ1501年からシエナに移り1505-年以降にこの修道院のフレスコ画の連作38枚をルカ・シニョレッリから引き継いで描き、その後ユリウス2世とレオ10世の時代2度ローマに呼ばれ作品を描くも同時期にローマに呼ばれたラファエロとミケランジェロほどの大きな活躍は出来ずにシエナを拠点に活躍し、生涯を終えた画家です。

 それでもレオ10世から騎士の称号を授けられるなど当時かなり評価が高かったことが伺われます。

ソドマというあだ名はピエモンテ方言のsű, 'nduma!(さあ行きましょう)から来ているそうで、イタリア語のソドマ(男色者)由来ではないそうです。

 ただ、ヴァサーリの芸術家列伝をソドマが批判したことで仕返しとしてか、同列伝で作品は評価しながらも彼の派手な服装や雑多な沢山の動物と暮らしているなど素行に批判的なことが書かれ、反撃を受けています。ヴァザーリはソドマより34歳若く大きな年齢差が有るのですが犬猿の仲だったと言われたりしている様です。

 ソドマの動物好きはこの修道院のフレスコ画にもよく現れていて、彼の自画像の足元に2匹の首輪をした穴熊がソドマを慕う様に描かれ、彼の背後にも剥離していて判別できないのですが、鶏か何かが描かれています。馬も大好きだったそうで彼が描いた絵画の馬の綺麗に手入れされた姿によくその事が現れています。

 フレスコ画のあちこちにさまざまな仕草で描かれ、背景の細部の描き込みがまた素晴らしく、初期の意欲作です。

 私がこの修道院に是非行きたいと思っていた要因の一つは、私の好きな画家の1人でもある彼の出世作でもあるこのフレスコ画の連作是非直に観たかったからなのです。

 ソドマの作品はシエナではサンドメニコ教会内のシエナの聖カテリーナ礼拝堂を始め国立絵画館などで数多く見ることができます。ローマではラファエロの作品で有名なファルネジーナ荘の2階のフレスコ画を描いています。

 シエナとローマで活躍したラファエロの兄弟子、ピントリッキオがシエナで1513年に亡くなった後シエナを代表する画家として活躍するのですが、ローマではラファエロ、ミケランジェロと活躍時期が被り、活動が限定的になり、シエナでは地元生まれの彼より12歳若いベッカフーミがシエナを代表するマニエリズムの画家として若くして頭角をあらわし、シエナでもトップの座を明け渡す感じになります。

 その頃エミリア地方ではコレッジョやパルミジャニーノ、ヴェネツィアではティッツィアーノ、フィレンツェではアンドレア・デル・サルトからマニエリズムの画家、ポントルモ、フランス王に呼ばれたロッソフィオレンティーノと個性とインパクトが強い画家が多く活躍した後期ルネサンスの中では印象が弱く感じるかもしれないのですが、ミケランジェロの影響があまり感じられない、丁寧な仕事の中に彼のユニークさが少し覗く万人受けするルネサンスらしい構図とシエナ派の特徴の繊細さと色彩の華やかさとバランスの良さがソドマの魅力だと思います。ミケランジェロから強い影響を受けたヴァザーリと大きく異なる作風で、2人の美意識は相容れなかったのだろうなと思います。

ウッフィツィ美術館に以前大きな聖セバスティヌスが展示されていたのですが、ここ数年展示されておらず残念です。

ソドマのお話で長くなってしまったので修道院について別に書かせて頂きます。

(フレスコ画が描かれているキヨストロ)

私はフィレンツェを拠点に、イタリア政府公認観光ガイドをしています。

 美術館案内に街歩き、ワイナリー訪問など、プライベートガイドも承っておりますので是非、下記のホームページからお気軽にお問い合わせ下さいませ。(1時間50€で承っております。)

定番のウッフィツィや大聖堂はもちろん、フィレンツェの旧市街地のエノテカ(酒屋・ワインバー巡り)、シエナやピサ、オルチャ渓谷などご希望を伺ってアレンジさせていただきます。

皆様のお越しをお待ちしております。