「ペンギン置き去り事件」

 

元々旅行に気乗りするタイプではない私、にも関わらずわざわざ出かけたのには理由があった。

 

1)地元民が是非是非来て欲しいと言うから

2)地元民がガイドを務めると言うから

3)「謎」のペンギンにご両親が会いたいと言っているから

 

3)に関しては、我が母を激怒させた事にも関係があり彼としては挽回の意味もあった。ところが母上が同居長男に付き添われたホリデー旅行後、体調を崩されたので私は渡伊日程を変えようか?と提案したのだが、彼にご両親共に予定は変えるべきではないと言うから、とのことだった。元々、彼の連絡不手際で宿を抑える時にすったもんだがあったのは、ご両親のホリデー旅行と私が元々出かけようかと考えていた時期がぶつかったからだ。

 

ただ、母上は昨年大病をされたのでおそらくペンギン、トリノの上陸時にはまだ復調されていないだろうから、お目にかかることはないだろうと予想はしていた。父上もご高齢なので、病身の母上の面倒を見るために同居長男がふらふら週末遊び歩いているわけにはいかないと言うこともよくわかっていた。なので、時に私を置いて自宅にすっ飛んで帰り、母上の様子を見に行ったり、父上のアシストをしていたことは全く気にしていないし、同居息子として真っ当だと思っている。

 

問題は2)だ。

 

さあ、考えてみよう。自らが懇願して旅嫌いの相手にはるばるやってきてもらったとする。それも、自分がガイドをするからと約束して。

 

いきなり、前触れもなしに街の真ん中で置き去りにしても問題ない、のだろうか?

 

相手は自分の家族事情にもよく理解があり、快く中座して自宅に様子を見に送り出してくれる。自分の仕事にもよく理解があり、道すがらオフィスに寄ることも気にしない。

 

だから、説明なく観光中に置き去りにしていい、と思ったのか?

 

それは違う、と「私」は思う。何故に前もって一言「今日はxx時からオンライン会議があるから自分は自宅にもどら

 

 

 

 

 

 

 

 

ペンギン

「そうだね、ペンギンアイスとても美味しかったよ。でもロンドンには無いんだ」

ペンギン「え、そうなの?」ペンギン

 

ペンギンアイスは美味しかった。パーシーが店長なだけある。ペンギンアイス本舗も素敵なカフェだった。

 

前世マグロ疑いは先週、はるばるやってきた同僚と観光案内がてら炎天下のトリノ市内をうろちょろし、流石に暑くて一時の涼を求めペンギンアイス本舗に案内したそうな。。。。カフェで席を取ったかは不明だ。新発売ペンギンアイスチョコミント味を賞味して。。。なんでも「食べる前に溶けちゃう」熱気で「観光には厳しい」週末だったそうな。

 

地球の裏側からやってきた同僚、もちろん彼同様天文学者。おそらく彼の不審者丸出しな振る舞いも、どうということなかったと思われる。多分、二人してそうだったのでは。。。?いや、まさか。。。。

 

同僚を観光案内する、と聞き、苦い思いが胸をよぎったが「置き去りにするんじゃないよ」とは言わなかった。それは彼が同僚との関係性によって振る舞いを考えれば良いことで、私には関わりのないこと。。。。。。そう、私は観光中、街のど真ん中で置き去りにされた。

 

「ペンギンのかーちゃん、トリノの街で置き去りにされる」

 

迷子になったわけではない。前世マグロ疑いとはぐれれたわけでもない。喧嘩別れをしたわけでもない。いきなり置き去りにされかけたのだ。あわくってペンギンなりに抗議も抵抗はした。でも結局は置き去りにされた。

 

本当のペンギンがポツネンと街の真ん中で途方に暮れていたならば、わらわらと動物愛護精神に駆られた良き市民に手厚く保護されたであろう。何せ、元祖ペンギンアイスの街だ。ところがどっこい、私はペンギンのかーちゃんであって、ずんぐりむっくりはしているが、一応見かけは成人女性。

 

パーシーとペドロは赤ちゃんペンギンで愛らしいが、彼らも「詰め物」ペンギン。我が家のペンギンずが同様の羽目に陥ったら、蹴飛ばされて、あっという間にズタボロになってしまうだろう。

 

晴天のトリノ、日光がそれほど得意でもない私、燦々と降り注ぐ太陽光に気はめいり、ポツンと置き去りにされ、悶々と私の尊厳って。。。。。?


ペンギン駄菓子菓子ペンギン

 

私は一応ではなく、やはり人間、それもひねた中年だ。愛らしい子供や、労りが必要なお年寄りならば人道主義で保護してもらえるだろうが、私では危機を脱出するためには自力でなんとかしなければならない。実際、根性とペンギンの小さな脳をフル回転させて、なんとかした。だから無事ロンドンに戻ったし、ペンギンずのかーちゃんも続けている。

 

ペンギン「ショコラ達はかーちゃんの分身だけど、僕、かーちゃん帰ってきてくれて嬉しかったよ、ペドロそう言っているよ。」ペンギン
「ありがとうパーシー」

 

「ペンギン置き去り事件」こう表現してみると、何やらユーモラスな感じもするような気がする。自分の中で、そのぐらい消化できてきた、ということだろう。たぶん。