<2nd Mar Mon>

コロナウィルスについてイギリスでも危機感が増し(マスクしてる人はほぼ皆無だけど)、楽観的なトーチャンですら「二人とも外に出ちゃいけない状態になった時に備えて、食料の買い溜めしたほうがいいかな?」、と言い出した。「そうね」、と言いながら外出を控えることは難しい私(毎日の通勤以外にも色々あるわけで)。近いうちにオペラやコンサートがキャンセルされるという非常事態が来るかもしれないけど、それまでは風邪をひかないように祈りながら、楽しめる時に楽しもうと、昨日はオペラに。

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切符争奪戦が一般新聞にもなったフィデリオの初日が昨日(3月1日)ありました。新プロダクションですから、まず全体が見えるように真正面の立見で。ROHサイトは→こちら、写真は→こちらで少しと、記事の中の各歌手のprofileでたくさん見られます。

  

どういうお話かは以前のブログでお笑い風のまとめをどうぞですが(→こちら)、おそらく最後にROHでやったのはこの2007年が最後。

 

 

MusicLudwig van Beethoven

LibrettoJoseph Sonnleithner

Revised byStephan von Breuning and Georg Friedrich Treitschke

DirectorTobias Kratzer

Set and costume designerRainer Sellmaier

Lighting designerMichael Bauer

Video designerManuel Braun

DramaturgBettina Bartz

 
 

   

 

Press reviews: クリックで記事に飛びます

The Stage ★★★★★ Bachtrack ★★★★★ Times ★★★★ Financial Times ★★★★ Telegraph ★★★ Guardian ★★★ Evening Standard ★★★ Arts Desk ★★★ Independent ★★★ Broadway World ★★★

 

3ツ星を中心に少し4ツ星が混じるのだろうと予想してたのに、5ツ星評価が二つも出たとは驚き! 

私の評価は3ツ星で、主にプロダクションに対する不満と、実力を発揮できない歌手がいたのがその理由。

 

プロダクション家

フランスフランス革命に読み替えてあるのですが、まとも過ぎて面白味のない前半とすっ飛んだ後半で統一感がないのはまあ我慢するとして、後半は暗い地下牢という設定なのを逆手に取るというか(ここまでやるとパロディか)、サングラスが必要なくらいの眩しさよグラサン。 それも我慢するとしても、夫婦の感動的な再会の場面等をなんとたくさんのコーラスの人たちが後ろでぐるっとお葬式のような現代服で囲んでて、彼らの表情が後ろの大スクリーンに映し出されるのは邪魔過ぎる。私たちが感じてるだろう反応の表情なのですが、観客をおちょくっとんのかムキー。シネマでやる日は、歌手ではなくスクリーンを映さざるを得ない場面もあるでしょうに、映画館の皆さんはもっと怒りますよパンチ!

カーテンコールで演出チームが出てきたときに当然ブーイングだろうと思ったのに、私の周りでは小さなブーイングがあっただけで、観客の感想から想像するに、おそらくあちこちで小さなブーイングがされたのだろうと思います。ブーイングはなくても演出チームに対しては当然冷たい反応でした(これがイギリス式)。

 

パフォーマンスマイク

始まる前に「ヨナス・カウフマン(→profile)は体調悪いですが、歌います」というアナウンスがされ、たしかにちょっと苦しそうだったし、出だしの大切なところが不本意だったのでしょう、カーテンコールは仏頂面。衣装はもちろんぱっとしない上にざんばら髪でハンサムなお顔も隠れ気味だったし、なによりもレオノーレの凄い声量と異常な超長身のせいで、歌唱面でもルックス面でもカウフマンが貧弱に見えてしまったのも気の毒。

 

ジーンズ男装のフィデリオ(実は妻のレオノーレ)はノルウェー人の リーゼ・ダヴィットセン(→profile)。先月のバービカンでリサイタル(→こちら)では至近距離だったので耳栓が欲しかった程でしたが、ここだとちょうど良くて、しっかり後ろまで轟き渡る美声に聴き惚れました。彼女を知らない人は迫力の声量にびっくりしたことでしょう。タイトルロールで出番も多いしので、拍手も彼女が一番大きかったですが、歌唱面でも演技面でもかなりの大根役者だったのは残念。この役は演技力が大切なんですけどね。まあ、まだダイアモンドの原石でこれからだし、初日で凄く緊張してたようなので、回が進むにつれてどんどん良くなっていくことでしょう。

 

   

 

      

 

   

脇役はほぼ皆さん上手で文句なし。

ROHにはよく出てくれる私の好きなアメリカン人のアマンダ・フォーサイスprofileはきれいに転がる切れ味の良さとけなげな演技で光ってたし、ロッコ役のゲオルグ・ゼッペンフェルト(→profile)、魔笛のザラストロは凄く良かった)は歌も芝居もどんぴしゃ。ご贔屓のアイルランド人テノールのロビン君(→profile)はWigmore Hallの常連ですが、久し振りにROHに出てくれて嬉しいです。背丈もあるし端正な歌唱と容姿で二枚目役で活躍できる筈なので、どんどん出て欲しいです(本人は歌曲の方が好きかもしれないけど)。

 

   

 

というわけで、大騒ぎした割にはがっかりな初日でしたが、これでカウフマンが回復して、リーゼ嬢が落ち着いたら、素晴らしいパフォーマンスになるでしょうから、17日の最終日に又行くのが楽しみです。