19日からの4泊イタリア旅行、なにから書こうかと迷っていたんですが、3つ観たロッシーニフェスティバル(→こちら)のオペラの中でぶっちぎりのハイライトだったリッカルドとゾレイダをまず書くことにします。なぜかと言うと、私たちが聴いた19日の最終日とは別の日にこっそり全部録音した人がYoutubeにアップしてくれて、(時折スマホが手から滑った音はするものの)とても良い音質なので、消される前に皆さんにも聴いて頂きたいからです(→こちら)。3時間と長いし、55分あたりにフローレス王子が登場する部分からで充分でしょう。

追記:映像もYoutubeにアップされました→こちら

 

 

初めてのロッシーニ・フェスティバル、「どんな雰囲気かしら?」、と軽い気持ちで行ったのに、こんなベルカントの極みのようなオペラセリエを素晴らしい歌手たちで聴けて大満足だったんですが、「よし、今年はロッシーニ没後150年という記念の年、22年振りに初演以来200周年でもある「リッカルドとゾレイダ」を新プロダクションでやってみようじゃないか。歌唱力抜群の歌手が数人必要な大作だが、看板であるフローレスだけじゃなく、小さな役に至るまで上手な歌手を集めて、出来れば次代を担う若手にもチャンスを与え、セットも衣装も豪華にし、バレエも入れて華やかに!」という意気込みが感じられました。 新プロダクションとは思えない古めかしさですが、滅多にやらないオペラはこうしてわかり易いのが良いので文句なし。

 

細かいことは知らずにほんのあらすじだけでも歌の迫力だけで大感動でしたが(英語字幕は無し)、後から「オペラ御殿」というサイトの方が時間を掛けて訳して下さった対訳→こちら)をフォローしながら聴いたら案外ちゃんとした内容だし、ロッシーニのセリエの代表作になり得る作品なので上演機会が増えるべき。 とくに男声はほぼテノールばかりなのも超私好み。 歌手を集めるのが大変でしょうから、望みは薄いですけどね・・。

 

 

 

会場についてはまたレポートしますが、実は郊外の巨大なスポーツアリーナの一部を囲った箱の中で、席は13列目。 暗かったせいかカーテンコール写真がイマイチなのは残念(写真撮影はOKのようです)。

 

RICCIARDO E ZORAIDE

Direttore GIACOMO SAGRIPANTI

Regia MARSHALL PYNKOSKI

Coreografie JEANNETTE LAJEUNESSE ZINGG

Scene GERARD GAUCI

Costumi MICHAEL GIANFRANCESCO

Luci MICHELLE RAMSAY

 

Agorante SERGEY ROMANOVSKY ヌビア(エジプト)の王様で、ゾライデを狙っているが断られっぱなし

Zoraide PRETTY YENDE 中近東から来た美女でヌビアで捕らわれの身。リッチャルドと恋仲。

Ricciardo JUAN DIEGO FLÓREZ 十字軍の騎士。変装してヌビア王に近づきゾライデを助け出そうとする

Ircano NICOLA ULIVIERI ゾライデ父で中近東の有力者。ヌビアで勢力拡大を図るが失敗して行方不明

Zomira VICTORIA YAROVAYA アゴランテ王の妃でゾライデに嫉妬し邪魔しようとする

Ernesto XABIER ANDUAGA キリスト教の聖職者でリッチャルドの友人

Fatima SOFIA MCHEDLISHVILI ゾライデの侍女

Elmira MARTINIANA ANTONIE ゾミーラの侍女

Zamorre RUZIL GATIN アゴランテ王の家来

CORO DEL TEATRO VENTIDIO BASSO

Maestro del Coro GIOVANNI FARINA

ORCHESTRA SINFONICA NAZIONALE DELLA RAI

 

詳しいストーリーはロッシーニファンには神様とも言える「ロッシーニ御殿」というサイトの→こちらと→こちらでご覧下さいですが、要するにゾライデと男二人の三角関係に嫉妬する王妃がかき回し、言うこと聞かないゾライデと変装がばれたリッチャルドが死刑になろうとする所で十字軍が助けに来てめでたしめでたし。誰も死なないし暗い内容ではなく、イスラム教とキリスト教の対立もなし。

 

ロッシーニ・フェスティバルがきっかけで大スターになったホァン・ディエゴ・フローレス、やっぱりちょっと年を食ったわねという印象で、声から甘さとあの独特の突き抜け感が少し減ったかな。でも、勿論まだ充分上手だし華はあるし、最近はあまりやってくれなくなったロッシーニのこんな凄い役を今回はやってくれて感謝。 他の重い役にシフトしてるけど、ロッシーニ・テノールとしてはまだトップでしょうし、やっぱり貴方の良さが一番出るし、貴方にはロッシーニの評価を更に上げる義務があるでしょ? 第一こんな長くて大変な役を折角覚えたんだから又歌わないと勿体ないし、貴方がこれをやろうと言えば実現するでしょうからよろしくお願いしますね。  尚、インターバルの間に手を怪我したようで、後半は包帯してました。

アゴランテ王のセルゲイ・ロマノフスキー(チョッキ姿)は去年ROHの椿姫でまあ普通に上手でしたが(→こちら)、こんな凄い役も出来るとは! 高音は時々苦しかったけど、悪役に相応しい男らしい声がぴったり。一番出番が多くて歌いまくりのスタミナも凄い。

今回の大発見は3人目のテノールのザヴィエル・アンドゥアーガという22、3才のスペイン人。フローレス王子の友人役なのでいつも一緒なのですが、最初出てきた時、やっとフローレスが出て来て感激した数秒後にザヴィエル君が素晴らしい声質と声量で皆を驚かせびっくり、フローレスがかすんでしまったほどのインパクト。 ロッシーニ風にコロコロしなくても力強いストレートな声だけでも立派に勝負できるので(今回のエルンスト役はコロコロしない)、フローレス王子の後を追うよりも違う路線に進むほうがいいような気がしますが、ルックスも良いし、絶対にこの子はスターになる! 爆弾

 

女性陣では、ゾミーラ妃役のヴィクトリア・ヤロヴァーナの迫力ある低音と確かなテクニックも感心しましたが、なんと言っても圧巻だったのはプリティ・イェンデのキラキラ歌唱。既にトップクラスのソプラノですが、この難しい役を立派にこなして又ひとつ抜きん出たプリティちゃんがこの日の立役者でした。凄ーいクラッカー

 

 

明らかに今年の目玉はこれで、これだけでも行った価値があったというものです。あとの二つはオマケみたいなものでしたが、それなりに楽しめたし、楽しい3連ちゃんオペラ三昧でした。