コンサートでお目当てにキャンセルされることには慣れっこですが、6月8日のミドル・テンプル・ホールで起こったようなことは滅多にないのではないかしら。

だって、キャンセルする本人が、「いやー、申し訳ない、僕、病気になっちゃって、今夜は歌えないんですよね」って元気に挨拶するんですもん。いつもと変らない声で。 


その前に知り合いに愛嬌ふりまいてハグしまくったトビー君(Toby Spence)が歌えないからってコンサート自体をキャンセルすることができなかったのは室内楽の曲もあったからでしょうけど、トビー君だけが目的で行った私は「そんなら金返せよな~っむかっ いくら安い席だからってトーチャンと二人分なんだから」、と言いたくもなりましたが、急な話だったらしいし、プログラムの中に挟まってた紙によると「トビー・スペンスは病気ですが、ベンジャミン・ブリテンだけは歌いますので」、って書いてあり、実際トビー君も「1時間前まで歌うつもりでリハーサルしてたんです」って事情だから仕方ないししょぼん、 トビー君の元気(?)な姿を見られただけでもラッキーだったと思うことにしましょう。


で、代役が誰かと言うと、ニッキー・スペンスという若いスコットランド人テノールで、苗字は同じでも親戚ではないのですが、笑い話ですね、ここまで来るとべーっだ!


トビー君が褒めちぎるしかないことは別にしても、実際ニッキー君はとてもクリアな美声でテクニックもしっかりしてて前途有望なのは明らか。トビー君の降板でコンサートのレベルが下がったどころか、もしかしたらニッキー君の個性には欠けても実に立派な歌唱でレベルアップしたかもしれなくて、拍手喝采浴びたのも当然です。ブリテンの代わりに歌ったスコットランドのユーモラスな早口の曲は大受けクラッカー



             こりゃ、血の繋がりがないのは明らかだ  


でも、そういうことじゃないわよね!プンプンダウン


ずっと先月ベルリンでクラウス君に振られた時にブログに書いた言葉(→こちら )を頭の中で繰り返しちゃったわよ。


声が違う~っ! ルックスはもっと違う~っ!


いえ、今はずんぐりむっくりで赤ら顔の素朴青年ニッキー君、背丈は一応あるし顔立ちも悪くないので、うんとスリムになって且つカツラ被って化粧すればオペラで二枚目役やっても違和感ないんでしょうけどね。


でも、私は大好きなトビー君の歌を聴きに来たわけだから、簡単に失望感は拭えませんよーだパンチ!


クリップ

Nicky Spence tenor (Toby Spenceの代役)

Julius Drake piano

The Doric Quartet


Vaughan Williams Four Hymns for Tenor and Piano
Elgar Piano Quintet for Piano and String Quartet
Britten On This Island for Tenor and Piano (これはカット)
Vaughan Williams On Wenlock Edge for Tenor, Piano and String Quartet

クリップ



仕方ないので、15ポンドの硬い木のベンチでお尻痛くなりながら、素晴らしいホールを眺めながら聴いてましたが、エリザベス1世もよくご飯食べに来てたというこのチューダー朝のミドル・テンプル・ホールは本当に壮麗で威厳があって何度来ても見惚れます。ステンドグラスに1570年って嵌め込んであるでしょ?


このホールを発見するきっかけになったのは3年前のカウンターテナーのIestyn Daviesのコンサートなので(→こちら )、イエスティン君には感謝してます。それから何度かコンサートに来てますが、インターバルには無料でワインも頂けるしワイン、バルコニー席はなんと5ポンドですから本当にお得。 滅多にコンサートやらないですが、機会があれば是非どうぞ(テンプル・ミュージック→こちら )。


とてもイギリス的なプログラムもこのホールにぴったりで、このシリーズを仕切ってるピアノ伴奏者のジュリアス・ドレイクも嬉しかったことでしょう(すみません、いつものように写真は無し)。


でも、オペラ歌手って、どうしてこう大事な日に病気になったりするわけ!? そんなしょっちゅう本番があるわけじゃないんだから、健康管理をちゃんとして下さいねよね、ったくむかっ










コンサートが終わってもまだ明るいテンプル地区は弁護士事務所などが立ち並び、最高裁判所も近くにある落ち着いた雰囲気のエリアです。



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