<8月14日(日)>

土曜日はバレエ、日曜日はテレビ観たり旅行の下調べとかしてるうちにあっと言う間に週末が過ぎてしまいました。暴動自体は収まりましたが、大人たちは「なぜ起きたのか? 再発を防ぐにはどうすれば?」、と深く悩んでます。ニューヨークの元警視総監タフガイを助っ人に呼ぼうというキャメロン英首相の案は反対も多いようですが、盗聴事件で揺れてトップが辞任してぐらついてる英警察だから、これからは厳しい態度で臨むという姿勢を示すには効果的かも。

溜まってるオペラやコンサート、バレエ記事を写真中心にぼちぼち順不同でざっくり書くつもりで、まずは今更ですが、マダム・バタフライ。

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6月25日と7月15日に観に行ったオペラのことを今更書くのも気がひけるんですが、写真とか準備してあったし、なんと云ってもオーケストラ・ストールに座るというゴージャスな経験をしたわけですから、やっぱり一応書いとかないとね。


長崎が舞台なんでしょ? 何が起こるの? と仰る方は以前の記事(→こちら )の下部をご覧下さいですが、哀れな蝶々さんは涙を誘いますよしょぼん 強情っ張りパンチ!なのが悪いんですけどね。


あ、でもちょうどお盆でこちらにいらしてる女中のスズキさんがもう一度説明して下さるそうなので、お願いしましょう。オペラではイタリア語で話すスズキさんですが、やっぱり日本語もおできになるんですものね。


クリップこんばんは。私は蝶々さんの女中をしていたスズキと申します。若くして自害した蝶々さんの哀しい身の上をお話させて頂きます。まだあの日の壮絶な死の場面が鮮明に記憶に残っていて、思い出すたびに涙が溢れるのでございますが。ヨヨヨ・・


蝶々さんは武士の娘だったのですが、お父上が天皇の怒りにふれて切腹を命ぜられ、お家は没落。一家の生活を担うために、お嬢様は15歳で芸者になったのでございます。そこでアメリカ海軍のピンカートン中尉に見初められ、結婚周旋屋のゴローの口利きで、結婚することになったのです。


ですが、この結婚、最初から食違っておりましたのが不幸の始まりで、ピンカートンさんは長崎駐屯期間だけの現地妻をお金で娶ったつもりだったのに対して、蝶々嬢さんは本気で一生連れ添うものと信じ、キリスト教に改宗までしたのでございました。このために一族から破門され、ひとりぼっちになってしまったのです。


頼りにできるのは夫だけなのですが、この助平で軽薄なピンカートンは間もなく本国に帰ってしまい、それからはなしのつぶてで、息子が産まれてことも知らない有様。お嬢様は長崎の港を毎日眺めてはピンカートンの船が入港するのを待ちわびておりました。


そして3年が経ち、ゴローの持ち込んだ良い縁談にも耳を貸さず、ついには生活費も底がつきそうになった頃、ついに彼の船が長崎に戻ってきたのです。そのときのお嬢様の喜びようといったら。二人で家中に花を巻いて、幸せだった思い出の花嫁衣装に身を包み、徹夜で待ったのですが、彼は来ず、お嬢様は疲れて寝てしまいました。


そこにアメリカ領事のシャープレス様と一緒にピンカートンさんがやってきたのですが、本国から連れてきた奥様のケイトさんも一緒だったのです。領事から息子のことを聞いたピンカートン夫妻は、息子をアメリカに連れて行って我が子として育てることことを申し出て下さったのです。

明治時代の日本で混血児を育てる苦労を思えば、息子のためにもアメリカに渡った方がいいのは明らかで、蝶々さんは承知するしかなかったのです。


そして私が怖れた通り、ピンカートンが子供を迎えに来たときに、お嬢様はお父上の形見の短刀で自害。


思えば、お嬢様がそこまで頑固に夫を待ち続けたのは、愛情だけではありますまい。名誉を失った武士の娘にまともな結婚を望めないのですが、かと言って長屋の八つぁんや熊さんのおかみさんになるのも我慢できないお嬢様の前に現れたのが、海軍士官のピンカートン。国は違えどいわばサムライ階級のアメリカ人の妻になることで、武士の娘としての面目も保てるという意地があったのではないでしょうか。夫に棄てられたと思うことは誇りが許さなかったでしょう。強情なお嬢様でございました。


ピンカートン中尉は、嫌なお方ではございましたが、アメリカ人はなんでも望むものが手に入るのが当然と思っている当時としてはごく普通の考え方だったのでしょう。子供のことも知らなかったし、蝶々さんがまさかずっと自分を待っているとは思わなかったようですから、彼ばかりを責めるのもまちがいかもしれません。事情を知ってたいそう後悔なさったようですし。


私としてはアメリカに連れて帰ったお坊ちゃまを奥様と共に立派に育ててくれたかどうかが一番の気がかりでございます。


聞くところによれば、日本で三枝ナントカさんという方が成長したお坊ちゃまを主人公にした「ジュニア・バタフライ」というオペラをお創りになったそうですが、一体どんなことになったのでしょうか? そう言えば、「ミス・サイゴン」というミュージカルにもなったそうですね。

まあ私としたことが、長々とお話してしまい、椿姫さんに怒られそうですね。

では、うらめしや~、じゃなかった、ご機嫌よう~クリップ


オペラ三昧イン・ロンドン
Composer Giacomo Puccini
Directors Moshe Leiser and Patrice Caurier
Set Designer Christian Fenouillat
Costume designs Agostino Cavalca
Lighting design Christophe Forey

Conductor Andris Nelsons/Paul Wynne Griffiths
Cio-Cio-San Kristine Opolais/Liping Zhang
Pinkerton James Valenti
Sharpless Anthony Michaels-Moore
Suzuki Helene Schneiderman
Goro Robin Leggate
Bonze Jeremy White
Yamadori ZhengZhong Zhou


オペラ三昧イン・ロンドン


見飽きたこのプロダクション、今回の楽しみは蝶々夫人のPatricia Racetteだけだったのに、初日の2週間くらい前に体調不良のためキャンセルと発表になって、凄くがっくりガックリ  代役は、何度聴いても好きになれない上にこの役で既に観たこともある中国人Liping Zhangと、他に聴いたこともない二人のソプラノだなんて行く気が一気に失せてしまいましたが、なんと云っても着物イベントとしては最適のマダム・バタフライですから、それ目的だけで行ってみました。


その2回の着物企画にはそれぞれ5人の着物姿が揃い(→こちらこちら )、ご本人方と回りの皆さんにも喜んで頂けて日本女性の良さをアピールすることに少しは貢献できたと思うのですが、さてオペラ自体はどうだったかというと・・・、


オペラ三昧イン・ロンドン
まず最初の蝶々さんKristine Opolaisは、聴いたこともない人でしたが、時折声が割れて不快なときもあったけど、綺麗に響くときはなかなか素晴らしくて、声量も立派だし、代役としては上々の出来。上の横の席だったので顔がよく見えませんでしたが、舞台映えのする美人のようで、指揮者Nelsonsの奥さんだそうですが、トラファルガー広場の生中継も評判良かったようです。


ピンカートンのジェームス・ヴァレンティは、トラヴィアータの時はまあまあだったけど、今回はかなりなさけない歌唱で、一緒に観た人の中でもルックス以外に彼のことを誉めてる人は誰もいませんでした。2回ともカーテンコールでブーイングされたんですが、それは歌がひどくでブーされたんじゃなくて、悪役を上手に歌えて良かったねという意味にヴェレンティ自身は取ったように私には見えました。まあ、一流歌手がこの役を歌うことは期待できないので、長身で見栄えがするだけでも良しとしますかね。



二人を不安そうに見守るシャープレス領事役のアンソニー・マイケルズ・ムーアは温かみのある演技と歌唱でなかなか良かったです。トスカのスカルピア役なんかだと迫力不足で一昨日来いですが、脇役でなら光れる永遠の中堅バリトンってとこでしょうか。


めっけものだったのは女中スズキ役のHelene Schneidermanで、深みはないけど凄い美声。蝶々さんより上手ね、と皆さん仰り、私も同感クラッカー


オペラ三昧イン・ロンドン

オペラ三昧イン・ロンドン
スズキの上手さは2回目の時はもっと顕著でした。蝶々さんが予想通りひどかったですから。


可憐な東洋人にルックスはぴったりだし、この役は慣れてて物腰も優しくてビジュアル的には文句なしのZhangだけど、あのくぐもった声は果たして後ろの席まで届くのかしら? 私は前から2列目だったので充分聴こえたけど、降板したラセットをずっと呪ってました。

でも、3D撮影のこの日の収穫は普段なら200ポンドくらいの席に40ポンドで座れたことでがま口財布、何度も観たけど安い席からは視界に入らなかった後ろのセットが初めて見えました。それまではほとんど床と障子だけでなんてつまんないプロダクションだと思っていたんですが、後ろの壁に投影される画像は斬新さも工夫もない当たり前過ぎる長崎の風景とかで、実に平凡だということがわかりました。


まあ衣装はそれほど悪くないし、変に読み替えされてぶっ飛ぶセットだと蝶々さんへの同情も薄まるかもしれないので、上手な蝶々さんさえ出てくればこれで我慢すべきなんでしょうか? 


お願いだから次回は上手な蝶々さんだけ連れて来て下さいよね。お話も音楽も良くできてて初心者には最適のオペラですから、オペラファンを増やすためには大事なことでしょ。


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