<11月13日(土)>

4ケ月以上も出稼ぎに行ってたムスメが来週帰ってきます。久し振りに会うのはもちろん嬉しいけど、いない間彼女の部屋を使わせてもらって助かったのに、明け渡さなければならないのが不便。明日の日曜日は片付け作業だわ。

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オペラ三昧イン・ロンドン


グノーのRoméo et Julietteを10月26日の初日、11月1日と11日の3回観ました。


とても好きなオペラなんですドキドキ 今まで生で観た中で一番感動したのも実はこのオペラで、10年前のROHのアラーニャとゲオルギュー共演の同プロダクションでしたが、その頃は切符の賢い買い方も知らなかったので逃してなるもんかと150ポンドもした一番高いオーケストラストールを奮発したのも感動の一因かもしれませんけど。このオペラは特にロミオが大切だと思うのですが、当時はまだ少年っぽさの残るアラーニャの素敵だったことラブラブ! ネイティブのフランス語だしね。


だけどこのオペラ、あまり人気がないのか、歌手を揃えるのも難しそうだし、ROHでもそれ以来やってなくて10年ぶり。ネト子ちゃんとやったNYメト版で観るようにおっさんになったアラーニャでもいいから彼でもう一度聴きたかったですが、今回は違うテノールだったのが不満だったけど、やっぱりお話としてもオペラとしても好きなんでしょう、結局はとても楽しめたので、3回も行ってしまいました。


オペラのロメジュリはベッリーニのカプレッティとモンテッキもあり、去年春にネトレプコとガランチャ聴きたさに6回も行きました(→こちら )。同じ題材でも構成が違ってるのですが、ほぼシェークスピアそのままのこのグノーの方がずっとこの恋物語のエッセンスを上手に表現してます。舞踏会での究極の一目ぼれと、「ああ、どうして貴方の名前はロミオなの?」という情熱的で切ないのバルコニー場面を設定したシェークスピアってやっぱり天才。ベッリーニ版は元ネタに忠実とのことですが、この二場面がないロメジュリなんてねえ。


オペラ三昧イン・ロンドン

Composer Charles-François Gounod
Director Nicolas Joël
Revival Director Stephen Barlow
Designs Carlo Tommasi

Conductor Daniel Oren

Roméo Piotr Beczala
Juliette Nino Machaidze/María Alejandres
Mercutio Stéphane Degout
Tybalt Alfie Boe
Stéphano Ketevan Kemoklidze
Duke of Verona Simon Neal
Count Paris ZhengZhong Zhou
Frére Laurent Vitalij Kowaljow
Count Capulet Darren Jeffery
Gertrude Diana Montague
Grégorio James Cleverton

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オペラ三昧イン・ロンドン
男の子ロミオ


生で感動しただけでなく、CDや映像で、ロミオアラーニャでなくちゃと確信してる私が今回の違うテノール(ポーランド人のピョートル・ベチャーラ)のロミオに果たして我慢できたでしょうか?


1回目

ベチャーラは声量もテクニックも充分で文句のつけようはないわ。

だけど、私の頭の中にはロミオ・アラーニャの歌声がしみついてるから、違う!、違う!、ロミオは貴方じゃ駄目なのよ、と必死でベチャーラの声を掻き消してアラーニャの声を聴こうとしてた私。ロベルトのふりふりブラウスの可愛い衣装を、ベチャーラ、なんでお前が着てるんだ?! ああ、もう嫌、我慢できないわ。双眼鏡でアップにする気にもなれな~いむっ


2回目

一生懸命消そうとしても目の前で歌われると段々ベチャーラの声が勝ってきて、今までは何度聴いても輪郭のはっきりしないベチャーラの歌唱は好きになれなかったけど、今回は私の大好きなロミオ役のせいもあるのかしら、彼としてはベストだわ。

でも、ロミオにしては声が太過ぎるし、上手なのは認めるけど、やっぱり特別な魅力が不足してる。華がないというか・・・。2回聴けばもう充分だから、次回は病欠してくれないかしら。


3回目

さすが43歳で今がピークの実力&知名度充分のトップ・テノールの一人が絶好調で歌うロミオだ。芸達者な脇役が揃ってる中でも格が違うのは明らか。上手だわ~、それをこんな近くで聴けて幸せラブラブ!


これって、例えばずっと会ってない愛しい男の面影を一生大事に胸に抱いいようと思ってるのに、つい目の前に現れた別の男に段々惹かれていくようなものかしら。


でも、やっぱり初恋の相手を裏切るのもイケナイ気がするので、今一度原点に戻って愛しいロベルトのロミオを聴いてみなくちゃね。15年くらい前の若くてかわゆい時代のロベルトのDVDに接すれば、かつての熱い想いが蘇るに違いないから恋の矢




女の子女の子二人のジュリエット


今回は最初からジュリエットが二人いて、両方とも初めてだったので聴き比べるのを楽しみにしてました。

で、 Nino Machaidze(以下ニーノ嬢)を2回、 María Alejandres(以下マリア嬢)を一回聴きましたが、若い二人のジュリエット、私の軍配はどちらに?


うーん、これがなかなか難しい勝負だったんです。


オペラ三昧イン・ロンドン   オペラ三昧イン・ロンドン

オペラ三昧イン・ロンドン


まず、大陸で最近めきめき売り出してるらしいニーノ嬢、アンジェリーナ・ジョリーをちょっと膨らませて崩したような容姿で、特に美人ではないのですが、溌剌とした大袈裟気味の演技が行動派のジュリエットにぴったりで、10年前でもすでに年上女房風の老けたゲオルギューを、ビジュアル的には負かしてます。



歌は、艶やかな中低音はとても魅力的だけれど、高音になるとちょっと耳障りで、初まってすぐの有名な「私はまだ若いんだし、人生楽しみたいの、結婚なんてチャンチャラおかしくって」、という大事なアリアで魅了できなかったのは、期待が高かっただけに残念。


でも、まだ荒削りな歌い方だけど、高音がきれいな音になる時もあるのかもしれないし、将来有望なソプラノさんではあるのでしょう。


オペラ三昧イン・ロンドン
そして、もう一人の、どこかで見た顔だけど思い出せないマリア嬢は2回だけの出演ですが、ROH演目冊子にはニーノ嬢と共に顔写真も載ってたので、ニーノ嬢が都合の悪い日だけ出る代役的扱いではなさそうです。


うんと小柄でぺチャパイ、整った顔立ちだけど地味な印象な上、なぜか白い寝巻き衣装もボリュームの少ないデザインにされて更に貧相に見えてしまい、演技も控え目なので華やかさに欠け、主役としての存在感はニーノ嬢に遠く及ばず。


歌は、ニーノ嬢とは反対に、きっちり丁寧でテクニックは上出来、中低音は声量にも乏しくてバツだけど、心地よい高声には聞惚れました。脇役でなら間違いなく光れる人です。

ふたご座

というわけで、強いてどちらかに軍配を、ということであれば、ソプラノはやっぱり高音が上手で出せてなんぼでしょうから、マリア嬢の勝ちかな。


でも、それぞれ長所短所はあるけれど、どちらも将来は大スターにはなれなくてもそこそこのレベルには行けそうな若いソプラノさん二人で、水準としてはベチャーラには及ばなかったものの、充分合格でした。



だけど、やっぱりスター歌手がジュリエットしてくれないと切符の売れ行きは悪いわけで、挽回に必死のROHが200ポンド近い切符をシャンペン付きで55ポンドにダンピングまでしたのは心が痛みますがま口財布 これでROHも学んでくれるといいのですが。歌手の出演料を押さえるために有名スターを呼ぶのを止めるのは結局は損だってことにむっ


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ヒツジヒツジその他


切符の売れ行きは悪くても充実したパフォーマンスになったのは脇役歌手のレベルが高かったからで、唯一の例外であるジュリエットの父親役でいつも失望のダレン・ジェフリーを除けば、皆さん、それぞれ聞かせどころのアリアをとても上手に歌ってくれて、3回聴いても飽きるどころか、回を重ねるごとに聞惚れました。それに、多くの歌手にちょっとづつ良いアリアがあるのも、このオペラの良い点でしょう。


特に良かったのはマーキューショのStéphane Degoutで、9月のコジ・ファン・トゥッテのグリエルモ役も良かったし、特に美声ではないし、髪の毛も不足気味だけど、しょっちゅう来て欲しいです。ステファノ少年役ソプラノKetevan Kemoklidzeも素晴らしくよく通る声で拍手喝采を浴びたし、ティボルトの元ROH若手アーチストのアルフィー・ボーも評判良かったです。アルフィー・ボーはENOでよく主役をやってて、今もラ・ボエームのロドルフォやってますが、これならROHでも主役の代役くらいはできそうだ。


乳母役のダイアナ・モンタギューも相変わらず上品で素敵だし、パリス伯爵役の現役ROH若手アーチストの中国人バリトンZhengZhong Zhouはすらっとチャーミングで、歌はほんのちょっとだけど、オペラ界ではルックス面で劣等感を抱かざるを得ない我々東洋人の名誉挽回の助けになったと言えるかも。


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笑えたのは指揮者のダニエル・オレン。3回とも指揮者が真横から見える席だったのですが、オレンが指揮しながら声をよく出すのは知ってたけど、初日は大声でガーガー吼えてうるさかったこと。それを誰かに責められたのか、それとも自ら反省したのか、2回目以降は必死で我慢してるのが明らかで、やたら出たシーッと指で口を押さえる仕草はまるでオケへの指示というよりも自分に言い聞かせたに違いない。で、ずっと必死で押さえてたのに、最後に我慢できなくて控え目ながらでかい溜息がもれてしまいました。お疲れ様。



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