<8月16日(月)>
肌寒さが少し和らいで、北国の夏の終わりの風情が戻ってきたかな。
オペラ&バレエ鑑賞記をゆるゆると遅いペースでやってますが、まずはボリショイ・バレエ第一弾から。
---------------------------------------------
7月19日、ボリショイ・バレエのROH引越公演の初日に行きました。
あら、またバレエなの? パリでも先月2回観たし、オペラに飽きてバレエファンに転向したの?
いえ、そんなことはありません。あ、もちろん美しくて芸術的ですからバレエも好きですよ。でも、限られた時間の中でバレエにまで足を突っ込むのは無理ですから、必死で踏みとどまってるんです。実はこのブログに迷い込む検索ワードは超マイナー趣味のオペラよりもバレエのことがうんと多いので、バレエ記事の方が訪問者増加につながるんでしょうが、でも私はやっぱりオペラの方が好き。今年は吉田都さん引退などもあり、ROHにも何度か行ってしまいましたが。
で、なんだかんだパリ・オペラとボリショイ・オペラをこれだけ一気に観ると、ド素人の私でもつい比較したくなるわけですが、印象に残ったのは、パリ・バレエではダンサーたちのビジュアル的画一性と特に男性ダンサーたちの美しさ、ボリショイバレエはそれに加えて女性ダンサーの手足の長さと細さ!人間の体型じゃないわ。顔も化粧で同じ宇宙人に見えちゃいました。いずれも、長短太細白黒黄とバラエティに富んだROHダンサーとは大違いで、バレエ団によってそれぞれに特徴があるらしいことを実感しました。
ROH夏休みのヒマつぶしに初めて行こうと思い立ったボリショイ・バレエですが、いくつかの演目の中から選んだのは奴隷の反乱がテーマのスパルタクスSpartacusとドン・キホーテ。くるくるピョンピョン系が好きなんです。
作曲 Aram Khachaturian/振付 Yuri Grigorovich/指揮 Pavel sorokin
Ivan Vasiliev スパルタクス(捕虜になり剣闘士になったトラキアの王。カーク・ダグラスの映画もありましたね)
Alexander Volchkov クラッスス (スパルタクスの乱を鎮圧するローマの執政官。ユリウス・カエサルと共に三頭政治を行った人です)
Nina Kaptsova フリーギア (スパルタクスの妻で当然優しい女性です)
Maria Allash エギナ (クラッススの愛人で意地悪女)
スパルタクスは紀元前70年頃にローマ帝国に歯向かった奴隷のリーダーで、トラキアの王様だったとされたり妻まで出てきたりして、史実とは掛け離れているんですが、まあバレエですから、思い切り美化して下さい。ハチャトゥリヤンの音楽も、有名な叙情的アダージョもあるけれど、ほぼ全編どんどんパンパンな躍動感溢れ過ぎという感じで興奮させてくれます。
女王ザハロワがキャンセルしたのは残念でしたが(ちょっと前に日本では踊ったんでしょ・・・チッ!)、そんな不満は吹っ飛ぶくらいにイワン・ワシリエフの跳躍力にびっくり仰天して、ヤンヤの喝采を送りましたわ、もう!!
太腿がすごく太いので足が短く見える小柄なワシリエフ君、ロマンチックな王子様役ではぱっとしないでしょうが、ひとりで舞台狭しと走り回り、ジャンプしまくる迫力とエネルギーには皆が目を見張り、まだジャンプしてる最中から思わず拍手が起こりました。こんなことは滅多にないでしょうし、私が遭遇したのは初めてです。(でも、この日は初日だったので彼の凄さはまだそんなに話題になってなかったので途中の拍手はちょっとだけでしたが、この後段々評判が評判を呼び、18日後に違うバレエで彼を再び観た時は、登場するだけでどっととよめきが起こる程の観客の熱狂ぶりだったんですよ。当然ですが)。
踊りだけでなく、悲劇の奴隷スパルタクスを厳しい表情で懸命に演じるワシリエフ君の鋭い眼力も強烈で、結構遠い席(アンフィ3列目)だった私にもビューンと届きました。
残念だったのは、上半身はほぼ裸なので若さではち切れそうな筋肉がしっかり見えたのに、下半身はタイツで隠れてたことで、体と大して変らないくらいのモリモリ太腿を素肌で見せて欲しかったわ~。クラッスス役の男性ダンサーはタイツ履いてなかったので筋肉の動きがよく見えてとても良かったからワシリエフ君もそうしてくれたらよかったのにぃぃ。
というわけで、まだ21歳の恐るべきジャンプ男にノックアウトされた私は、youtubeで観まくったのであります。オペラ歌手ではするけど、バレエダンサーじゃ初めてなんだから。この後、切符が買ってなかった彼の出番の日で近くて良い席を狙ったのですが、人気が出てしまって買えませんでした
その他のダンサーについては、
男性の群舞が売り物のバレエなので、全体を観ようと少し遠くの席にし、かなり期待してたのですが、人数は期待通りだったけど、踊りは特にどうってことなくてちょっと失望でしたが、スパルタクスが出てる場面は彼しか見てないからまあどうでもいいです。
クラッススは、立ってるだけならワシリエフ君よりずっと絵になる可愛いさだったけど、踊りはヘナヘナ。ま、ワシリエフ君に比べたら誰だってうんと見劣るりするんだから、やってられないぜ、でしょうね。
女性二人はまあまあで、特にフリーギア役はしなやかで可憐。エギーナ役はすらっと美しいけど肝心なところで何度かぐらついたりしたので、嗚呼これがザハロワだったらどんなに素晴らしいかったかと恨みタラタラ。
というわけで、ワシリエフ君だけにメッチャンコ感激してスパルタクスでした。ROHのレパートリーにはないらしい演目なので、二度と生で観る機会はないかも。例えあっても、彼を越えるダンサーがいる筈はないし、彼以外のスパルタクスは考えられません。
では、近いうちに、更にパワーアップしたワシリエフ君のドン・キホーテもアップしますので。