6月18日の初日、22日、25日の3回、ロイヤルオペラハウスのLa Traviataを観に行きました。これで終わりではなく、30日も行きます。
Composer Giuseppe Verdi
Director Richard Eyre
Designs Bob Crowley
Conductor Antonio Pappano
Violetta Renée Fleming
Alfredo Germont Joseph Calleja
Giorgio Germont Thomas Hampson
Baron Douphol Eddie Wade
Doctor Grenvil Richard Wiegold
Flora Monika-Evelin Liiv
Marquis D'Obigny Kostas Smoriginas
Gastone Haoyin Xue
Annina Sarah Pring
ROHではしょっちゅうやってる椿姫、今回の目玉はルネ・フレミング。誰が出ても切符が売れるROHのドル箱ナンバーワンの演目なので、ちょっと前まで不満の残るヴィオレッタが多かったですが、方針を変えたのか、最近はすっかり様変わりし、先回はネトレプコ、今回はルネ・フレミング、次回(来年夏)はゲオルギューという豪華路線よ。
椿姫ってどんなお話よ?ってとこからご存知ない方は→こちら
をご覧頂くとして、デュマ原作のストーリーを以下3行でまとめると、
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19世紀のパリ社交界、結核に侵された高級娼婦ヴィオレッタは初めての愛にめざめるが、恋人の父親に懇願されて泣く泣く身を引き、病気が悪化し最後は恋人に見取られて死んでしまう
という新派のお芝居のような涙の物語でござい![]()
ヴィオレッタに負うところ極めて大で、主役3人の比重をおおまかに計ると、ヴィオレッタ6、アルフレード3、親父1、ってとこでしょうか?
セットや衣装は今更だし、写真でご覧頂くとして、パフォーマンスだけについて書いときます。
期待に立派に応えてくれたルネフレミング(ヴィオレッタ)
若いソプラノがチャレンジすることの多いこの役を3、4年前に初めてやる時、「え、ルネほどの人が今さらヴィオレッタやるの?」と驚いたものです。そして、大スターが遅ればせながら挑戦するわけだから、それなりの成果が出ないと失うものも多いでしょうし、実際NYメトの生中継をラジオで聴いたときは特に良いとも思えず、こんな役で新進歌手と競うのはいかがなものか、と思いました。
だけど、今回、目の前で観ながら聴いたら、素晴らしかったのなんのって![]()
一瞬も手を抜かない(やや大袈裟な)名演技に見合うコントロールの効いた細やかな歌い回しはさすが。今まで何度か生で聴いて(薔薇の騎士、欲望という名の電車、タイス等)、上手だとは思っても、あの甘ったるい声は特に好きでもなかったけど、今回はその特徴を生かしながらも、いつものように輪郭のないぼやけ気味の歌唱でなく、芯のあるシャープなルネに聞惚れました。
一時は太り気味だった体も、50歳にして立派にスリムさを保ち、黒髪のヴィオレッタばかりを見慣れた目には、金髪巻き毛の輝くばかりに美しい椿姫でした。
初日は立ち上がりに時間が掛かって親父とやり合う2幕目がベストでしたが、2回目は最初から好調でよく飛ばし、3回目は途中ちょっとお疲れかしらと心配し・・・、と毎回多少の違いはあるものの、各批評でもベタ誉めされたとおり、やはり大スターの威力は凄いと始終思わせる立派なパフォーマンスでした。
前回のネトレプコと比べると、声自体の迫力はネト子のほうがあるでしょうが、演技も含めた細部のこだわりはルネの勝ちでしょう。 そして次回はいよいよROH椿姫の真打とも言えるゲオルギューの登場ですが、映像にもなってる15年前のスター誕生ヴィオレッタが今どんな歌唱と演技を見せてくれるか見ものですが、こんな綺麗で上手なルネを負かすことはできないでしょうねえ。
しかし、これは私自身の問題なのですが、他のオペラやリサイタルでルネを見過ぎたせいか、目の前にいるのはルネであり、いくら上手に演じてもヴィオレッタとは思えなくて、ルネが涙を浮かべながら熱演してるのに、私は泣けませんでした。同じオペラを何度も観てると仕方ないのでしょうが、知的なルネが計算尽くしで演じてるようにも感じられたのかもしれません。
・・・って、これは贅沢な不満なので聞き流して下さい。
今回始る前は当然ルネが一身に注目を集め、あら、おまけに親父役がハンプソンだなんて、なかなか豪華じゃないの、と誰しも思ったでしょうが、じゃあアルフレードは誰? カレヤかあ・・・6年間のトラヴィアータ、2年前のタイス(ルネと共演)、一昨年のROHガラ公演で聴いて、伸びのある美声だし声量も立派で素質のある若手だけど、あの硬さはなんとかならないものか、あまりにも一直線でしばらく聴いてると飽きてしまうよ、と私はあまり期待してなかったのに、
これがなんと嬉しい驚きで、若い彼は(30か31)、サナギが蝶になったかの如く、実の詰まった張りのある美声に柔軟さが加わり、それは見事な一流のテノールに成長。そう思ったのは私だけではなかったようで、2回目と3回目はカレヤへの拍手が一番大きかった ですもんね![]()
棚ボタで私は例の代役コンサートでも彼を聴けて、ますますファンになりました。背丈があって歌も抜群なのに西郷隆盛に似たごつい印象がオペラの2枚目役には理想的ではないのが惜しいですが、田舎の資産家のボンボンであるアルフレードには彼の素朴さも良い味かも。
先回の美男子カウフマンとの違いが大きいので慣れるのに時間が掛かりましたが、回を重ねる度にカレヤの方がぴったりのアルフレードに見えてきました。それは演技も歌もカレヤの出来がその度に良くなってるせいもあるに違いないです。
いやー、こんなところに収穫があるなんて、4回も行った甲斐があったとホクホクしたのは彼によるところが大きいです![]()
しかし、この伸びやかな声と声量、ワーグナーもやってくれればいいのに。来年日本で愛の妙薬をやるそうですが、そんな軽いのは他に歌える人はたくさんいるんだからさ、ローエングリンとかのヘビーなのも歌ってくださいよ~
こんなの簡単過ぎ? トーマス・ハンプソン(ジェルモン・パパ)
パパは脇役だけど、見栄えもするしバリトンにしては二枚目声で上手なハンプソンだから、彼のことを知らない人でも「この人はこんな脇役ばかりする人ではなかろう」と思ったことでしょう。
しばらく不調で休んでた彼が(タイスのキャンセルはまだ恨んでる)元気になって戻ってきてくれたのは嬉しいですが、でもこんな老け役じゃなくて、まだ54歳の男盛りなんだもの、テノールの恋敵役でドキドキさせて欲しいです。特に、54歳のハンプソンと50歳のルネはタイスでの恋人同士ぶりがぴったりなのだから、二人でもうしばらくメロメロしてくれるといいなあ。
ともあれ、何度も何度も観ていい加減飽きてるROHのトラヴィアータですが、これだけ高水準のトリオだと、新鮮に感じられ、大満足。
では、明日もう一回だけ行ってきます。









