5月22日、ムスメとSt. Albansという街にAlbanというオペラを観に行きました。
この新作オペラはムスメが小道具を作って参加したもので、それについては→こちら をご覧下さい。雰囲気のある素敵なセント・オーバンスの街の様子は→こちら でどうぞ。
セント・オーバンスという街の名前の由来となったアルバンは医師で、紀元250年頃のイギリス初めてのキリスト教殉教者。アルバンが埋葬されたところにカテドラルが建てられて以来1750年間キリスト教信仰の場になっているというイギリスでも長い歴史を持つ歴史的価値のある場所ですから、ここで初オペラをやろうとすれば、当然題材はアルバンに決まりでしょう。セント・オーバンスは古代ローマとの関連で有名で、遺跡や博物館もあります。
アルバンの生きた3世紀のイギリスはローマ帝国の支配下で、本国では軍人皇帝が次から次へと擁立された混乱期であり、キリスト教徒は迫害されていた時代。
アルバンはある晩(駄洒落~)、ローマ軍に追われていたキリスト教神父を正体も知らずに自宅に匿い、次第にキリスト教の教えに感化されるようになり、神父の外套を着て身代わりに逮捕されたアルバンは、裁判で「私はキリスト教徒になった」と告白し処刑されるという実話とされるお話で、地元民なら誰でも知っている逸話でしょうが、このオペラは、
「アナタ、なに馬鹿なこと言ってんのよ! さっきのは冗談ですって撤回すれば許してもらえるんだからさ、そうして頂戴。アナタが首ちょん切られたら、私と子供二人はどうやって食べてくのよ
」、
と必死に止めようとする奥さんも主役なのがミソで、夫婦喧嘩がテーマと言ってもいいくらい。誰しも奥さんには同情するわけで、ぐっと来る展開になってます![]()
舞台 後ろの席
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作曲 Tom Wiggall/作詞 John Mole/指揮 David Ireson/演出 Beckie Mills/衣装 AnnHollowood (ムスメがお世話になった人です)
Alban Philip Salmon/Claudia (アルバンの妻) Dominique Thiebaud/神父 Paul Sheehan/
ローマ総督 Des Turner/ローマ総督夫人 Louise Mott
音楽
作曲家はテレビや舞台のテーマ音楽で生活してる人で、初オペラらしいですが、ちょっとベンジャミン・ブリテン風だけど、淡々とシンプルでありながら、字幕がなくてもはっきり聴き取れる英語の歌詞ともマッチして、名作とは言えないまでも、私の期待は上回り、今回だけでぽしゃらせるには勿体ないオペラに仕上がっていたと思います。
20人余りのオーケストラも充分上手。
舞台、衣装、演出
壮麗なカテドラルが舞台としては最高なわけだから、セットは不要。ドアや椅子、マーケットの屋台とかの大道具は、もしこれを将来ちゃんとした場所でやるのであれば素人っぽ過ぎて使えないないわよね、という水準ですが、これも手作りの市民参加型らしい温かみが感じられて好感持てます。
贅沢にも 衣装はエミー賞や英アカデミー賞受賞者が担当(ムスメがお世話になったHollowood女史です)したので、作り方自体や柄プリントなど素朴さを残しながらもデザインは洒落ててさすが。これはこのまま使えるでしょう。
演出家もロイヤル・シェークスピア・カンパニーから引っ張ってきて、素人コーラスを上手に統率してもらえました。
パフォーマンス
アルバン医師夫妻を、実生活でも夫婦であるフィリップ・サモン(テノール)とドミニック・ティボー(ソプラノ)が演じたのですが、この主役二人は一流で、とくに奥さんはどこに出ても大丈夫なくらい立派。セント・オーバンスに住んでいたという縁なのですが、よくこんなお誂え向きの良い歌手がいたもので、これが最もラッキーな点でしょう。
ローマ総督夫妻と神父役がちゃんとしたオペラ歌手であった以外は、地元の素人が嬉々として参加させてもらったという感じですが、それだからこそのコミュニティ・オペラ。
アルバン アルバン妻 ローマ総督婦人と神父
作品としても主役数人の水準も、コミュニティ・オペラとしてはとても立派でしたが、設定で問題ありでした。オペラ用臨時席は観光客の邪魔になるし、大切な歴史的遺産であるカテドラルでのオペラ上演は照明設置等が問題視され、当然難色を示されたとのことなので、理想的な環境からは程遠くなるのは仕方ないのですが、
舞台が低すぎてよく見えなかったことと、私がとても不満だったのは、スピーカーの使用![]()
素人歌手の声はマイクなしでは無理にせよ、あんなにボリューム上げなくてもいいのに、舞台から近い席の私ですら、スピーカーからの声ばかりガンガン聞こえたのはやり過ぎ。
4日間毎日の上演、しかも土曜日は昼夜2回というまるでミュージカルのような扱いで、正味90分はそんなに長くないとは云え、本職のオペラ歌手でも声をセーブせざるを得ないわけだから仕方ないとは思うのですが、それだったらいっそ最初からミュージカル仕立てにすればよかったんじゃないですか? その方が広く市民に親しまれること請け合いだし。
というわけで、プレミエはまさにアルバンの幽霊が出てきそうな場所で行われたのは極めて有意義でしたが、次回はできれば環境の整ったホールで、本来のオペラの形態でやって欲しいものです。
ムスメが関与したおかげで、いつもと違うレベルのオペラが観られたし、セント・オーバンスにも久し振りに行けたし、そこの住んでる友人とも会えたし、切符代は15ポンドで私にとってはロイヤルオペラハウスよりも高いと言えますが、貴重な体験でした。感謝感謝。
舞台写真がたくさん載ってるサイトを発見したので、その中から何枚かご紹。














