オペラ三昧イン・ロンドン

3月15日、バービカンでオランダのロイヤル・コンセルトヘボー・オーケストラのコンサートがありました。ちがう演目で2夜連続であったのですが、私は二日目だけ。


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Schumann Piano Concerto
Bruckner Symphony No 9 in D minor

Royal Concertgebouw Orchestra
Bernard Haitink
conductor
Murray Perahia piano


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シューマンのピアノ協奏曲ブルックナーの交響曲9番でしたが、どちらも素晴らしい演奏で、感動的でした。


シューマン(1810-1856)のただ一つのピアノ協奏曲は1846年にライプツィヒで妻クララ・シューマンのソロで初演。私はとても好きなのですが、ピアニストでロマン派のシューマンですから、うんとロマンチックでピアノの華麗なテクニックのこの上もなく美しい曲です。


この頃はすでに精神に異常をきたし初めていたらしいシューマンで、なにかと精神的に苦しんでたのでしょうが、私にはとても若々しい喜びに満ちた曲に聞こえます。


ピアニストのマレー・ペレイヤはこれまでに何度か聴いたことがあり、一流なのに何かもう一つ惹かれるものがなかったのですが、今日は曲自体の魅力もあり、これまでで一番良かったです。


力強さには欠けますが、ピアニッシモはとても綺麗に優しく響き、彼から5メートルくらいの距離にいた私はその恩恵を充分受けました。


しかし、一週間前に聴いてその素晴らしさに酔ったピアニストのアンズネス がもしこの曲を弾いてくれたら、もっと素晴らしいに違いないとつい思ってしまい、アンズネスの澄んだ音色とタッチの正確さが私の頭の中で鳴ってました。そう、ペレイヤは何度か間違えたのです。誰でも間違えるし(キーシン以外は)、取るに足らないことだとは思っても、やっぱりちょっと気になってしまう私です。


でも、ペレイヤの繊細な演奏も捨てがたいので、彼の来年2月18日のリサイタル(バービカン)、2ケ月程前に売り出したときには買ってませんでしたが、幸いまだ良い席が残っていたこともあり、行くことにしました。


オペラ三昧イン・ロンドン


ブルックナーの9番も好きなシンフォニーの一つですが、先月ウィーンフィル が同じ曲をやってくれたときは、「ブルックナーの9番ってこんなだらーんとした曲だったっけ? これではブルックナーが嫌いになりそう」とまで書いたくらい失望してしまったのですが、今夜のコンセルトヘボーの名演奏で、「ほら、やっぱりぐっと来る名曲じゃないの。ブルックナー、好き!」とすっかり挽回しました。(ウィーンフィルは随分遠い席だったため、その良さがわからなかったのでしょうが)


病で死期の迫るブルックナーが最後の力をふり絞り、死の直前まで作曲したこの壮大なシンフォニーは、彼の人生の総まとめであり、結局第4楽章は未完のまま消散してしまったものの(残念!)、心にぐっと迫る重さがあり、特に今日は80歳のハイティンクが指揮者ですから、ハイティンク先生も自分の長い人生にブルックナーを重ね合わせて感慨深いものがあるにちがいなく、聴く側も感無量。


最後は(未完成なので妙な終わり方ですが)静かにまるで老人が天寿を全うして息を引き取るように終わるのですが、ハイティンク先生の手がかすかに震えるのを見て、神など信じない私も思わず手を合わせて祈ってしまいました。美しく年を重ねた哲学者のようなハイティンク先生の横顔も実に良いです。


おこがましいですが、聴いてる間、三分の二は終わった私自身の人生を振り返ったり、これからどう生きるべきかを考えたりして、この偉大な作曲家の人生そのもののような交響曲をいつもと違う味わい深く鑑賞できたような気がします。年を取って死を意識するようになった時に真剣に聴いてみたい、明るさと暗さが交差するスケールの大きな曲です。


そんなことを感じることができたのも、コンセルトヘボーの演奏が素晴らしかったからであり、特に金管楽器が上手で(これがこけるオケが多い)、弦の足を引っ張ることなく、感動を保つことができました。女性が目立ち、日本人メンバーも多いです(名簿で見ると5人)。

オペラ三昧イン・ロンドン

つくづく思ったのですが、私はやっぱりかぶりつき席が好きです。音のバランスは当然偏るのですが、まるでオケの中にいるような気すらして、音を聴くというよりも体中で感じることができるのが生の醍醐味です。打楽器が鳴ると体中にズンズン鳴り響いたりして、あのの感覚がたまりません。


オペラ三昧イン・ロンドン
ハイティンク先生は今年9月にまたロンドンに来てくれます(情報は→こちら )。シカゴ・シンフォニー・オーケストラとですが、私は2日あるうち、モーツァルトとブラームスの方にしました。


80歳にしてはお元気とは言え、今日もカーテンコールで舞台に上がってくるのがしんどそうだったし、指揮台でも時々腰掛けてたハイティンク先生、ROHの音楽監督を辞めてからはあまり聴く機会がないですが、元気にいつまでも頑張って下さいね。



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