ドレスデンの「タンホイザー」はどうしたんんだ、ROHの「道楽者のなりゆき」にも行ったよね。そう言えば、「フィガロの結婚」を過去のと比較するとか言ってなかったっけ?トーマス・アレンのリサイタルもあったんじゃない?


はい、全てごもっとも。

だけど、しばらく仕事も忙しかったんで、アップできなかったんです。お許しを~


で、これらはどうせ大幅に遅れているので仕事が楽になる来週以降の時間があるときに追々片付けることにしますと開き直り、一昨日見たオペラについて先に書いちゃいます。




月17日、ロイヤルオペラハウスにプッチーニのLa Bohemeを観に行きました




これはROHの中でも極めつけの初心者向けオペラで、有名アリア満載の音楽がポピュラーなだけではなく、一昔前の古色蒼然としたセットと衣装が豪華でリアルなんです。


マリア・カラスで有名だったトスカのセットがリニューアルになった今、もうROHで残っている30年以上使っているプロダクションはもうこれだけではないかしら?ヘンテコなのがほとんどの今日この頃、この古めかしさが却って新鮮だったりするし、何度も見て飽きてる筈の私ですら、群集シーンで初めて気が付くこともあります。


詳しいストーリーは以前の記事(→こちら )をご覧頂くとして、一言で言うと、「貧乏な詩人とお針子がパリの屋根裏部屋で出会い恋に落ちるが、肺病で彼女は死んでしまう」という可哀相なお話ですが、人気米TV番組「フレンズ」はこれをヒントにしたのではないかと思うくらい、若い仲間が悪ふざけしたりする明るいシーンも結構あり、暗いばかりではないところもいいのかも。


尚、ラ・ボエームとはボヘミアンという意味で、登場人物は芸術家と言えば聞こえはいいけれど、要するに定職を持たないプータローってことね。清純面したミミだって援助交際する不良だし。



        Composer Giacomo Puccini
        Director John Copley
        Designs Julia Trevelyan Oman

        Conductor Christian Badea
        Rodolfo Roberto Aronica
        Mimì Cristina Gallardo Domas
        Marcello Franco Vassallo
        Schaunard Roderick Williams
        Colline Matthew Rose
        Musetta Nicole Cabell
        Benoit Jeremy White


嫌と言うほど見て飽きている私ですが、後々まで覚えていそうな面白いこともありました


リハーサルで膝を痛めたとかで主役の詩人ロドルフォが、なんと杖を付いていたのです。平らな所はよろよろ動けるものの、階段は無理なので、演出を一部変えてなんとか凌いだのですが、「あーん、あたいのろうそくの火が消えちゃったわん。ねえお隣さん、火を貸してくんない?」と甘い声でノックするミミのためにドアを開けに行けないので舞台袖からミミが登場したりするのは応急措置だと誰にでもわかるのですが、瀕死のミミをベッドに抱いて運ぶところを逆に彼がミミに支えられたのには笑えました。


そこまでして無理に出演する必要があったのかどうかは(代役はたくさんいるだろうに)、ロベルト・アロニカの歌次第なのですが、これがねえ・・

張りのあるクリアな声は私好み。


だけど、まるで怒鳴るような歌い方は一本調子でやたら固い。おまけに高音がぐらぐらして危なかったしいこと。


初めて聞くのでこれが実力なのか今日だけ不調なのかはわからないけど、うっとりと聞惚れる部分でハラハラし通しなのは辛い。それでも、容貌がぴったりなのならまだしも、中年の髭付きデブが杖付いてたら、これはもうジイサンよ。


この役は今までにデブではあっても歌の素晴らしい丸ちゃん (マルセロ・アルバレス)、若くて細い熱血男ロランド・ヴィリャゾン、チビでぱっとしないけど甘い声のラモン・ヴァルガスとか、一流歌手がやってるので、アロニカはランク付けしたらかなり下。


途中から、をCDで何度も聞いて私がベストだと思うロベルト・アラーニャの歌声を思い浮かべていた私です。アラーニャは無理でも、若いテノールに代役させてチャンスを与えてあげればよかったんではないの?でも、彼女の亡骸を抱きしめて「ミミーっ!」と悲痛に叫ぶラストのお涙頂戴はシャキーンと締めくくってくれたから許してあげよう。



ROHでは「ラ・ボエーム」「マダム・バタフライ」「トゥーランドット」に出てくれたソプラノのクリスティーナ・ガラルド・ドマス、丁寧な歌唱の蝶々さんは素晴らしかったので一番の期待は彼女だったのですが、声が濁り気味でがっかり。


好調だったらこんなじゃない筈なんだけど、そう言えば数年前のボエームもこんなだったような。丸ちゃんと競演したDVDのボエームでは良かったので、ミミは合わないってことはない筈だけど。残念。


でも、今日の歌手の中では知名度が一番上の彼女らしく、コントロールが効いて変化に富んだ歌唱はさすが。口避け女というか、明るい般若のお面のようなあの大作りな顔で細やかに演技もしてくれて、余裕と貫禄。

だけど今までのROHミミで一番ぐっときたアンジェラ・ゲオルギューには遠く及ばず、の今日のドマスでした。




一番重要な脇役である画家のマルチェロ役のフランコ・ヴァッサロは可もなく不可もなく、文句もないけど魅力も無し。アロニカと容貌も声も似過ぎてたってっことは彼もおじさんで、ぱっとしないマルチェロで、すぐに忘れそう。


男好きでちゃらちゃらしたマルチェロの恋人ムゼッタには思い切り明るい声でぱあーっと歌ってもらいたいのに、カーディフのコンテストの優勝者であるニコール・カベルの声はくぐもってて暗い。でも、個性的な派手な美人と言えなくも無い容貌でムゼッタらしい華を添えてくれたので存在自体はマル。



哲学者コルリーネのマシュー・ローズはROHにはお馴染み過ぎ。飽きたというほどの個性もないけど、大柄なので目障り。上手ならいいけど、折角の聞かせどころの「外套ソング」、うんと低く感傷的にやってもらいたいのに、パワー不足で軽かった。

貧乏アーチスト4人組のうち3人がデブくて動きも鈍く老け気味だった中で、一人だけほっそりと軽やかで明るく若者らしかったのは音楽家ショナールのロデック・ウリィアムズ。こないだの
鈴木雅明さんとトビー君のコンサート にも出てたけど、若いバリトンの脇役としてROHにももっと出してあげて下さい。


指揮者Badeaは知らない人ですが、ちょっとテンポが遅かったような。


しょぼん以上、このオペラに初めて接した人は充分楽しめたでしょうが、目的は歌だけの私には不満の残るパフォーマンスでした。ま、大して期待もしてなかったのでいいですけどね。


でも、今回は4回だけの上演で、秋にまた4回やるのは今から楽しみにして切符も2回分確保してありますニコニコ


詳細は→こちら すが、ほらHei-Kyung HongとWookyung Kim(リゴレット で素晴らしかったキムチ君)の韓国コンビに、芸達者Cマルトマン、前回と同じ可愛いAヴィノグラドフ、明るい大声がムゼッタそのもののアナ・リースなので皆楽しみ。今回のほっそりショナールも同じ。

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