真ん中のトビー君の隣でストライプのスーツなのが演出家のカーセン




6月23日、ENOCandideの初日を観に行きました。翌日からドレスデンに行ったりしてバタバタしてたので記事がこんなに遅れましたが、せっかく愛するトビー君の晴れ姿を近くで見ようと最前列ど真ん中で75ポンド叫びと大奮発したので、今更ですがあれこれ言わせて頂きましょう。



この頃ENOは時々オペラばかりではなくミュージカルも上演してて、私は観に行ったことがないのですが、これもその一環なのでしょう。

でもCandideはわかり易い娯楽性重視のそこらそこらのミュージカルと一緒にするのはまちがいで、オペレッタ或いはコミック・オペラと呼んでもいいし、ユニークな形態です。序曲だけはとても有名で、クラシックのコンサートでも時々演奏されます。


レナード・バーンスタインで一番お馴染みなのは「ウエストサイト物語」でしょうが、キャンディードはその一つ前の作品で、1956年の初演はやはり失敗だったようです。内容の高尚さとジャンルが中途半端なのが原因ではないでしょうか?


原作が18世紀フランスの啓蒙思想家ヴォルテールの「カンディード或いは楽天主義説」ですから、ミュージカルの内容としてはちょっと突拍子がなさ過ぎると言うか、風刺ですからすぐには意味がわからず・・・。

なんてったってヴォルテール、きっと深い意味があるのでしょうが、それはいつか余裕のあるときに考えることにして、ざっとストーリーを書くと、


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親戚の裕福な家で、超楽観主義者の家庭教師や従兄妹と幸せに暮らしていたキャンディード、ある日そこの娘クネゴンデといちゃついてるところを見つかって追い出され、兵隊に。その後はこれでもかこれでもかという出来事が続々と起こります。


軍隊からの脱走による死刑宣告、戦争勃発による大量殺戮、再会した家庭教師と一緒に新大陸に向かうが船が難破、元の陸地に辿り着くと大地震。なぜかキャンディードと家庭教師が災害を起こしたとして絞首刑になるが運よく生き延び、戦争で死んだはずのクネゴンデと再会。彼女のパトロン二人を態度が気に入らないからと射殺し、二人で新大陸へ逃亡するが、二人はアメリカの移民局で離れ離れにされ、クネゴンデは無理矢理移民局員の妾に。


遭遇した宗教団体の中にいたクネゴンデの兄と再会したキャンディードは彼女との結婚を反対されて兄を射殺し、逃げた所がエルドラド(黄金郷)で一躍おお金持ちになるが、悪い奴らに騙されてお金を取られるはボロ船を売りつけられるは。その船が難破してお金が海に浮いているのを拾って再び金持ちになったキャンディード、今はカジノで働くクネゴンデと再会。だが彼のお金を盗もうとするクネゴンデの正体を知ったキャンディードは落胆。

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どんな事が起こっても楽観主義を貫く家庭教師と、新大陸で会った超悲観主義者の間で揺れ動くキャンディード、最後は人生は楽観と悲観の中間なのだろうと悟るという内容ですが、波乱の人生を始終屈託のない笑顔で明るく淡々と乗り切るキャンディード。凄いニイチャンやな~。





どうです、舞台化するにはやりがいのあるチャレンジでしょ?


人気演出家のロバート・カーセンは、これを1950~60年代のアメリカにして、舞台全体をテレビ画面に設定し、当時の画像も駆使して、次から次へと変るウィットに富んだセットと衣装で、とても楽しい舞台でした。


このプロダクションはパリのシャトレ劇場ととミラノのスカラ座ですでにやっていて映像にもなってるそうですが私は見たことがなかので最前列でずっと、「おぉ~っ!、アハハ!」と大喜びできました。



    

  

compower Leonard Bernstein

lyrics Berstein, Stephen Sondheim, Lillian Hellman他

conductor Rumon Gamba

director Robert Carsen


男の子Candide Toby Spence

女の子Cunegonde Anna Christy

モグラVoltaire, Pangloss(楽観主義者), Martin(悲観主義者) Alex Jennings

Paquette(女中) Mairead Buicke

Maximilian(兄) Mark Stone

ペンギン船長、移民局長他 Bonaventura Bottone

謎の老女 Beverley Klein



音譜パフォーマンスカラオケ


マイク使用で歌手の負担はミュージカル程度なので毎日でもできるし、週末は昼夜2回公演まであり。20日間で15回上演というのは本格オペラでは不可能だし、ENOを支えるファンが急に増えるわけじゃなし、案の定、切符はかなり売れ残っていたみたいです。いくらミュージカルが盛んなロンドンでも、普通のミュージカルファンがこれに行くとも思えないしね。


男の子私のお目当てはトビー君だけで、彼が出てなかったら果たして行ったかどうか。

行ったとしてもこんな高い席じゃなくて上の方の遠い席でしょうから、トビー君のおかげで楽しい舞台を楽しませてもらいました。お財布はかなり痛みましたけどね。ENOはROHのような安くても舞台から近い席がないのが嫌しょぼん


さて、出ずっぱり大役のトビー君ですが、この役にぴったりかどうかは比べるものがないのでわかりませんが、あの爽やかな童顔笑顔でコメディも上手に演じたし、いつもの清らかな歌声で、私の惚れた弱味のえこ贔屓評価だけなく、文句ない出来だったと思います。


せっかくこんな近くに座ってるのにマイクを通した声になってしまうのはすごく勿体無いけど、それでも生声も充分聞こえてきたので仕方なく我慢しましょう。時々はマイクが切れて生の声だけにもなったしね。


しかし、多分これと重なったのが理由でROHの「道楽者のなりゆき」に出演できなかったのではないかしらと思うと残念でたまりません。「道楽者」の方に出てもらいたかったですよ、わたしゃむかっ



女の子クネゴンデのアナ・クリスティは聞いたことのない名前でしたが、この役でパリでもミラノでも出演したし、ちょっと前にはENOの素晴らしいルチアだったとのこです。


コロラチューラの声転がしもあるし、マリリン・モンロー風の踊りもあるのでキャンディードよりも難しい役だと思うのですが、演技も含めこなれた上手なパフォーマンスで、立派にミュージカル女優にでもなれるでしょう。漫画チックなおたふく顔も庶民的でキュートだし。本格的なオペラで生で聴いてみたい人です。


モグラヴォルテール他2役を演じたアレック・ジェニングスは、演劇畑では名の知れた人なのかも。歌も一応歌えて、ミュージカル「マイ・フェア・レディ」とかに出てたようですがそれはぴったりでしょう。ヴォルテールのお喋り部分が多すぎるのは不満でしたが、彼のゆとりあるパフォーマンスは文句なし。


  

ペンギン中年コミカル役を一手に引き受けているような小柄なイギリス人のボナベンチューラ・ボトンズの芸達者ぶりにはいつも感心するのですが(ENOの美しきエレーヌ とか)、今回も宗教裁判長、船長、移民局長をマルチに歌い演じて上手いこと!いつかちゃんとアリアを歌うのも聴いてみたいテノールです。



お兄さん役のマーク・ストーンも女中役のMairead Buickeも上手でした。ただ一人、謎の老女のビバリー・クラインが、高音と中音の境い目がぎこちないのとあまりにわざとらしい芝居だったのとで私は嫌いでした。


キャンディードはミュージカル歌手が演じることもあるのですが、難しい歌も多いので、やっぱりオペラ歌手がやった方がいいでしょう。


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