大変遅くなりましたが、パリのガルニエで9月23日に観たリヒャルト・シュトラウスのカプリッチョです。


知り合いから行けなくなった切符を譲って頂き、前から一度行ってみたかったガルニエに行けるということだけで嬉しくて、特にこのオペラが観たかったわけではないのですが、着物イベント としては最高だったし、楽しい一日でした。



       席からの眺め                    開始前の舞台


リヒャルト・シュトラウス(1864-1949 )のオペラは、今までROHで「薔薇の騎士」、「エレクトラ」、「影のない女」、「アラベラ」、「ナクソス島のアリアドネ」を観たことがあり、もうすぐ「サロメ「もあるので、ROHのレパートリーには入っていないと思われるこのカプリッチョで主な代表作はほぼカバーしたということになるでしょうか。


1942年初演の彼の最後のオペラであるこのカプリッチョ、オペラではなく「音楽会話劇」なんだそうで、たしかに最後のヒロインの長い独り言シーンや歌手が歌うシーン以外は、歌というよりオケ伴奏のついた会話シーンがほとんど。


「音楽と言葉」、どちらが重要かというのが会話の内容で、同時に若い未亡人の伯爵夫人をめぐって詩人オリィヴェエと作曲家フラマンが恋のさやあてをし、彼女がどちらの男(すなわち音楽か言葉か)を選ぶかがテーマなのですが、結局どちらが選ばれたのかは私たちにはわからず、という当然のなりゆき。

音楽と言葉、というのは歌曲をたくさん作曲したRシュトラウスにとっても永遠のテーマだったそうですが、そりゃどちらかを選ぶなんてできないでしょう。

一幕だけとは言え、2時間半という長時間にわたり音楽か言葉かを議論するわけですから、さぞ興味深い会話が繰り広げられたにちがいないのですが、ドイツ語のオペラをフランス語の字幕で観るわけですから、悲しいかな何を言っているのかさっぱりわかりませんでした。


殺人場面もラブシーンもなく、会話の中身こそが大切なこのオペラでそれは致命的。でも、たとえざっと予習をしても、その時に何を言ってるかはわからないでしょうし、これはもうどうしようもなかった、と。それに、ベストのDVDはこのパリのガルニエ版なので、予習としてこれを先に見ちゃうと、ビジュアル的楽しみがなくなっちゃうので、今回はそれはしたくなかったです。滅多に座れない良い席でもあり、今回に限りビジュアルが大事でしたから。


おかげで、言ってる意味は理解できろhなかったものの、何度か変わるシーンに目を見張ってとても楽しめました。奥に広がる二重構造のセットも多い舞台だったので、ちゃんと全部見える正面の席はありがたかったし、ガルニエの内装と一体感がある点も二重丸。


折しも、ロバート・カーセンはちょうどROHでグルックの「トーリードのイフィジェニー」でもやってる演出家で、私はすでにそちらも観ていたので、興味深い比較にもなりました。

かなりちがうのですが、私はどちらも好きです。




元の設定は1775年で伯爵家の邸宅が舞台なのですが、このプロダクションは1950年代あたりに読み替えてあり、現代服で登場するのですが、伯爵夫人は時代を超越したドレス2着で通します。2着目のドレスは思いっきり膨らんだスカートにスパンコールがどっさり散りばめてあってチカチカと夢のようにゴージャス。


ナチス時代のまっただ中だった1942年にミュンヘンで初演されたというのが驚きですが、そんな時代だからこその美しいものを求める現実逃避でしょうし、シュトラウスにとっては何よりも大切な音楽と言葉という世界に耽ったのでしょう。それを思うと一見軽いテーマのこのオペラが美しいゆえに限りなくはかなく悲しいものに思えてきます。

カメラ カーテンコール。奥の間が見える席は限られてるでしょうね


演出 Robert Carsen

指揮 Hartmut Haenchen


伯爵夫人  Solveig Kringelborn

伯爵(伯爵夫人の弟) Olaf Bar

フラマンド(作曲家) Charles Workman

オリヴィエ(詩人)   Tassis Christoyannis

ラ・ロシュ(演出家) Jan-Hendrik Rootering

クラリオン(伯爵が恋している女優) Doris Soffel 


ヒロインのソルヴェイグ・クリンゲルホーンは金髪ノルウェー美人で、数年前にROHの「さまよえるオランダ人」のゼンタでは役柄どんぴしゃの清純で綺麗な人だという印象が強く残っています。

今回、最初の数分間、伯爵夫人が舞台のパフォーマンスを見ているという設定で客席に座っていたのですが、それが私たちから1メートルちょっとの位置だったので、しっかり観察したところ、ちょっと小じわがあるものの、すらっとして品のある美しい人です。


今回も見目麗しいイメージぴったりの伯爵夫人で、最後の長いソロシーンこそ「ああ、ルネ・フレミングだったらさぞ華があって素晴らしいのに」と思ったものの、会話シーンでは充分歌も芝居も上手。


偶然にも昨日テレビでバーデンバーデンでの「ローエングリン」をやっていて、彼女が主役のエルサでした。


Rシュトラウスは女性の声が好きだったそうなのですが、これは珍しく男性の方がうんと多いオペラで、その中でも伯爵夫人に求愛する二人は歌も芝居も(できればルックスも)も甲乙つけがたい出来であって欲しいものですが、それはのは望めないのはわかっていて、案の定、全然そうじゃなかったんです。


ということは、一人は駄目でも一人は素晴らしいわけで、二人ともペケっていうよりはずっとまししょ?

音楽家フラマンドのテノールは、アメリカ人のチャールズ・ワークマンですが、癖のない素直さが素敵で、おまけに(今回はビジュアル重視なので、おまけ以上ですが)、長身でハンサ(ケビン・コスナー似)。伯爵夫人とは美しいカップルでした。


← こちらがその素晴らしい方アップ


片や、詩人オリヴィエ役は写真も載せたくないような魅力のないバリトンでした。見かけだけじゃなくて、声がちっちゃいの。これなら最初から勝負ありですよ~だ。彼が歌ってる間は退屈で退屈で、私がちょっとウトウトしちゃったのもこいつのせいだ。ギリシャ系でしょうか、タイプしにくい名前だし、無視。


男性の中で名前を知ってたのは伯爵役のOlaf Barだけですが、バリトンの中では輝いてました。ラ・ロシュ役の百貫デブJan-Hendrik Rooteringも体型に見合った立派な声量。


全体としてはまあまあの水準ってとこでしょうか。


ドキドキでも、初めてガルニエでオペラが観られたので、これは忘れられないオペラになるでしょう。2月に行ったバスチーユのどでかさに比べれば、このガルニエはコベントガーデンよりも二周回りこじんまりしてて、だからこその贅沢な空間でした。見上げれば真上にシャガールの絵があったし、気分は最高にゴージャス。


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