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過去の同シリーズ
打楽器の運搬のために車を運転することが頻繁にあるが、個人的にはできるだけ電車移動がしたいというのが本音だ。
というのも学生の頃に腰を痛めた時期があり(打楽器奏者には多い)、ほぼ完治した今でも長時間同じ姿勢で座り続けていることには若干の抵抗を残している。更に都内は特に道が混雑し、到着予想時間が読めずヤキモキすること多数!
体にも心にも優しい乗り物、それが日本の人口過密都市・東京が誇る電車という通勤ツールなのである。
そんな素晴らしき文明の利器である電車に乗り込んだ、某ホールからの帰り道。
お尻を触られている。
そう気付いたのはいつからだったろうか。
スマホを入れている右後ろのポケット越しに、電車の揺れに合わせて擦られるような指先の感触があるのを覚えてしまった。
こ、これが噂に聞く痴漢というやつか…!
車内は満員どころかちらほら空席も目立つ程度のスカスカ具合。俺は冒頭に述べた理由によって立ったままの状態である。
立ち位置はドアを入ってすぐ左、座席の端にある壁と扉の手すりの隙間という大人気スポットで、座席の壁に体の右側を寄りかけるように立っていた。つまり、この指を持つ人物は俺の真横に座っているということ!
犯人は…あなただ!!
脳内で鋭いコナ○君の声を再生しつつも、ビクビクしながら首をほとんど動かさずに目線を下方へ。
そこには唾の広い帽子をかぶり顔の見えない小柄な女性が。
わぁお計画犯でしたか!
しかも夏のクソ暑い中、車内では空調が効いているとは言え長袖にロングスカートという「全身を隠した」装いである。
ど、どうしよう…。
痴漢の被害に合った時、堂々と被害を叫べる女性は少ないという。
意外と俺もそんなナイーブな感性の持ち主だったんだなぁとわけのわからない感慨に浸りながら、お尻を触り続けられること約20分。
約20分!
当たっていたのが指先だけだったのが次第に掌全体で押されるような感覚になってくる犯人の大胆な行動に身をよじることもできず、ようやく終点に到着。
終点だ!解放だ!
と安堵したその時!!
むんずっと掴まれる俺の尻!!
ひぃわぁぁぁぁぁ!!!
後ろの女性が俺の尻を掴んだまま「ヨイショっ」と立ち上がり!!!
ついに犯人がその顔を明かす!!!!
おばあちゃんだった。
たぶんスマホの感触を座席の手すりと間違えてたのね…。
謎は全て解けた。
完。