第167回「打楽器うるさい!その原因と対処法」 | 打楽器奏者・嶋崎雄斗のプレイヤー日記~折れない心と折れていくスティック~

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微妙に前回の続き。





全ての楽器の中で最もダイナミクス(強弱)の幅が広い打楽器。そんな打楽器だからこそ、合奏の中で「打楽器うるさい!」「もっと音量落として!」と注意されることも多いようだ。

確かに打楽器のせいでメロディが聞こえないような事態になってしまっては大問題である。せっかく練習して上手く吹けるようになったのに…打楽器のやつらどうしてくれよう。



しかしながら、打楽器が音量を抑えすぎると曲全体のメリハリが薄くなってしまうのも事実。

音量の幅は広いままに、管楽器の邪魔をしない派手な演奏をできるのが理想である。




そこで今回は単純な音量以外に「打楽器がうるさい」と感じる原因と対処法について、吹奏楽部でよく見かける4項目をピックアップしていきたい。











管楽器よりも先に盛り上がらないで!
【ロールのクレッシェンドが早すぎる】

一番多いのがサスペンドシンバル。他、ティンパニやバスドラムやスネアなど「ロールでのクレッシェンド」がある楽器にありがちな課題。

管楽器がまだクレッシェンドしきっていないのに打楽器だけ既にフォルテになり搔き消してしまっている…なんて現象を頻繁に見かける。

例えば1小節でクレッシェンドの場合は2拍までは我慢して3拍目からしっかりクレッシェンドを付ける、2小節でクレッシェンドの場合は1小節までは我慢して2小節目からしっかりクレッシェンドを付ける、など、管楽器の盛り上がり方や場面によって使いわけよう。

クレッシェンドの終着地点だけ他の楽器よりも大きいくらいならむしろ心地良い。前で聞いている指揮者の先生も「うるさい」とは感じないはず。









基礎練習から気をつけよう!
【左右の音量バランスが違う】

曲全体の核となるスネアやティンパニやタムタムのリズム。これが「右手だけ大きく聞こえる」など左右の音量バランスが悪いとそこだけ突出して聞こえてしまい、そんなに強く叩いていなくても騒音感を与えてしまう。

ゆっくりなリズムなら片手だけで演奏したり、速いテンポのリズムなら手順を揃えたりするだけで解決することもあるので、自分にとってどうしたら良いのか試してみてほしい。

どうしても上手くできない場合は基礎練習から丁寧にやり直そう。

ちなみに左右のバランスの悪さはロールが綺麗に聞こえない原因のひとつでもある。









手首の使い方、できてますか?
【スティックの跳ね返りが弱い】

スティックを上から下に叩きつけるような奏法では、力加減のコントロールが細かくできずに音色が汚くなりがち。ティンパニの音程よりも打音が目立つ、シロフォンやグロッケンがキンキン鳴る、などといった大きな原因のひとつがこれだ。

そしてほとんどの日本人は自然と和太鼓などに適したこの奏法になってしまう(和太鼓を演奏する場合はそれでOK!)。

言葉にすると難しいが、「打面を叩いた後にスティック(マレット)をすぐに跳ね返す」といった奏法ができれば音色が軽くなり、無駄な雑音が減る。

更に素早い動きの時にもスティックが絡まる心配もなくなり一石二鳥である。









コーチや楽器屋さんに相談しよう!
【楽器の状態が悪い】

張りのないヘッドのまま叩くスネア、音程がハッキリ聞こえないティンパニ、糸がボロボロで禿げ散らかしているマリンバのマレット…これではどう頑張っても良い音が出るわけがない。そんな状態でコンクールに出ている学校の本当に多いこと!

少しでも気になったらチューニングや楽器修理など、普段から慣れていないとできないこともあるので、ある程度専門の知識がある方に相談してみよう。

一応注意しておくと、知識のないままシンバルを金属クリーナーで磨いたり、ティンパニの皮を張り替えたりすると、それ以降全く使えないほどの致命的なダメージを負うこともある。チューニングや修理に関しては自信のある人以外は自分で何とかしようと思わないこと。

ついでに、管楽器も軽く水洗いするだけで音がめちゃめちゃ良くなる事もある。大事な本番の前だけでも「楽器掃除の日」はあった方が良いかも。











以上を注意して練習するだけでもかなりの「打楽器うるさい」問題が解決するはず!

純粋に「管楽器の音量が足りない(部員が少ない)」といった場合ももちろんあるだろうが、そこを上手くコントロールするのが『第二の指揮者』と呼ばれる打楽器の大切なお仕事だ。

とりあえず小さく叩くか…と諦める前に、学生の皆さん是非お試しあれ!