連絡の取れなくなった人と夢のなかで会う
わたしは8年ぐらい前から、夢のなかで知り合いと会っている、実際に現実のなかで会っているように思えるぐらいリアルな夢を見るようになりました。あまりにも鮮明で、強烈な印象を残すので、ほんとうに夢のなかで会ってるんじゃないか?と思うようになりました。そういう夢のなかで会う人は、頻繁に顔をあわせている人ではなく、もう連絡先がわからなくて連絡を取りたくても取れない、どこか心のなかで引っかかりが残っている人たちです。その人に伝えたいことについて強く考えている(想っている)と、夢にその人が出てくるという感じなのです。今日はそのうちのひとりと、夢のなかで会ったことについて書いてみます。
わたしがまだ高校を卒業して間もないころ、アメリカでホームステイをしたことがあります。そのステイ先は母子家庭で、15歳の女の子はテスという名前でした。彼女はとてもシャイで、あまり自分のほうから話しかけてきません。わたしはなんとなく、彼女は自分を好きじゃないんだ、と思っているところがありました。そして、わたし自身もまだまだ英語がろくに話せないものだから、ふたりの間にはあまり会話というものがありませんでした。でも仲良くなりたいという気持ちはあったのです。
そんなある日、テスの友達が家に泊まりに来て、わたしはどこか嫉妬してしまったのだと思います。テスと彼女の友達とわたしと3人でご飯を食べる間、わたしは感じの悪い態度を取ってしまいました。すると、テスが「だれの家?」というようなことを言ったのです。そのことを聞きつけて、夜間の仕事に出ようとしていたホストマザーがわたしに謝ってきました。
ホストマザーが仕事に出たあと、わたしは家を飛び出しました。家族も親戚もいなく、まだ知り合って2ヶ月ぐらいしかたってないような人ばかりで、言語の壁や文化やコミュニケーションの違いに戸惑い、そのときのわたしは一杯一杯でした。
すでにそのころにはホームステイ先を変えたいという思いがあり、1週間ぐらい前に一緒に食事をした新しいステイ先の人のところに転がりこみました。そしてそのままそのステイ先に移ることに。2、3日後、新しいホストファーザーと自分の荷物を取りに、元のステイ先に戻りました。
次々と自分の荷物を部屋から運び出すなか、テスは「なにか手伝うことある?」と聞いてくれました。あれだけシャイな彼女が、彼女なりに精一杯の勇気を出して言ってくれたひと言でした。家を飛び出し、そのまま新しいステイ先に留まることを決めたぐらい、怒っているわたしに声をかけるのは、ほんとうに勇気のいることだったと思います。でもわたしは頑固でプライドが高かったため、「ノー!」と言ったきり。ほんとうにひどい別れ方をしてしまったのです。
あのあと、テスはお母さんにひどく怒られたと思うし、自分がきっかけでステイしている生徒が家を出て行ってしまうというような出来事は、相当、いろんなことを考えてしまったと思います。彼女はまだ15歳の女の子でしたから。そしてわたしもまだまだほんの子供でした。
それから5~6年がたち、「わたしはお客様気分でい過ぎたのだ。たくさんのことをしてもらっていたのに、当たり前だと思う感覚が強すぎた。」と後悔し、たくさんの向こう見ずで自分勝手な言動や考え方にたいして、謝りたくてしかたなくなりました。でももう連絡先がわかりません。
そんな後悔の気持ちを持ち始めてから少しして、あるとき、テスが夢に出てきたのです。顔をあわせていたときよりも成長している感じでした。とても鮮明で、まるで現実のように感じられるような夢でした。わたし達はなんの言葉もなく、ただそっとハグをしました。そしてテスは二階への階段を上がって行ったのです。
その夢を見てから、気持ちが静まりました。お互いの気持ちが伝わったような、喉に引っかかっていたものが取れたような感覚でした。お互い精神的に成長して、分かり合えた部分があったのだろうと思います。彼女もあの夢を覚えているに違いないと、わたしは信じています。