サウロ「フゥ、ここが城の最上階か。嫌な雰囲気をひしひしと感じるよ。」
リヒト「ええ、私も感じています。なにが襲い掛かってくるか分かりません。皆さん、周囲に警戒してください。」
[ヨシュカが冒険者に近づき、耳打ちする]
ヨシュカ「…闇竜フィンスダンの姿が見えませんね。どこへ行ってしまったのでしょうか…?」
冒険者[考えるエモート]
[地鳴りがする]
リヒト「現われたか!しかし一体どこから…!?」
「よう、随分いい格好になったじゃねえか リヒト」
リヒト「…なんで。」
リヒト「なんで君がここにいるんだ…。ケルトイ!」
サウロ「ケルトイ、その姿は一体…!?」
ケルトイ「…なんだ、あんたも来てたのかよ。この格好?あぁ、こいつはスピカと天竜ウラドゥームからの施しもんさ。長寿の竜と神の力を受け継いだ俺は神に等しい存在になったんだよ。」
リヒト「神?神だって!?」
ケルトイ「笑っちまうよなあ。神を憎んでいた俺がどういう訳か神になっちまうなんて…。けどまあ、あいつらのような姿にならなくてよかったぜ。あんなのと同じにされるなんて俺は死んでもごめんだからな。」
サウロ「ケルトイ…ピュリースがここにいたからもしかしたら君もと思っていたけれど…。あの子は一緒じゃないのか?」
ケルトイ「…あの子じゃねえ、スピカだ。スピカは俺の中にいる。」
サウロ「…彼女は、救えなかったのか。いや、君が手に入れた神の力というのはもしかして…。」
ケルトイ「スピカと天竜は、俺に力の全てを託してくれた。俺はあいつらの為にも、この力で世界を無に還す!スピカは最後まで人の為に尽力した。それに比べて、人間は、神は!相手の都合を考えず他人を傷つけ、次から次へと過ちを繰り返す。挙げ句の果てに、お前は神に命じられるまま自然と共に生きる竜を大地へ縛りつけ、自然の秩序を破壊した!遅かれ早かれ、この世界は終わりだ。それならいっそ、俺の手でこの世界を白紙に還す…!」
ヨシュカ「白紙に還す…!?」
冒険者[考えるエモート]
ケルトイ「俺が手に入れたのは記憶を司る力。記憶を与えるのも、奪うのも思うがままだ。俺はこの力でこの腐敗した世界の記憶を全て吸収し、この汚れた世界を無に還す!」
リヒト「ケルトイ、その考えは間違っている!神の力を悪用するな!この世界はまだ立て直せる!竜を封印する事さえできれば、加護を失ったこの世界もまた昔のような美しい世界を取り戻せるはずなんだ!」
ケルトイ「その考え自体が間違ってるんだよ!」
ケルトイ「竜は自分の縄張りを守り、モンスターたちの動きを抑制していたんだ!だけど、竜が消えた今じゃあ、モンスターがせきを切ったように暴れまわっている。それでもお前は自分の行いが正しいって言えんのか!」
リヒト「そんな…!私は今まで、神が正しいと思って…。」
ケルトイ「…リヒト、これは絵本の中の物語じゃあないんだ。竜は悪じゃない。お前は勇者になれない。お前なら分かるだろう?これ以上、竜たちを傷つけるな。そうしたら俺だって…。」
リヒト「…違う!違うぞケルトイ!君の言っている事は全て嘘だ!ソフィス様は竜を封印すれば、世界の平和は守られると言っていた。皆も…スピーシア様もきっとそれを望んでいる!私は神の、正義の名の元に、悪を滅ぼす!そして私が、この世界の勇者になるんだ!」
ケルトイ「…お前は昔からそうだったな。夢みたいな話が大好きで、考えが幼稚で単純。神に英雄と担がれ浮かれやがって…。」
ケルトイ「…もう俺たちは昔には戻れないんだな。」
ヨシュカ「ケルトイ…。」
ケルトイ「上等だ!俺の邪魔をするなら、先にお前から始末してやる!」
リヒト「残念だよケルトイ。君に剣を向けたくはなかった。」
ヨシュカ「どうしよう…ボクたちはどちらに味方すれば!?」
[選択肢]
①冷静になれ
②落ち着け
[①も②も同じ会話]
[選択肢]
①ここは戦うしかない
②…隠れていて
[①も②も同じ会話]
そなたは人間の身でありながら、人智を超越した力を手に入れ、竜たちと結託しこのイルーナを脅威にさらした。人理に背いたその罪、身をもって償ってもらうぞ。」
リヒト「…!」
ケルトイ「知っているぞ、お前のしでかした暴挙の数々を。お前は神々の頂点に立ちながら義神オブリガウスと戦神オリティウスの争いを止めなかった。それどころか、その戦争に乗じて、秀でた力を持つ人間…神への信仰を妨げる可能性を持つ実力者たちを、刺客を使って次々に殺めていった。その証拠に、お前は戦争に参加しなかった勇の女神グリーシアを神の地位から降ろした。自分の地位を確立させる為に、意に沿わない奴を排除したんだ!」
アルマス「……。」
ケルトイ「リヒトに竜たちを封印するよう指示したのは、竜から余計な知恵を与えられぬよう、自分に都合がいい完璧な箱庭を作り上げる為だろう?あわよくば、戦争で生き残った俺やリヒトが竜と相打ちになる事を望んでいた。違うか!?」
アルマス「…余は、とんでもない思い違いをしていたのだ。この世は全て、創造主である余の思い通りになるのだと…。だが、現実は違った。スピーシアは自害し流された涙から様々な人種に変化し世界は余の思いもよらぬ方向へと進み始めた。余は気付いたのだ。世界は支配するものではなく、見守り、愛でるものだと。その事に早く気付いていれば、スピーシアは死なず、そなたもこのような事を考えなかったはず…」
ケルトイ「やめろ!今まで散々好き放題しておいて、悟ったロを叩くんじゃねえ!どれだけの人間がお前に助けを求めたと思っている?どれだけ多くの声を無視した?お前はそうやって表面上で反省した気でいるが、弱者をあざ笑い人を蔑む本質は変わらないんだ。本当の事を言えよ。自分の手のひらで人間が戦い、苦しむ姿はさぞかし滑稽に見えただろう?なあ!?」
リヒト「いい加減にしろケルトイ!世界を創造した主神がそんな事をする訳がない。嘘にしても度が過ぎる!」
ケルトイ「……そうかよ。」
アルマス「これでそなたの野望も終わりだ。さらばだ魔神ケルトイ!」
サウロ「なっ!?」
ケルトイ「フィンスダン!?チビ共も!?」
フィンスダン「ここは退け!お前がここで倒されてしまえば、我らの悲願は果たされない!」
[選択肢]
①一人じゃ決められない事もある。
②笑わない
[①の場合]
サウロ「…ありがとう。」









