高校生の頃、「TOY」という漫画を夢中になって読んでいた。
今となっては、何がそんなに面白かったのだろうかと思いもするが、最近、その漫画に出てくるニヤという女の子みたいな女の子に会った。
年の頃も漫画の中のニヤと同じくらいだ。学校に行かず、誰とでも打ち解け、ショートカットで一見男の子と見紛う風貌や独特なファッション、一人で行動するところまでそっくりだと思った。
その漫画を読んでいた頃、私は地方の小さな町に住んでいたから、漫画の中の人たちは漫画の中だけのことで、そんな人たちがいると実感することなどなかった。
少々大人になって、大人の登場人物たち、バンドマンやその周りにいたような人たちは、たくさん見るようになった。でも、ニヤには会ったことがなかった。
ニヤみたいな女の子は、よく知らない子だけれども、目を見ると、怯えや好奇心や防御心や猜疑心や人を見分ける勘や人にかわいがられる術みたいなものが全部詰まっているのが見て取れた。
全部、計算などしてないというのも伝わった。それだけに、途中で私も躊躇してしまったのだ。
下手なことを言ったり、下手な表情をしたら、心を閉ざされるだろうなと感じたからだ。
だいぶんな大人になった私も、こんな魅力的な子に心を閉ざされるのは嫌だな、と思った。
だから自分の心が純粋な感じになった時に目を合わせようと思った。
歯医者に行って、「舌を下げてください」と言われると、どうしても緊張して上に上がってしまうのと同様、意識するとうまくいかない。やむなく、正面に立たず、横に立っておやつを渡したりした。
日ごろSNSやメールなど、文字での意思疎通は危険だと気をつけている私だったが、こういう状況下では有効だった。ニヤみたいな女の子に、会えてよかったと伝えることができた。