ウサギの付箋
けいちゃんはグレーだよねと噂する保育士三人傘をひらいて
イツモオツカレサマデスとくり返す園長理事長はイスの形だ
児相行き書類を三枚仕上げたらみんなでポムの樹オムレツ食べよう
力ずくに取り上げられる新品の園児の声とふわふわうさぎ
「児童発達心理学」に挟まれてウサギの付箋はひとりで眠る
晴天の朝に開いたパンジーと雨天のパンジーは同じパンジー
慣れていく叩かれてる子やせてる子すり傷だらけのけいちゃんの顔
蔦の葉がぐいりぐいりとめり込んで立ったまんまの樹木は腐る
保育士になって初めて知ることも知ってしまえばただの雨漏り
リビングに落ちたピンクのレゴを踏みギャオンと泣いた日はいつだろう
髪の毛にしがみついてる嘔吐物ノロロタノロロタわたしのことか
これ以上何ができるというのだろう絆創膏とティッシュを持って
口ごもる先生たちと頬張ればきなこマカロニはマカロニきなこ
バルサンと呼ばれ続けていた日々はやっぱりいじめだったと思う
泣きやまぬ声の響いた耳穴に娘が流し込む「子犬のワルツ」
自閉症発達障害被虐待児みんなの名前はそれより短い
日曜の陽射しをあびてエプロンのウサギは乾く何度も乾く
原因を抱きしめることは出来なくて子を抱きしめたメガネが飛んだ
鉄棒に雨粒の子はきらめいて同じ形のものなんてない
アルコール消毒をしたジャージ着て朝のペダルを踏み込んでいく