昨日は「歌降る夜」だった。
短歌を作るとき、私は作り方が大体3つあって、1つ目は目の前にある土をこねこねして形を作っていく、粘土細工形。
2つ目は、お腹の底から泉のように水が湧いてくるのを必死でキャッチする水汲み型。
3つ目は急に雨が降るように、いきなりずぶ濡れになる雨降り型だ。
例えば先日、第14回の角川全国短歌大賞の題詠大賞をいただいたこの歌…
・天ぷらの揚げ音がふと変わるように息子が最近やさしくなった
これなんかは、典型的粘土細工型で作った短歌だと思う。短歌の材料になる粘土というのは、日常生活をしている上で、心がキラリと動いた瞬間。その瞬間を土として、後はそれを集めて、自分の持っている技量の中だけでどうにかこうにか作っていく感じ。
この日はほんとに揚げ物をしていたし、そのまま自然に作った感じ。
2番目の水汲み方は、大体めちゃめちゃ怒った時とか、めちゃめちゃ嬉しい時にお腹の底からポコポコと黒かったり、七色だったりのいろんな水が湧いてきて、それを書きなぐるような形で作る短歌。
これらは、最初はひどい形で出てくる場合が多いので、後から見直して、水の中に含まれているありとあらゆる不純なものを取り除く作業が必要。叫びになっていること多々。それかお笑い系か。
例えば、
・母ちゃんは奴隷とちゃうんや靴ぐらい自分で揃えろ~小童、小娘、うんぬんかんぬん
叫んでるねー。
そして、昨日はどうも、3つ目の雨降り型の日だったようで、星降る夜じゃなくて歌降る夜でした。何がきっかけで短歌が降ってくるのかわからないけれど、大体リラックスしていて水に触れた時は耳元で単語がポロポロと聞こえるように、短歌が降ってきます。面白いね。
雨降り型の短歌は、なんとなく気分が落ち込んでいて、生きてるのがしんどいなと思うときに優しく降ってくる霧雨のような雨だったり、調子に乗っているときに「しゃきっとしろよ」というお叱り歌だったり、順調に物事が進んでいるときに「そのまま進め」っていうような励ましの短歌等いろいろある。
けれど、心が苦しい時に優しく降ってくる霧雨のような歌たちは、その後、何回も自分が落ち込んでも、その歌を見るたびに涙がちょろっと出て、そのあと元気になる…そんな歌が多い。
なので、今日はその歌を少し紹介させてくださいね。この歌は約1年ほど前に、子供の頃に親からつけられた傷のことを歌にしてて、息が苦しくなった時、柔らかな霧雨のように降ってきた歌たちです。
辛い経験をして、今を必死でもがいている人や、辛い経験をバネに、今を笑顔で生きている人たちに届くといいなぁ。
かさぶた
ああ君は傷だらけだなその傷の半分ほどを分けてくれんか
出血は止まった頃かい?かさぶたは風と水とが優しくはがす
まだ傷が痛んでるのか だからいま君はやさしくやさしくなった
傷跡を良くみてごらん 前よりもずっと分厚い皮膚ができている
あかん、また泣いてしまう。
面の皮はイノシシやのに🐽。
ではまたね👋
今、ここが天国。