これはロックなのか、トラッド・フォークの部類に属するのか、はたまたパワー・ポップなのか分類不能なバンドが10,000マニアックス。インディー時代のサウンドはまさしくニュー・エイジ・・ポップ的で、ブロンディやシンディー・ローパーっぽい音を鳴らしていた。かく言うもメイン・ヴォーカリストが希有なナタリー・マーチャントという女性だったに他ならない。
私にとってまた面倒なモノと遭遇してしまったと少しの憂鬱と僅かな喜悦が、干上がった大地に勢いよく雨が浸み込むように身体中の血管を走り廻って行った。早速CDなるものを買い求めに行かねばと奔走する。
今の世の中は大変便利に出来ており、自宅に居ながらパソコン1台あれば何だって出来ちゃう。CDを買うことも、何なら10,000マニアックスについて調べることもできる。オークションで市価より安価にCDだって買える時代なのだ。さて一つの方法として行きつけのCD中古店巡りも気晴らしにもなり、掘り出し物にぶつかる面白さもあるからCDを聴くという行為と等しく愉しい。
さて東京は吉祥寺へ行った折りにディスクユニオンへ漁りに行った時のこと。10,000マニアックスは今となってはマニアック過ぎてアーティストの見出しさえもなく、店員さんにバンド名を言っても瞬時に反応してくれないほどだ。ようやく店員さんが、「あっあれね、あれは500円のコーナーにありますよ。でもジャンル分けもなにもしてないのでどこにあるかは・・・」と。要するに人気薄のためバーゲン・コーナーに放りこんであるので勝手に探してということだ。その500円コーナーを見て、ヒェ~、ここかぁ。
まさに宝探し状態。折しも一緒にいた友達も従者としてその山へ挑む決心をしてくれたのだ、心強い。しかし当てもなく地道なというか地味な作業だ。誣いては店内は薄暗く、視力の機能性および戦闘能力は老眼を装備しているだけ。結果は5分で敵前逃亡となったのはいうまでもない。
後日、家に居ながら簡単にインターネットで中古盤『アワ・タイム・イン・エデン』という彼らのラスト・アルバム(その後再結成)を手に入れた。いきなりマイナーなピアノにのってナタリーの♪ウ~、ボソボソと呟きにも似た天使の歌声が、幾千もの悲しみや痛み疲れしか知らない戦士達を和らげてくれる命の泉のようなメロディがたまらなく響く。トラッド・フォークではと思わせたのもこの曲<Noah's Dove>を聴いてのことで、フェアポート・コンヴェンションでお馴染みサンディ・デニーを想わせるナタリーのやさしくて力強い声に誰もが励まされるであろう。
このアルバム中、一番元気のいい<Candy Everybody Wants>はタイトルからしていい。♪Hey,Heyとナタリーが歌うのに合わせて君もどう? キャンディを頬張って両手は軽く肘を折って上で揺らし、腰をクックックと動かしてさあ♪Hey,Heyと底抜けに愉しいキャッチーでキュートなナンバーだ。
ラストの<I'm Not The Man>はまたもやトラッド・フォーク系と思わせるナンバーで、雰囲気はボブ・ウェルチが在籍していた頃のフリートウッド・マックに似ている。この仄暗さがたまらなく、やはりナタリー・マーチャントのやさしくも力強い歌声に終始心身のバランスが保たれているようである。
10,000マニアックスを知るきっかけとなったのが何だったのか、半世紀近くも生きてきた私にとってつい最近のことがどうもダメのようである。ずっとずっと昔のことはよく覚えているのにね。「いやいや、貴方もあれこれと忙し過ぎて大変なんですよ」と慰めていただける歳になったということでしょうか。
-NO.605-
★小栗沙弥子・あいちトリエンナーレ★
以前にも書籍を千切ったアートでご紹介した小栗沙弥子さんの切り抜きアート。これは蝶の図鑑を翅の部分だけを切り起こしあたかも蝶が止まっているような、飛び出そうとしているかのような作品に。この他にも様々なパターンで蝶の図鑑をアートにしてしまっている。