ルーが吹く褐色の鋼音にゾクゾクっ | 新・ぺんたno座右の銘盤withボクの新百景

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独断と超偏見による、勝手気ままでええ事しか書かん日記のようなもんです。
まあるい形してて、音が飛び出してくるモノへの愛情表現です。
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某サイトの『ぺんたno座右の銘盤』、『続・ぺんたno座右の銘盤』の続編となります。

新・ぺんたno座右の銘盤withボクの新百景-mj5  なにかと不祥事続きで話題に事欠かない相撲界、ここ地元名古屋場所を控えた或る日大激震が起こった。とは言いつつこの手のことは何も相撲界に限ったことではないし、腐敗しきった日本の政治(家)に比べりゃ赤子同然の不始末と思うのだが。今の国会、選挙結果、安定多数は我々国民から見れば絶対不安定多数としか思えない。

 さて僕の中で相撲といえば小中学生の頃の話に集約される。プロレスも人気を博していたが身近な格闘技となると大相撲だった。紙相撲をやった記憶もあるし、友達と真剣に嵩じたのは白黒ハッキリ勝負がつく相撲だ。二強横綱として凌ぎを削った黄金の左の異名を持つ“輪島”と低重心からの突き上げ、左四つを得意とする不沈艦“北の湖”の時代。でももっと秘かなる楽しみが千秋楽にあった。千秋楽といえば優勝争いもさることながら表彰式のあの時を待つのであった。

 その年代をご存知の方なら「ヒョー ショー ジョウ」の名調子でピンときたでしょう。PAN-NAM(パンアメリカン航空)の認知度は大相撲千秋楽の表彰式における極東地区広報担当支配人デビッド・ジョーンズ氏の日本語ででかのスピーチでしょう。またパンアメリカン航空杯のドでかいトロフィーをふらつきながら授与したシーンも、その滑稽さやその実役者顔負けの演技力にドッと笑いが起こるシーンは忘れ難い。

大阪場所では「アンタハンハ」、名古屋場所では「オミャーサンハ」など遊び心も忘れてない。そして僕がとっておきと称した場面はたどたどしい日本語でのスピーチの後、その刹那。会社およびご自身の紹介のくだりだ。アメリカ人なのだから当たり前なのだが、満を持して解き放たれたおよそその土俵上には似つかわない異国の言葉がゾクゾクっとさせてくれた。

 前口上が長くなったがゾクゾクっ序でに、1984年先月休刊に追い込まれたスイングジャーナル誌とキングレコードが川島重行をプロデューサーに立て結成したのがマンハッタン・ジャズ・クインテット(オリジナル・メンバー=デヴィッド・マシューズP、ルー・ソロフTP、ジョージ・ヤングTS、チャーネット・モフェットB、ステーヴ・ガッドDS)。以来年に一枚のペースでメンバーを替えながらテーマに基づいたコンセプト・アルバムを30枚ほど発表してきた。薀蓄序でにリーダーのデヴィッド・マシューズは、1990年に松田聖子が米国デビュー盤【seiko】でアレンジャーとして参加。ルー・ソロフはハイ・ノートを生かしスーパー・ブラス・ロック・バンド、ブラッド・スウェット&ティアーズやジャズの巨匠ギル・エバンスにも従事。

 さてMJQ、モダン・ジャズ・カルテットじゃないよ、クインテットのデビュー盤はその名も『Manhattan Jazz Quintet』で、既成(スタンダード曲)事実を心置きなく改ざん(ここでは悪用のためじゃないよ)、野趣ともにそれらに新鮮味を与えた。この手のものは1980年代初頭から顕著に見られ、キース・ジャレットが行ったスタンダーズ革命と同じだ。

 オープニングはガーシュイン作<サマータイム>、奇跡的な一曲となった。この聴き慣れた曲も彼方此方仕掛けを投じている。マシューズもスコアと睨み合い何度書き直したことだろう。イントロだって、55秒には天空にも突き刺さる ♪さ~ま た~ぃむ とルーが吹く褐色の鋼音にゾクゾクっとしちゃう。5分10秒、ぶっきら棒にマシューズがシングル・トーンでソロを始めるが、計算され尽くした非の打ちどころのないものだ。褒め序でにこのアルバム全編に感じるのはマシューズがピアニストであったということ。9分近い演奏だけどまったく飽きさせるこったぁない。

 リチャード・ロジャース作ミュージカル・ナンバー<マイ・フェイバリット・シングス>、ジャズ界ではジョン・コルトレーンのオリジナルだと思っていらっしゃる方が居てもおかしくないくらいイメージが出来上がっている。近年ではJR東海のCMテーマで赤坂達三のクラリネットが耳に残っているのでは。「そうだ 京都、行こう。」のバックで流れているやつ。そうそう、「そうだ 京都へ行こう」や「そうだ 京都に行こう」と思っていませんか? それは「そうだ 京都、行こう。」が正しいので記憶を改めていただこうかな。原曲もそうだし、CMはクラリネット、コルトレーンはソプラノ・サックスでいずれも線が細いのに対し、ここではジョージが勇猛果敢に泥臭いテナーでコレトレーンに応酬している。

 アルバム全6曲に外れなし。特にマシューズ作<ロザリオ>は急速調ナンバーで、ライブではたいていトリを務め、<サマー・ワルツ>はまぶしいほど可憐な曲で、暑いあの夏の日に連れていってくれることでしょう。デビッド・ジョーンズ氏はご存じの通りパンアメリカン航空が破綻したと同時母国へ帰り、2005年89歳の生涯を閉じられた。そうだ、ジョーンズ氏の物真似で「ヒョー ショー ジョウ」なんてやってないで、せめてあの流暢な語彙や発音でも真似してりゃあ良かったなと思う次第です。

-NO.588-


★BAR CORE★

 大阪は道頓堀にある立ち飲みバー。ちょうど法善寺から西へ出てきたところの角にあり、L型カウンターに大人6人がギュウギュウ詰めに立つと身動きできないほどの間口一間×一間のお店。ふらっと立ち寄るには好都合。白州、山崎はもちろん、マッカランなどそこには琥珀色した誘惑が漂っている。軽いつまみもあり、ワンコインとはいかないが今日のお小遣いで飲めちゃういいお店。なにか立っていることも忘れ、ついつい長居してしまう不思議な小空間だ。