僕自身つかず離れずのアーティストは仰山(ぎょうさん)いますが、その最たる人がJBことジェームス・ブラウンでなく、西ドイツ生まれのJBことジャクソン・ブラウンです。アルバム《ジャクソン・ブラウン・ファースト》で意気揚々とアサイラム・レコード(Asylum Records)からデビューするが、80年代にはカントリー・ロックやシンガー・ソングライターの栄華が衰退するとともにその大いなる影を落とした。その華やかな70年代においてアサイラム・オーナーのデヴィッド・ゲフィン曰く、最重要人物はイーグルスでもトム・ウェイツでもウォーレン・ジヴォンでもリンダ・ロンシュタットでもなく、ジャクソン・ブラウンであったと。それらの時代にあったアサイラムのミュージック、何を聴いてもいい事この上なく、昼となく夜となくいつでも聴いていたいそんな風合いのナンバーがぎっしりだ。特に黄昏がにじむ頃は言葉にならないくらい、メロディも詩も綺麗に染まる。いくばくかのつまらない些事も忘れることが出来ようか。ブラウン、24歳のとき。
彼ほど注目されるも大ヒットに恵まれないのは摩訶不思議としか言いようがない。まあそうとはいうものの紆余曲折を経て1980年にこの『ホールド・アウト』で全米NO.1に就く。そんな事実案外知らない方も多いのではと、かく言う私もそうだったのだ。彼らしくない<Disco Apocalypse>は粘着質なビル・ペインのオルガンとタイトなリズムに乗ってやってくる。曲の最後に現われる、紅一点参加のローズマリー・バトラーの力強く澄み切った声との絡みは極上の品に仕立てている。その刹那、ある意味このアルバムのクライマックスといえよう。彼とて《DISCO》という文字を使わざるを得なかったことは、80年という時代を感じずにはおれない。当時は違和感が絶えず漂っていたこの曲も、いま再び聴くと優れたソングライティングだけが辺りを支配し悪くない、好いのである。続くタイトル・チューンの<Hold Out>は誰が何と言おうと私はベスト・トラックに推す。彼自身が弾くアコースティック・ピアノと感情を打ち殺した歌とが打ちひしがれた彼の心情を露わにしている。政治不信、社会不安、彼自身のドラッグや妻との別れ、音楽環境の変化のそれらがもたらした葛藤とが深く複雑に絡み、それらのやるせなき感情は彼の飾らない詞(ことば)によって報われてゆくのだ。彼も、これを聴いたみんなもそうなんだと思う。あとにも先にもこのヴォーカルが一番好きだ。
<Of Missing Persons>は盟友ローウェル・ジョージに捧げられたナンバーということで、彼のファンである私までもが涙腺緩むのは仕方ないことだろう。ここまで感情豊かに歌いきる姿に圧倒されるに違いない。それぞれの歌いだしに、♪Your FatherとかYour MotherとかYour Brotherとある。ことに《Your Brother》と響く箇所はジョージに問いかけているようでジ~ンと来る。最後の長編大作<Hold On, Hold Out>は大河の如く押し寄せてくるパワーにたじろぐだろう。中間部での切々と語るくだりは若大将こと加山雄三の《♪ぼかぁ幸せだなぁ~》と雲泥の差が・・・実はないのである。表現や詞が違うだけで赤裸々な愛について語り合うのは何も変わらないのだ。
全編にわたってブラウンのピアノとリック・マロッタのドラミングに酔いしれるアルバムでもあるので、そこんとこ ヨ・ロ・シ・ク ね! ブラウン32歳のとき。
-NO.553-
【熱田の宮】
今年10月に創祀1900年を記念した改修工事が無事終了しお披露目となった熱田神宮。私も少しではあるが寄進した御礼にご招待いただき、厳かな雰囲気のなか長く佇んでいたい気持ちに駆られたのだ。それは間違いなく三種の神器である草薙神剣に一歩近くに寄った証しであった。