随分前に某ブログサイトで“僕の英語の先生はカーペンターズ”と学生の頃の想い出を綴ったことがあった。僕の中にはカーペンターズにおける絶対的な曲があり、絶対的なアルバムとがある。曲とは“雨の日と月曜日は”で、アルバムは“緑の地平線”のことだ。さてカーペンターズにしてデビュー2作目は『クロース・トゥ・ユー』となるのだが、この作品こそが彼らがビッグ・アーチストに成り上がった切欠となった。デビュー盤“涙の乗車券”に比べ数段上をゆく内容に世界中が驚いた。サウンドの構成も兄リチャードの手腕によるところが大きく、ディオンヌ・ワーウィックとともにバカラック・メロディの伝道者ともなった。悲しいかな、いや悲しいことがあるまい。セカンド・アルバム曰く〝この後次々とモンスター・アルバムをリリースしてゆくんだから恐れ入ったよ〟と、まあこんなことを言うはずもなく、それだけ憂き目に会ったということだ。
「愛のプレリュード」はこんな歌詞で始まる。<We've only just begun to live>すなわち“私たちはいま、生きることを始めたばかり”と、そう私たちとはカーペンターズのこと。実際の歌詞では結婚する初々しいカップルのことなんだが。イントロはクラシカルにピアノとフルートでカレンを誘う。イントロにつづくカレンの声は全キャリアの中でも僕にとって絶対的な声なのだ。いつもの健康的で明瞭な声でなく、朝もやに包まれ生まれたてのちょっぴりハスキーなシルキー・ヴォイスが聴ける。これでカーペンターズの将来が約束されたことになる。
恐れを知らないとは兄のリチャードの方だ。よりによってビートルズの「ヘルプ」をカバーしている。オリジナルと大きく違うのはテンポ、とにかく遅い。カーペンターズ流のロック仕立てなんだろう、予想を覆す大健闘の出来。そして絶対的アンサンブルを見せるのは間奏部での重厚なコーラス、そこにかぶさってくるホーン・セクションと高らかに謳いあげるストイックなオルガンだ。仕舞いには何の曲だったかも忘れさせるくらい素晴らしい。
バカラック・ナンバー「遥かなる影」は、一人の男性へのモウレツな絶対的ラブ・ソングだ。何も貴方を愛するのは世界中の女性だけじゃないよ、小鳥だって、お星様も、もちろん私だって負けはしないわ、と。そしてバカラックは「恋よさようなら」において底抜けの明るさで、もう恋なんてしないわと否定している、あっぱれ。恋愛に限らず何かにつけ精神的密度と深度をバート・バカラック=ハル・デビッドに測られているようだ。この作品、絶対的密度と深度に長けているのである。
-NO.530-
【蕎麦処 草庵】
石川県は鶴来の町にこれまた旨い蕎麦屋がある。所在も店構えに店内もじつに趣きがある。もちろんのこと蕎麦も。私のおすすめは天麩羅せいろである。季節に応じた食材はこの店の敏感な部分であり、ことのほか主たる味に反映されていると思う。絶対的自信の表れだ。