日本のジャズシーンはこの10年だけとっても随分と変わった。ましてやこの2、3年というのは超のつく目まぐるしさだ。1950年代に秋吉敏子らが海を渡り、遥か異国の地で本場ジャズに身を投げ出した。当時、和洋折衷ともとれる独特のテイストを注入し、ここに日本のジャズ見参とも言わしめた。しかし所詮は日本人のやること、奏でるジャズは黒人が演歌を歌うのと同じように誰ひとりとして触ろうとしなかった。《こんなのジャズじゃない》ってね。
そして80年代になると新伝承派と波長を合わすかのように、日本離れした解釈のもと、欧米人になりきったミュージシャンやサウンドを手がけるようになって行く。それはどこまで行っても《つもり》だった。
この松尾明なる太鼓叩きのオジさんは、威風堂々と日本人の日本人のための日本のジャズをやってのけた偉人とでも言っておこう。松尾明&TAKE TENバンドのデビュー盤であろう『On a Misty Night』は、全編にその空気が漂っている。いやぁ~実に晴々しいというか清々しいとでも言いましょうか、異国の地でふと演歌でも耳にしたような懐かしさがこみ上げてきます。別にいまさら変わったことをしてる訳でもないのですが、自分に素直になり気の趣くままメンバー皆が愉しんでいるなぁとつい頬がほころんでしまいます。異色のナンバー「Mission Impossible」でさえ時代劇を見ているかのように【和のテイスト】が同居しています。これはジャズでは珍しい5拍子のテンポでやってのけたことが勝因。バーデン・パウエルのラテン曲「Berimbau」なんぞもう明るい昭和歌謡の世界でしょう。中盤からは何と四畳半フォークへと理想的な展開を示すわけで、ラストナンバーにいたってはモンゴルの古い民謡「在那遥遠的地方」という草原情歌で、敢えてこのアジアンなナンバーには日本人らしさが微塵も感じられない・・・ただ黒光りしている松尾明が居るだけだ。
もう松尾明っていう男が分からなくなってきました、ただずっと離れられない存在になったことは確かである。
-NO.464-
★博物館「酢の里」★
mizkanでお馴染みの中埜酢店さん。江戸時代の佇まいを偲ばせるいい雰囲気だ。ガイドのお姉さんに案内され【酢】を真剣に学ぶ。ショップやレストランなども隣接しています。この運河から江戸へ向けて幾千もの船が往来したことであろう。【酢】は日本食の世界に革命を起こした張本人だ。
