ほとんどの人が間違える、っていう「流れ」に関する問題。
ホースの先をつまむと、水が勢いよく飛びますよね。誰でも知っている。
だけど、なぜ勢いよく飛ぶのかについて、ほとんどの人は説明できないか、説明したとしても、間違えている。
ウィキペディアを調べたが、日本語のも英語のも説明は間違えていた。
さて、じゃあ、どうして水の勢いが強くなるかというと、
正解:ホースの中の水圧が高くなるから。(断言)
え?そんな簡単なこと?
なんでこんな簡単なことでつまずくのか想像するに、多くの人は、流れの本質が、流れそのものにあるからと誤認しているのでは、と思う。
川に入って遊ぶと、流れの方向に強い力を感じる。ああ、川下に向かって勢いよく水が流れてるんだな、と感じる。
それはそれでいいのだが、川であっても、流れの本質は、「高いところから低いところに流れる」のはずなのだが、体で感じやすく、目でも確認しやすい、流れそのものが本質だと誤認する。
流れは不変であり、目の前に実在している。
仮に、川下の土地が急に10m高くなったとしても、きっと流れの勢いで乗り越えていくに違いない。
よくある間違い(ウィキペディアなども)は、下記のような説明だ。
①ホースをつまんでもつままなくても、流量は変わらない(はずだ)。
②ホースの先をつまむと断面積がへる。その分、水が飛び出す速度が上がる。
これが、ちょっと流体をかじった人だと、こんな感じになる。
①ホースをつまんだところでは、急にせき止められるから水圧が上がる。
②それで、水の勢いが増す。
では、ホースの根元の水圧はどうなるのかね?と聞くと。
「根元の水圧は同じですよ。水が流れてるんだから、急に変わるわけないじゃないですか。
ホースの先の水圧が高くて、根元の水圧は低いですよ。だけど、この場合は、圧力が低いほうから高いほうへ流れてもいいんです。
実際、水が流れてるんだから!」
と、やはり、「流れ不変の原理」を主張する。
そんなにいうならやってみろ、と言われそうなので、やってみた。
ホースの先をつままない時。
水はホースの先端から、ちょろちょろ出てますね。
ウキのところを見てください。ホース近くにウキが見えますね。
ホースの中はあまり圧力高くない、ということです。
この時の流量は、Q=0.125 L/s
次に、ホースの先端をつまむと、水の先端は扇形に広がって、勢いよく出ます。
ウキの高さを見てください。
ホースの先端も、根元側も、同じぐらいの高さですね。
ホース内部の水圧がほぼ一様に上がっている、ということです。
このとき、流量は減ります。
Q=0.111 L/s
圧力高いのに、水の勢い強いのに、流量減るのって、不思議ですよね。
これは、「流れが不変だ」というのが間違いで、流れは、圧力(静圧、動圧(速度成分)、高さ成分含めての圧力)の結果に過ぎないということです。
ホースの先端の面積が減って出にくくなったので、ホースの水圧が上がった。
最終的に、ホースの先端を完全につぶすと、締め切り水圧、つまり配水管にかかっている元の水圧が、ほとんどそのままホースにかかる、ということになります。
危ないのでやりませんが。
この現象を、ベルヌーイの定理で説明してみます。
1/ρv2+p+ρgz=const
P0 大気圧 便宜上、基準だとして、0Pa。
z=0 高さは水平
であれば、
P1=1/2ρ(v2^2-v1^2)
流速が下がれば、圧力はあがる。
下記、実験で得られた数字。計算に使う数字。
1)ホースの先をつままない時
P2 出口圧力 0 Pa
Q2 流量 0.000125 m3/s
v2 流速 0.7073553026 m/s
A2 面積 0.0001767145868 m2
ρ 密度 1000 kg/m3
2)ホースの先をつまんだ時
P4 出口圧力 0 Pa
Q4 流量 0.0001111111111 m3/s
v4 流速 2.515041076 m/s
A4 面積 0.00004417864669 m2
ρ 密度 1000 kg/m3
計算結果。
ホースの先を25%ぐらいの面積になるまでつまんだので、
ホース内の水圧が上がり、 約0 kPa→約3 kPa
ホース内の流速は減る。0.71 m/s → 0.63 m/s
ベルヌーイの定理の通りとなる。
この実験結果から、蛇口の絞り具合(面積)と、蛇口までの管にかかっている水圧も計算できます。
蛇口のところを図にすると、下記のように、オリフィスになっています。
ホースの先をつまむと水圧が上がるのは、このオリフィスがあるからです。
計算に使う式。
1/ρv2+p+ρgz=const ...1
P5-P6=1/2*ρ(v6^2-v5^2) ...2
Q=A*v -> v=Q/A -> v^2=Q^2/A^2 ...3
P5-P6=1/2*ρ(1/A6^2-1/A5^2)Q^2 ...4
P5=1/2*ρ(1/A6^2-1/A5^2)Q^2+P6 ...5
z=0
計算結果。
私の家に来ている水圧は、14 kPaぐらいしかないことが分かります。
工学の問題を解決するには、いくつか有効なやり方があるが、
実験5割、計算5割
回り道だが、結局これが本質を見極めて、的確な判断ができる。
多くの場合は、「思い込み=流れは変わらないはず」があまりにも強く、実験も計算もしない。
ノートや資料を見れば、計算してないのがすぐわかる。
ただ、思い込みに任せて「対策」するのだが、本質を間違えていては、対策効果も出せない。
動画にしました。
その他、流体の実験をまとめました。