さよなら、サヨナラ……大切な人

167 (最終話)  




 この真鍋のアプローチと花の様子を何気に伺っていた
人物がいた。




 掛居が相馬とはもう付き合ってないのでは? という噂が
まことしやかに流れ、ご多分に漏れずこの噂を相原も耳に
することとなったのだが、それでも相原はまだ懐疑的だった。





 だが掛居が他部署の真鍋とどうも付き合っていると聞き及び、
ここで初めて彼女が本当に相馬と付き合っていないのだと
確信できたのだった。




 あの日以降、彼女に何も自分は聞かず一方的に接触を
絶ってしまった。



 そしてそんな自分に対して彼女の方も何の反応も返して
来なかった。



 だから、|そういうこと《相馬と付き合ってる》なのだと
すっかり思い込んでいた。




 このまま、いまのままではいずれ彼女は誰か他の男のモノに
なってしまうのだ。

 それは嫌だ。




 グルグルこのような考えを巡らせているうちに気が付くと
足が勝手に彼女のマンションまで来ていたようで、目の前に
マンションが見えた。




          ◇ ◇ ◇ ◇





 その|後《ご》しばらくマンションの前で佇む男の姿が
あった。



 男はオートロック式の一階にある玄関を住人と一緒に入り、
花の部屋の前まで来るとインターホンを鳴らした。






「はい、ぁ……」



「ご無沙汰……雨が降ってきて、あの、
傘貸してもらえないだろうか」




 インターホンの画面に相原の姿を見て、花の心臓が
跳ねた。

 何も考えられずに急いでドアを開ける。







「少し上がってもいいかな」


「……傘……は?」


「ごめん、雨降ってない」


「じゃあ……」


「会いたくて来た」



          ◇ ◇ ◇ ◇





「今頃? どうして? 
 今まで私のこと放っておいてなんでいきなり来ちゃうの。
 私はもう会いたくない」




 そう言い放つ目の前の掛居は唇を震わせて泣いている。




「急に会いに来なくなってごめん。
 連絡もしなくてごめん」




「謝らなくていいです。

 私たちは正式な交際をしていたわけじゃなくて、ただ
会いたい時に会っていただけの関係だし、元々流されて
仲良しごっこをしてただけ。



 だから今の私はもう個人的には相原さんとは会いたく
ないので帰って下さい」


 泣きながら自分の意志を伝えて来る掛居を相原は
一歩近づき抱き締めた。




「折角仲良くしてもらってたのに勝手に離れてしまって、
ほんとにごめん。

 好きなのに君を傷つけてごめん……。

 俺ね、ほんとは掛居さんと結婚したいし、掛居さんの
ことがすごく好きなんだ。



 ずっと一緒にいたい。
 誰とも付き合ってほしくないんだ。

 でも俺には頼りにならない姉と、守っていかなきゃならない
凛がいて……
 実は凜の母親は姉なんだ。



 その上話してなかったけど不妊で子供もたぶん持てない。
 そういうのがあって結婚を言い出す勇気がなかった。




 結婚は無理でも……ずっと一緒にいてくれないだろうか」





『やっぱり……。
 ずっと凛ちゃん誰の子だよって思ってたんだけど、
なるほどぉ~。

 相原さん、説明端折り過ぎだよ』





「結婚しないのにずっと一緒は無理かも。
 だけど、結婚すればずっと一緒にいられると思います」



 そう告げて花は両手を相原の背中にまわした。



「じゃあ、ずっと一緒にいたいので、僕のお嫁さんに
なってくれませんか!」


「はい、喜んで……」



 私は無上の喜びと幸せを噛み締めながら、

心のどこかでずっと彼からのプロポーズを

待ちわびていたのかもしれないと思った。❦





――――― おしまい ―――――



いろいろと甘い設定の拙作ではありますが……
この度も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。




この話は島本玲子が向阪茂に締め上げられてどこかへ連れて
行かれたところまでしか考えてなかったのですが(頭にボワン、
ざっくりと浮かんだstoryを頼りに書いていたので)そこで
『えっ? 玲子を〆たのはいいけど、花ちゃんはどうなるの?
 彼女が幸せになってなぁ~いということに気付きまして、
続きをムリクリ捻りだしたという感じで後半続けて書いて
いきました』……なので、無事完結まで辿り着けた時には
ほっと致しました。



相馬さんとか相原さんとか、よう出てきて
くれましたねーって感じです。



玲子の姉の蘭子さまも幸せにしてあげたかったのですが……
そこまでは手がまわりませんでた。



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無農薬・無肥料・の木村さんの奇跡の林檎のお話のくだりは
[石川県羽咋市/日蓮宗本證山妙法寺 住職]で、UFOにも造詣が
深い[高野 誠鮮(たかの じょうせん) ]さんのお話から
抜粋させていただきました。


・Youtubeにて

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新作


   - 5,668文字 - 
明日からは超短編の『ずっと好きだった人』を
お送りさせていただきます。


読んでいただけましたら、心から喜びます。♡~
宜しくお願い致します。 (⑅ˊᵕˋ⑅)



*・:+.。oOo+.:・*.o--Oo。+.:・。*・:+.。oOo+.:・*.oOo。+.
追記:


相原さんが凛ちゃんを背負い込まなければならなくなった説明が足りなくて
すみません。少しくらい説明を入れようと思いましたが……入れる場所を
作れずに風呂敷をたたんでしまいました。(´;ω;`)

 お姉ちゃんは身体も心も弱い人で夫亡き後(病死)、情緒不安定で弟に
頼りきりなのです。相原さんは花がいなければ生涯独身だったかもしれません。





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