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 あまりに突然であまりに迷うことなく告げる彼の言葉に
私は動揺してしまった。


「ちょっと柱の方に行きましょう」
 そう言われ私たちは通行人のじゃまにならない位置まで移動した……
ものの、私はどう反応すればいいのか途方に暮れた。


 とても彼の顔を見ていられなくて時間稼ぎも兼ねてとっさに俯いた。


 そんな私の動揺を知ってか知らでかすぐに彼から声が掛かった。


「百子さん、自分は上手く話せる自信がありませんがその、私の話を
聞いていただけませんか」

『どんな? この先会えない話なら聞きたくはないんだけど』
「はい……どんな……しなのでしょう?」


「短い期間ではありましたがこの数か月で私の人となりを知って
いただけたのではないかと思います」


「……そう……ぅですね」

「実は一年以上前から百子さんのことが気になっていました。
 百子さんが離婚される前からです。

 いけないことですがあなたが離婚される日をずっと待ち続け、今年の1月に  
 いただいたハガキで離婚されたことを知り、自分のことを知ってもらった
上で告白しようと決めました。

 私と今までのようにずっと一緒に仲良くしていただけないでしょうか?」


 何を告げられるのかとドキドキして待っていたら違う意味で
ドキドキするようなことを言われ驚いてしまった。


「……はい、喜んで」
 私はちゃんと本意を伝える為、山下さんの目を見て答えた。


「すみません。
 いい年をした四十路男がちゃんとしたプロポーズもせずに
仲良くしてほしいだのと情けないことを。

 ですが、その……百子さんにはお子さんもいて普通の結婚を望むのは
難しいのかなと思いましてね。

 私としてはもちろん叶うならば結婚という形で
あなたとこの先一緒にいたいです。

 でももしもそれが難しいのであれば結婚という形に拘らなくてもいいのかな
と思っています。

 願いはこの先ずっとずーっとあなたに側にいてほしいということなんです。

 はぁ~、照れますね」


 最後に山下さんは他人事のような言葉で締めくくった。
 

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