さよなら、サヨナラ……大切な人

163 



 2月末日に辞令が下り、2週間後に相馬は新しい部署に
着任した。



 相馬の異動が決まり、それに伴いまことしやかに流れた相馬と
自分との噂に、やはりというか、その日を境に相原からの誘いは
ピタっとなくなってしまい、花は 寂しくてたまらなかった。




 思っていた以上に心地よい相原との関係に依存してしまって
いたようだ。


 相原のことを好きなのだと気づかされもした。


 けれど、どうすることもできず、時間だけが過ぎてゆく。



 そんな中、花は夜間保育も辞めさせてもらい、社内でもなるべく
相原には近づかないようにしていた。



 それは自分の心を守る術でもあった。






◇春がきた



 春になり、新しい月が訪れ、桜見物の頃になると、花が相馬と
付き合ってはいないことなどが周囲にも知れ渡るようになり、
今までは相馬の存在があったことで言い寄ってこなかった
他部署の真鍋祐貴という一つ年下の|男性《ひと》から花は
デートに誘われることになる。



          ◇ ◇ ◇ ◇




 真鍋は相馬付になった掛居花のことがしばらくして
気になる存在となった。




 だいたいが相馬綺世のようなデキる美男子と仕事を組む
となると、大なり小なり女を出す女子社員が大半なのに
花は全く違って見えたからだ。




 これまでに辞めていった女子社員や遠くからいつも相馬のこと
を注視しているような女子社員と同じように相馬の彼女になりたい
だとか、そこまでいかなくともなんとかして近づきたいとかと
いうような、所謂下心というものを花の中に見てしまっていたら
真鍋はそこで花に対する興味を失っていたかもしれない。




 しかし、だからといってデートに誘うとか告白するとかを
するつもりはなかった。




 花は午前中は相馬とその日の打ち合わせに熱心で、その後は
仕事に邁進、そして時々相馬に呼ばれてブースに入ると熱心に
相馬とディスカッションしている。




 それとなく何気にふたりのことを注視している周りの社員たちの
前で繰り広げられるそんな光景は日々のルーティンとなっていった


 二人の関係は今日も順調だ。



 ……ということは仕事だけの関係性で恋愛感情を持ち込んでは
いなさそうだなと確認をし、皆またその日自分たちの仕事に彼ら
ふたりがそうであるように真摯に向き合うのだ。




 おかしな話ではあるが周りをそんなふうに元気づけてくれるのが
|相馬と掛居 の《どうしたって目立ってしまう》ふたり
だったのだ。




 掛居に近づきたいという気持ちはあったのだが真鍋はこの頃、
それはまだ今じゃないという確信めいたものを感じていた。



 もう少し様子見しよう、全方位『この時だそれゆけっ』と
身の内からGoサインがでたら、その時は……
|怖くても《振られるのが》進め~とばかりに猪突猛進しよう
と決めていた。






 よろしければポチ、宜しくお願いいたします。

       書く励みになります。       

 

にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ

in-8   out-4   pv-9