さよなら、サヨナラ……大切な人
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「相馬さん、私相馬さんと二人三脚での仕事か充実していてすごく
楽しかったです。
後、最低でも2年は一緒にお仕事したかったです。
そしたらもっと相馬さんのこと、知れるかななんて思ってました。
でも今相馬さんがいなくなってしまったら、もう相馬さんのことを
知るチャンスはなくなります。
相馬さんへの返事にはもっと時間が必要でした。
相馬さんが異動願いを出した時点でこのお話はGame Over
なんです。
交際はできません。ごめんなさい」
「いやいや、ちょっと待って。
勝手に異動願いを出したことは姑息だったと思うけど、
俺の気持ちも分かって。
早く掛居さんと付き合いたかったから……だから」
私はいろいろ言い訳する相馬さんに深々とお辞儀をし、
ブースから退出した。
私はこれまでのことを上司に話し、相馬さんが公私混同をし、
|自分《花》の仕事環境への配慮を怠り、自分を混乱させている
ということを訴えた。
またその際、自分が向阪茂の孫であることも話した。
伝家の宝刀を抜いたのだ。
その上で明日から相馬が異動の為の引継ぎをする間、自分は
係わりたくないので席の移動も兼ねて他の人の仕事補佐に付けて
くれるよう、頼み込んだ。
花は卑怯と言われても今後徹底的に相馬を避けることを
選択したのだ。
相馬のことを軽く憎んですらいるというのに、明日から
どんな顔をして相馬に向かえというのだ。
翌日からは同部署の端にデスクを移動し働くようになった
花に、声を掛けたくても話し掛けるな全開オーラで声を
掛けられようはずもなく、傷心の相馬はその後異動までの日々を
ひっそりとそして淡々と引継ぎ業務をこなした。
自分の知る物腰の柔らかかった花のスルーには肝を
冷やすほどの強い拒絶の意志を感じた。
引継ぎの日々、何も知らない周囲の人間から
『席が離れ離れで辛いわな、もうすぐ異動で職場が
離れ離れになるっていうのに、上司は何やってんだか』と
可哀想がられたりするのも、相馬には苦痛の種で、曖昧に笑って
やり過ごすしかなかった。
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